2016/11/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にイアさんが現れました。
イア > 宵闇が深く、歓楽街の灯りは煌々と明るい時刻。
ハイブラゼールの大きな通りは、それでも客引きや観光客や、土地のもの様々に賑わっている。
子供が一人歩くような時間でも場所でもないそこを、小柄な少年は一人ふらりと彷徨っていた。

「……行きたくねぇ、ほんっとどうにかなんねーかな……」

はぁ、と今宵一際冷えた夜風に、白い吐息を零して独り言。
物憂げな表情で、通りに並ぶ色を売る店へと視線を投げる。
注意散漫な様子、足取りもまたゆらゆらと。
目的地もなく歓楽街の外れの方へと通りを進みゆく。

イア > 時折、王都で買われて港湾都市の歓楽街に連れられて来たこともある。
土地勘が全くないわけでもないから、少年はひたすら色町の店を眺めて歩いていた。
そこに、見知った顔がないかと。
あるはずのない一片の希望を探して。

「……現実逃避、ってやつかな。これも」

近いうち、この歓楽街でも買い手がつかなければ自分は奴隷市場都市へと連れて行かれる。
いよいよもって売れ残りはなんとか処分しようと、大きな市場へ売りに出されるというわけだ。
それが憂鬱で、奴隷商のいる宿に向かいたくもなくて、凍えるような夜風の中を、未だ歩き続けている。

イア > いっそ今宵一晩だけの買い手でも見つけられれば、この寒さを凌ぐ寝床と暖を取れる相手を得られようもの。
とはいえ、視線を巡らせれば道行く人々も夜更け深くなれば目的地を定めた足早なものが目立ってきて。

「……ほんとまいった……どーすっかなぁ」

呟いて、灰色のケープの中でかじかむ指先を擦り熱を取り戻そうとする。
潮風は一際冷たく、身を削るように吹き付けてきてケープの裾をひらひらと揺らす。
素足を薄く粟立たせ、歩みを止めて視線を通りへと投げかける。
そこに男娼としての自分を買ってくれる何者かでもいないものかと期待して。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にリンさんが現れました。
リン > 嗜好品を買い漁っていたら随分と荷物が重くなってしまった。
舶来物でぱんぱんに膨らんだ鞄と、目立つ青い提琴のケースを背負った、
女のような顔をした少年が近くを通りかかる。
ふいに二人の目線が合えば、ふんと鼻を鳴らして足を止める。

「乞食ならもうちょっと哀れっぽさを演出してみたら?」

小馬鹿にしたように言い放つ。
誰も伴わずに通りに立つイアをそう解釈したらしい。

イア > 視線を巡らせた黒い瞳に、藍色の視線が絡んだ瞬間。
自身よりも高い位置からの小馬鹿にしたような言葉を受けて、じとりと睨みつける。

「俺は乞食じゃねぇ」

高く澄んだ声を、僅かに低めて唸るように返す。
荷物をたっぷりと抱えた、一見すると少女のような、しかし声を聞けば少年であるとわかる相手。
下から睨みつけてはみるが、迫力はおそらくないであろう。

リン > 「きみがぼくの二倍ぐらい大きかったら
 ビビって謝ってあげられたかもしれないな」

リンはあくびを噛み殺して、相手の額を指で小突こうとした。
足を止めて、涼しい調子で継続してからかう。

「乞食じゃなかったら何さ? スリ?
 迷子という感じでもないしさ。
 貴族のおぼっちゃまがお忍びで来てる、とか?」

いいものを食べられていそうにない相手に、当てずっぽうなことを言う。

イア > 「喧嘩売ってんのかよ……」

低く唸るような声の出し方で、三白眼を際立たせる上目遣いに睨み。
そしてあくびを噛み殺して伸ばされた指に小突かれそうになって、身を引いて避けた。
その上に伸びてきた手を、手の甲で叩いて弾こうとする。

「テキトー言ってんじゃねーよ!
 そりゃまあ俺はいいご身分じゃねーけど……」

からかいの言葉を構わず続ける相手に対して、噛み付くような口調は最初だけ。
それなりに身奇麗な格好はしていても、痩せた身体や荒れた唇は身分を偽れない。
後半は、少しばかり悔しげに視線を下げて、呟いた。

リン > 「率直に思ったことを口にしただけだけど。
 うわ痛っ。骨折れた」

小突こうとした指を叩かれてさっさと引っ込める。
真剣味というものからは遠い言葉を口にしながら、相手をしげしげと眺めて思案する。
孤児にしてはいいものを着ているが、痩せて傷だらけの肌がかえって痛々しい。
適当なことは言ったが、だいたい正体と言うのは限られてくる。
気落ちした様子でうつむく彼に、かがみ込んで顔を近づける。

