2017/04/30 のログ
イーリス > 再び冷えたグラスに並々と注がれたエールがカウンターテーブルへと置かれると、それに手を伸ばし。
ゆっくりと口へと運び、まるでそれが1杯目かのように、こくこくと喉を鳴らして半分ほど喉へと流し込む。
ひんやりと冷たい喉越しを堪能しては、息を吐いてグラスを置く。

「そういえば」

思い出したみたいに声を発してから、視線を上げ、店主を見る。
店主は相変わらず柔和な表情を浮かべて、グラスを磨く手を休めずに、はい、とだけ短く答えたから、

「何か“面白い話”でも耳に入っていないか?」

含みを持たせた言い方をして問いかけたわりに、何事もなかったような顔をしてグラスに手をかけ。

イーリス > 声をかけられた店主は、一瞬グラスを磨く手を休めたが、すぐに口を開いた。
この辺りは勿論、ダイラスの状況も含んだ“面白い話”を口に舌から、
内容としては、すでに耳に入っているものではあったが、詳細までは知らぬ話であったから、有益な情報だと言えた。
途中で口を挟むことも、相槌を打つこともしない。
聞いているのか、聞いていないのかさえ曖昧な様子でグラスを傾けてはいたが、グラスの中身をすべて飲み干すと同時に、

「…なるほど。なかなか“面白い話”だったよ」

にこやかに、とは言わないが、それでも穏やかな声色と表情で答えると、腰の革袋から無造作に金貨を取り出す。
特に数を数えているわけでもない、手が掴んだ分をテーブルへと置き、

「ごちそう様。また何か“面白い話”があれば、聞かせてくれ」

そう言い残し腰を上げる。
客を見送る店主の言葉を背に受けても、それに反応を示すことなく戸口へと進み。
喧騒包む不夜城の中へと消えて行く。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 寂れた酒場」からイーリスさんが去りました。