2017/11/06 のログ
アンネリーゼ > 「勝てば官軍、とはよく言ったものよね。可愛らしい令嬢が奴隷になってしまうのは、確かにそそるものがあるし。
 ただ、その相手が明らかに不摂生で醜悪を形にしたような貴族の子弟って言うのは頂けないのだけれど。
 ――あら、どうかなさった?何やらキツネにつままれたような気分にでもなっているのかしら?」

正体がばれてしまったかしら、などと勘繰りながら、会話を楽しむ。
それはさながら、ステップを踏むようなものだ。どちらかと言えば踊りに近い。
彼女との表紙を合わせて、時に攻め手を打ち、時に受け手に回る。
単調な賭けを見るよりも随分と刺激的で、楽しい時間がそこにはあった。

「ん、ちなみにお姉さんは、何をお望み?
 せっかくなら、互いの満足をすり合わせましょ?」

何なら部屋をとってもいいわ、などと付け加えながら。

「あぁ、自己紹介がまだだったわね。
 私はアンネリーゼ。好きに呼んでくれて構わないわ♪」

すっかり彼女が気に入った様子で、自ら名乗り、笑みを咲かせた。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」にヴァルファルニフルさんが現れました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からヴァルファルニフルさんが去りました。
アルマ > 「アンネちゃん、ね。私はアルマ、まあ見ての通り魔女ね。」

屈託のない少女の笑みと問いかけに少し考えるようは素振りを見せていたがやがて残っていたカクテルを一気に飲み干して

「そうね…まずはもう少し話し合いたいわね、お互いのことを。ただ、それにはここは少し騒がし過ぎるし空気も淀んでいるわ」

小さくそうつぶやくと徐にグラスをテーブルへ置き小さく息を吐く。

「ダイラスは詳しい訳じゃないけど少なくとも少なくともここより良い雰囲気の場所は知ってるつもりよ。貴女の満足について聞くのはまずはそこでお酒を飲んでから、というのはどう?」

夜も、魔女としての時間もまだまだ長い、ここで勝負を急ぐ必要はどこにもないのだ。未だにつまらない勝負を続けるカジノテーブルに背を向けると女性はゆっくりとカジノの出入り口へと向けて進んでいく。

――帰り際、気まぐれに令嬢も貴族子息に渡るカードが反転する魔法をテーブルに掛けておいたがそれがどうなるかは最早知ったことではない。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からアンネリーゼさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” カジノ」からアルマさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にヴァルファルニフルさんが現れました。
ヴァルファルニフル >  訓練の途中に団長に呼び出されて隊舎に向かう。用というのは公爵のお坊ちゃんの護衛ということらしい。

 公爵のご子息、年齢は16歳。なかなかにいたずらもので年上のわたしにもちょっかいをかけてきている。年齢差もなにも考えず、興味の赴くままに生きているという感じだ。

 地方都市とご領地への視察だということだが、なぜかダイラスにやってきた。方向が違うだろうと内心はいらだっていたが、今夜はカジノへ向かうという。無謀だと止めてはみたがニタニタと笑うばかりで行くのをやめる代わりにあたしに相手をしろと言い出す始末。この旅の途中で何度目だろう。周りに誰もいないのを確認して襟元をつかんで持ち上げる。身長差は15cm程。目の高さまで持ち上げるとすこし怯えた表情の彼を見てすこし憤りがおさまるが彼の頬を往復で数度平手で打っていく。すこし涙目になったのを確認してあたしは彼を床に降ろした。

 「何度言えばいいのです。あたしはあなたのものではありません。護衛はしますがそれ以上のことはできません。覚えることができなければ体で覚えてください。近衛の武官ならば懲罰はもっと厳しいものですよ」

 ふてくされた顔で彼は黙ってしまう。

 その後執事に説得されたのはわたしでカジノに護衛としてついていくことになった。帯刀してはいけない上に、ドレスを着なくてはいけないらしい。眉間に皺をよせたあたしは執事に説得されて肩の空いた黒いドレスを着る羽目になった。あたしのドレス姿をしげしげと見て満足そうな彼を睨むと目を逸らせて執事に命令した。

 「さぁいくぞ」

 カジノにつくと一人でテーブルにつく。その後ろで付近の様子を伺うわたしのことは眼中にないようで、周りを見回してはときどき執事に耳打ちしている。テーブルの横を貴族たちであろう一行が数組通るたび彼はじっとなにかを見定めている。どうせいかがわしいことだろうとあたしは警護のこと以外は無関心のまま周りの気配だけを気にしているが、なんどか執事がどこかへ行っては戻ることを繰り返す。

 「ついてこいよ」

 執事の耳打ちに彼が笑いながら立ち上がってこちらを見ないであたしに命令する。彼が座ったのはポーカーの席。向かいには彼と同じぐらいの年の令嬢。一見して気の強さはわかる美貌だが、訓練をしたことがないわがまま娘なのは表情にでている。あたしのきらいなタイプだ。あたしとてわがまま娘ではあるのだけれど。勝負は一進一退にみえる。執事とときどき彼は小声で話し込みながら、だんだんと優勢になってきた令嬢は得意な顔でその様子を見ている。ときどき執事とディーラーの目が合うのが気になるが、まぁなにか彼が負けない算段でもしているのだろう。とはいえ、相手の令嬢も同じだろう。どうせ貴族のお遊びでしかない。

ヴァルファルニフル >  少女が負けたみたいだ。彼はカジノにきて初めてあたしと目を合わせる。得意そうな顔はあたしをいらだたせるので目を細めてジト目で見てやった。ほめてもらえるとでも思っていたのか不満そうな顔で前を向く。

 「お前の負けだろう。掛け金は俺のものだからな」

 最初は顔面蒼白だった令嬢は持ち前の気の強さで最後の勝負を申し出る。彼は待ちかねていたかのように彼女にいいなりになることを要求した。このバカガキがと心の中で叫びはしたが、令嬢の後ろの護衛の男二人とやりあうことになるだろうとあたしの意識は彼にはなかった。

 彼女は今までの全額だけではく、バカガキも賭けに乗れと言い返す。胸の内で苦笑しているあたしは表情を変えない。その時、彼が言った。

 「だったら、この女を好きにしていいよ。どうせ、俺の奴隷だから」

 こぶしを握り締めたが、この場でバカガキをなぐることもできない。人目が多すぎる。表情を変えないでいるしかない。周りの目は冷たい。執事もなにも助けを入れることがない。すこし不満そうだが、令嬢が隣の執事と護衛になにかささやいている。そのあと低い声で条件を飲んだみたい。なぜあたしが、そう思いながらもこのようなときに逆転できることがない。逆にひどい目にあうのは今までの経験で分かっている。流れは忌々しいがうちのバカガキにあるだろう。そう思ってみていることにした。

ヴァルファルニフル >  勝ち誇った令嬢は高笑いをしながら席を立つ。隣の執事がこちらの執事とディーラーに小さく挨拶をして令嬢のあとをゆったりとついていく。項垂れて席を立てないバカガキの後ろから執事が離れてあたしのそばに耳打ちをしに来た。ディーラーとの取引をしていたのだけれど、相手も最後の勝負で別の取引をしたみたいだということであたしのほうが小娘よりも魅力があったからだとか……。項垂れていた彼が力なく立ち上がると、こちらを向かないで元気のない声で言って去った。

 「お前はのこれよ。そういうことになったから」

 数人の男に取り囲まれた。あたしは人目につかないところに行けばこのくらいの人数は相手にできる。そう思いながら素直に彼らの導く場所へと後ろをついていく。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からヴァルファルニフルさんが去りました。