「ヒマ持て余してるなら取ってある宿までついてくれない?
 荷物重いから持ってほしくてさ……」

気だるそうにそう提案する。
応じてくれないならくれなくていい、ぐらいのトーン。

イア > 「その程度で折れやしねぇっつーの」

真剣味のない、およそ適当というのが相応しいような口調で吐かれた言葉に呆れた声を返す。
彼の手を叩いた自分の手に軽い痺れが走った程度なのだから当然だ。

不意に、俯いた顔がに影が落ちる。
視線を上げれば思いのほか近くに、藍色の瞳が、整った相貌があった。
そして掛けられた言葉に大きく瞬き。

「……ついでに一晩買ってくれたり、しねぇ?」

気だるそうな相手に、自ら顔を寄せて。
口付けでもしそうな距離に。
彼がかがみ込んでいるから、吐息が触れ合うくらいまで近づいて挑戦的に囁いた。

リン > 「ぼくは見た目通り小鳥さんみたいにか弱いから優しくして欲しい……」

挑発するような囁きに、まばたきを一つ。
すっと身を引いてもとの姿勢に戻る。

「ちょっとドキッとしたかも。
 もしきみがもう少し……胸とお尻があって、
 もう少しすらりとした長身で……髪が金色の美女だったら
 完全に悩殺されてた。惜しかったね」

至って平素通りにそう告げて、ぱんぱんの鞄を下ろす。
『いいよ』と付け足した後、その鞄を持たせようとする。
それなりに重いが、運んで歩けないほどではないだろう。

「ぼく、リン。
 するならちょっと珍妙なことになるかもしれないけど、あんまり驚かないでね」

名乗り、要領の得ないことを言って、提琴のケースを背に歩き出す。
しばらく歩けば、滞在先の宿にたどり着けるだろう。

イア > 冗談のような発言には、くっと喉を引きつらせてひとつ笑い零し。
唇を重ね損ねれば、にっと口角を引き上げる。

「それ完全に掠りもしてねぇってことじゃねーか」

愉快そうに笑った後、付け足された言葉に目を丸くして。
勢いのまま大きく膨らんだ鞄を腕に持つ。
たしかに少々重いが、少年の片腕で済む程度の荷物ならば運べないことはなく。

「……あ、俺はイア。よろしく、リン」

なんとも要領を得ない珍妙なこと、とやらには好奇心を刺激されつつ。
提琴のケースを担いで歩き出した彼を追いかけ、しばらく歩けば宿にたどり着く。
少年が借りた部屋へと入れば、解放されたとばかり荷物を下ろして。

リン > 「そうとも言うかも。
 まあ、ドキッとしたのは本当だよ」

イアに合わせてゆっくりと歩いて、宿へと到着。
質素だが安すぎるわけでもない、ほどほどの部屋。
ランプの橙の光がぼんやりと二人を照らす。
提琴を壁にたてかけ、上着と靴を脱いでレースシャツ姿でくつろぐ。
筋肉の薄い身体。

「ご苦労様。
 いつもこういうことしてるの?
 ご主人様の意向? 趣味?」

奴隷の身分であろう、とあたりをつけた上での質問。
ベッドの縁に座っておいで、とイアに手招き。

イア > 「そりゃ良かった」

本当、と聞けば幼げに嬉しそうな笑みを見せて。
ゆっくりとした足取りでも危なげはなく宿に着く。
部屋は質素だが安宿というほどでもないランクで、懐具合に検討を付けてしまう。
夜風を遮れば寒さも少しはやわらいで。
部屋の主に倣って、灰色のケープとショートブーツを脱ぐ。

「ご主人様は、あいにくまだいないんだ。
 俺の今の持ち主は、ケチな奴隷商人でね」

食費は自力で稼いでるんだ、と肩を竦めて答える。
手招きされればベッドの縁、彼の隣へと腰を下ろして。

「俺の身の上話なんて楽しいもんじゃねえよ。
 そんなことより……もっと楽しいことしようぜ」

小首傾げて隣を見上げ、媚び売るように微笑むと、相手の頬へと手を伸ばす。

リン > 「そりゃ、生殺しみたいなもんだな。
 いい主人が見つかるといいね」

いかにも他人事、といった距離感の言葉。
隣に腰を下ろされれば、身を寄せて片腕を相手の腰に回す。

「ぼくは好きなんだけどね、する前後のくだらない世間話や身の上話。
 イアはちょっと変わってるし……」

積極的な相手に藍色の瞳を睫毛の列で隠し、静かに顔を近づけて唇を合わせる。
間合いを測るように、舌が相手の唇をそっと撫でた。
ベッドの下で脚がやや落ち着かなく動いて、相手の脚にぶつかって絡まる。

