2017/05/30 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にアルテアさんが現れました。
アルテア > 歓楽都市ダイラスの要、眠らない町ハイブラゼール。明かりと歓声が飛び交い、絶え間なく人の波が流れていくメインストリートから1つ入った道。大通りの1/3程の広さのやや落ち着いた道にその建物はあった。

賑やかな装飾が入口に施された2階建ての建造物。カジノに宿屋に見世物、この街の“一般的な”機能を備えたそこは知らない人に取ってはありふれたこの街の宿泊施設に見えるだろう。しかし、知る人ぞ知るそこは王都に本部を置くとあるギルドその窓口となる謂わば支部であり。
ギルドマスターである女性はディーラー衣装に身を包みフラフラと舞い込む来客の対応に勤しんでいた。

アルテア > ギルドが集まる王都より山賊街道や無名遺跡にダイラスのに集まる情報は一攫千金、早い者勝ちを狙う冒険者にとっては魅力的なものが多い。
一方でそれが王都では役人に弾かれるような偽の情報であったり悪意を持って広められた罠であることも少なくないのだが一夜に一時のスリルと快楽に全てを委ねる為に生きる者が多いこの街の人々には些細な琴だ。

「さて、次のゲームに参りましょうか」都

彼女が陣取るテーブルの向かい、そこで延々と勝負を続ける女冒険者などが良い例だろう。一稼ぎ額の報告にこの店に訪れた彼女は酒を煽りながら賭けに興じるうち、すっかり熱が入り、もう稼ぎ分を放り出そうとしている。酒が入っている以上こうなるともう諌めても止まることは難しいだろう。手札をばら撒き、テーブルに拳をぶつける冒険者をやんわりと諌めながら慣れた手つきでカードを弄び。

アルテア > ゲーム数は冒険者が積み上げる杯とともに重なり、冒険者の手持ちであるチップはそれに反比例するかのように磨り減っていく。
やがて積み上げられていたチップもなけなしの現金すらも底を付いて

「あらら、残念でしたね。今日はもうこれでお終い、というところでしょうか。……お客様?」

来店時の機嫌の良さはどこへやら、すっかりうなだれた冒険者。酔いと落ち込みから気力を失っているのか肘掛けに手を掛け踏ん張るように立ち上がろうとした次の瞬間。ガチャリ、という金属音が響き冒険者の腕が椅子から飛び出した枷に拘束される。

「――ところで冒険者さん。酒代の支払いはどうするのかしら?」

酔いが冷めたのか真っ青な顔で枷を引き千切ろうと暴れる冒険者に対して、ディーラーとしてでなく、彼女の本来の口調で淡々と告げた。

「貴女が他の冒険者の出し抜きによる独り占めと小さなお店で呑み逃げを繰り返してるのはもう大分有名な話よ。お客さんとして呑む最後のお酒は美味しかったかしら?」

店の前に立っていた店番が彼女の腕を掴み店の奥へと引き摺っていく。あの冒険者の被害にあった人の数は決して少なくはない。不本意ではあるが暫くは人気従業員となるだろう。

「皆様、大変お騒がせしました。まだまだ夜はこれから、どうぞごゆっくりとお楽しみ下さい」 

騒然となったフロアにそう一声放ち深々と礼をすれば、一瞬の静寂の後再び賑わいが溢れ出す。結局この街にとってこれこそが日常であり醍醐味でもあるのだろうと考えを巡らせながら、アルテアもディーラーの業務へと戻っていくのであった。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からアルテアさんが去りました。