2017/01/27 のログ
ホウセン > 今宵は王都を離れ、主要支店の一つが展開している港湾都市へと。娯楽の坩堝が目と鼻の先にある以上、妖仙の仕事の処理に対する熱の入れ方は目覚しく、こうして夜の歓楽街へと繰り出していた。とはいえ、直ぐに娼婦を買うだとか、性的サービスの提供される酒場に足を踏み入れるだとかはせず、一通りの挨拶回りと顔見せ、そして新顔の女が売り出されていないかと探るのを第一としたらしい。一頻り建物の中を回り、今は喫茶店に腰を落ち着けている。無論、この街の茶屋の事。単に茶と茶請けを提供するだけで済む筈がない。

「……ほう、あの店に元貴族の令嬢がのぅ?没落したとはいえ、躾けは行き届いておろうから、斯様な者が牝顔を晒す様というのは中々にそそられるものじゃ。」

この店に集まるのは、酔狂な趣味人が殆ど。そして、仕入れた情報を提供し、引き換えに目新しい話を提供されるという一種のサロンのようなものだ。今も、丸テーブルを挟んだ向かいに腰掛けていた羽振りの良さそうな中年行商人から、新しい娼婦の情報を得たところ。ずいっと身体を前のめりにするぐらいには聞き入っている様子。目の前の男は、丁度お気に入りの娘の手が空く頃合を見計らい、店で予約をしていたようで、ヒラリと手を振って席を立つ。小柄な妖仙も細腕をゆるりと振って見送る。さて、此方が提供できるネタは、今日この街に入ったばかりでそう多くない。その一方で、最近手に入れた牝奴隷を貸し出して、好き勝手に遊ばせるという提案はできる。少し冷めた無糖の紅茶に口をつけて、暫しの思案顔。

ホウセン > やはりというか、この茶屋の机も椅子も大人向け。腰掛けると、雪駄を履いた足は宙に浮かんだまま床には着かず、所在無さげにプラプラと揺れる。威厳とか迫力とか、その手の単語とは無縁の出で立ちながらに、この茶屋の店員やら、たまに言葉を交わす常連客と思しき人物達やらからは、特に子供の見た目をしているからと軽視される事も、冷やかされる事もない。金払いの良さに一定の評価がされているし、どっぷりとこの街の不道徳な遊戯に首まで浸かった”お得意様”であることが多少なりとも知れているという事情が、今の立ち位置を堅持させている。

「今宵は挨拶にかまけて出遅れた感があるか。ま、しくじりも一興じゃが、無聊であることを否めるものでもない。何ぞ、誰ぞ、愉快な阿呆はおらぬものかのぅ。」

酔狂というのなら、この妖仙もその謗りを受けよう。何しろ、己が堕とし、手懐けた牝奴隷を他人に貸し出しても差し支えないと考えているのだから。愛玩や愛着という感情は持ち合わせているが、執着という単語とは縁が無い。元々の性情もさることながら、邪仙といえども仙人の端くれであり、何事も中庸を旨とする振る舞い方を、一応気に留めているというのが影響しているのだ。

「願わくば、”ぎぶあんどていく”とやらが習い性じゃが、そう拘りはすまい。」

結果として、最後の最後に妖仙自身が愉快と思えるのであれば、その過程で何が起きようとも瑣末なことだと。色々吹き飛んでいる好事家が、茶屋の入り口を見るとも無しに見ている。此処に来てから幾人かに牝奴隷の貸し出しを考えている旨を話しており、其れを又聞きした物好きな者が現れぬかと、漠然とした期待を湛えながら。

ホウセン > 夜は更ける。時は過ぎ行く。果たして妖仙が、この日思い描くような遊興に出会えたかは――
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からホウセンさんが去りました。