イア > ありがとよ、とこちらは投げやりに答え。
相手の腕が腰に回ってくれば、くすりと小さな笑い声零す。

「変わってるってなんだよ。俺は至ってフツーの奴隷で男娼、だろ?」

冗談めかして笑い混じりに言って、伏せられた瞳につられるように黒い瞳細めて。
頬に手のひらを添える。唇が重なる。
荒れてはいるが厚い唇の感触は柔らかく、相手の唇の綺麗さを感じ取る。
舌が唇を舐めてくれば、それを迎えるように舌を忍ばせて、ちろりと舌先を舐める。
生暖かく湿った舌が触れ合えば、唾液がぴちゃ、と跳ねる音を立てて。
脚が落ち着きなく動き、絡まってくるとつま先で相手の足先を擽り。
空いた手がそろりとレースシャツに伸びて、前をくつろげようとする。

リン > 「うーん。大した話じゃないけど。
 奴隷って一言で言うと目が死んでる連中が多いからさ」

まあ気のせいかもね、と付け足して、回した手で脇腹を撫で回す。
舌先に相手の舌の味を感じ取って、唇の隙間から息がこぼれた。
舌を乗り越えて相手の口腔へと忍び入り、口蓋や舌裏を味わう。

二人きりの部屋に、唾液の水音が大きく響く。
身体は熱を持ち始め、絡まる脚が甘えるように相手に擦り付けられる。
シャツのボタンが外され、汗に滲んだ首筋や薄い胸板が
あらわになっていくのをぼんやりと見下ろしていた。
重ねた身体を通して、胸の鼓動が伝わる。

イア > 脇腹を撫でられれば、擽ったさに軽く身を捩って喉震わせ笑い。
口腔へと侵入を果たした舌を追って、舌を絡ませ、吸い付いて。
相手の唾液を啜り上げて味わおうと。
する合間に僅か逃れて、確かにな、と相槌返す。

冷えていた肌が徐々に熱を帯びてくる。
甘えるように擦り付いてくる脚、ショートパンツから伸びる素足が絡みついて。
露わになっていく白い素肌、首筋に浮かぶ淡い汗や薄い胸板を、ボタンから離れた手が撫でていく。
手に熱が、胸の鼓動が伝わって、口付けを一度強引に解いて意地悪く笑って見せる。

「男相手、慣れてんの? もうその気みたいだけど」

揶揄するように言って、耳朶に熱っぽい吐息を吹きかける。

リン > リンの目には少なくとも、イアはいつまでもその身分に甘んじることをよし、
とする人間には見えなかった。
そうたらしめているものは何なのか、興味がなくはないが――
それ以上詮索しようとはしなかった。

頭一つは小さい彼は、物怖じすることがないようだ。
筋肉というものを感じられない体の上を手が這い、思わず目をつむる。
急に唇が離れる。湿って熱い息を耳に吹きかけられて、声を上げてしまった。
ロングパンツの股ぐらの布地が、ゆるく持ち上がる。

「……きみほどじゃない」

指摘され、そっぽを向いて言い返す。
ごまかせない高揚に応じたように、壁にたてかけられていた提琴のケースが淡く光って、
不思議なことにほんのひと回り、リンの背丈が縮み、目線が近くなった。
まだそれに気づいていないようだった。

イア > 自身は、ただ諦めていないだけ、と思っていた。
そう思えている理由はあるが、それを語ることは今はなく。

頭一つ違う相手の頬を捕らえて、非力ながらも引き寄せながら。
筋肉のごく薄い身体つきを撫で回し、その手が胸の突起にかかる。
ちょん、と親指に引っ掛けて、軽く転がす。
そうしながら耳朶への悪戯に返る反応のよさに肩が揺れる。
ショートパンツの布地を持ち上げて、股座の逸物が快楽を期待していた。

「リンがいい反応するせいじゃん」

頬を撫でながら、そっぽむいた顔はこちらに再び向かせようと力込める。
提琴のケースが淡い光を放ったことにはまるで気がつかず、彼の目線が少し、近くなった。
とはいえそんな些細な違いに気付く程には余裕はなくて。

リン > 「んあ……」

指で胸先を弄られて、押し殺した声が漏れる。
双つの蕾に、血が集まる。汗の滲んだ身を捩るさまはどこか艶めかしい。
添えられた手の力を込められれば再びそちらを向く。
強引な動きに、心臓が跳ねる。唇は結ばれているが、上気した顔。

「なんだよ……悪い?」

いくぶんか余裕を失った態度。
手が相手の両脚の間に、素足をなぞりながら入り込み、
ショートパンツの盛り上がりの上から何度も円を描くように愛撫する。

イア > 指先が胸の頂きを軽く弄っただけで、押し殺した声が聞こえる。
くつくつと喉を鳴らして、楽しげに一層胸への愛撫を続け。
強引にこちらを向かせたら、上気した頬が見て取れて。
笑みが深くなる。

「悪いわけねーじゃん。むしろカワイーよ」

頬から手を上へとずらし、藍色の長い髪を梳いて、背中へと降りていく。
相手の手が股座へと伸びて、円を描くように触れれば心地よさそうに、は、と息を零す。

リン > 「ぼくもう十八の男なんだけど……うぅ、ふぅっ……」

楽しそうに胸の尖りを執拗に弄くられて、股間のものがもがく。
伸ばした髪を手で梳かれれば、幸福感が胸の奥で広がっていく。
愛されたいという欲求が膨らんでいく。

「……もっと……言って」

何をとは口にせず。
再びの変化。姿勢が変わらないまま、潤んだ瞳の高さが相手と同じになった。
相手に抱きついて、欲情に息を震わせながら顔を近づけ、
耳を食んでぴちゃぴちゃと舐めはじめる。
相手の腰にある手は、パンツを下ろさせ、露出させようと動く。

イア > 十八、思ったより年上だった。少女と見紛う整った顔立ちから、いって15、6かと思っていたなんて。
口にはしないけれど。
執拗に胸の尖がりを弾き、転がし、押し潰し、摘んでと弄んでいると、彼の下半身は従順に反応示す。

「……かわいいよ、リン……って、え? っと」

可愛らしく強請られるまま、言葉を紡いだ後に、目線の高さが合うことに違和を覚える。
しかしそれを追求するよりも、抱きついてきた華奢な身体に意識は向かう。
サイズが多少変わる魔法でも使ったのだろうかと、疑問を飲み込んで。
それよりも今は。

「……ん、は……耳、好きなの?」

耳朶に寄せられた舌に、ぞくぞくと背筋を這い上がる快感。
相手の手がパンツを下げようとしてくれば腰を浮かせて協力してやって。
露出された陰茎は解放されたとばかりに飛び出して、彼の手に熱を伝える。

リン > かわいい、と繰り返されて身震いとともにもう一回り縮む。
リンのほうがイアに見下される珍妙な話になっていた。
ちゅうちゅうと耳に吸い付き、舌が味と形を確かめ、
とろりとした唾液を流し込む。
興奮に震える吐息が、相手の耳をくすぐる。
ぎゅうと抱きついて、下肢に熱い盛り上がりが押し付けられる。

「すきぃ……」

幼い口調でそう答えて。
手にイアの猛りの熱が伝わると、それだけでぴりぴりと快感が駆け巡る。
手入れされたなめらかな指が、そっと熱源を包み込む。
耳を舌でくちくちと犯しながら、楽器でも扱うような繊細な動きで
五指が愛撫を始める。

イア > 背を撫でていた手に身震いが伝わって、一回り縮み自身よりも小さくなってしまった相手を見下ろす。
妙な気分だし、こんなに縮んでいって大丈夫かと心配になりもする。
だが、特に制止だとかはされなかったから命には関わらないのだろうと勝手に納得してしまう。

「……っく、ふ……んんっ
 ……じゃあ、好きなだけしていいぜ。
 俺も、好きにするから……」

耳にとろりと唾液を注ぎ込まれて、ぞくっと腰が震えた。
抱きついてくれば下肢に熱い昂ぶりを感じて。
そっと両手をそこに向ける。
ロングパンツの前も寛げてしまい、下着の中から彼の陰茎を取り出す。
熱く硬くなったそれをきゅう、と縋るような手つきで握りながら。
耳と犯しながら、陰茎を繊細に器用に触れ回れば、小刻みに脈動を繰り返す。
先端からは透明な雫が滲み出して、快楽を得ているのだとはっきり知らしめる。

リン > 「はぁっ、あぁっ、おちんちん、きもちいいっ」

子供のように小さくなったリンは、髪の長さのせいで女児にも見える。
徴をきゅうと握られて、長い髪は振り乱され、声が上ずる。
全身でひっつきながら、相手の粘着く先走りを、竿全体にまんべんなく手で広げていく。

そして、耐えきれなくなった様子で、
イアの上にのしかかりベッドに押し倒してしまう。
腰の上にまたがり、身体に影を落として、息を荒げる。

「ねぇっ……ちょうだい……イアのおちんちん……」

下につけていたものは振り落とされるようにして落ち、
なだらかな腹部の下で小さな若勃起がつんと勃って涎を垂らしている。
イアのペニスの上に腰を落とし、尻肉で挟んで押し付ける。
尻穴が女陰のようにしっとりと濡れているのが伝わるだろう。

イア > 声を掛けられた時の姿は藍色を残して変わり果て。
女児を膝の上に乗せているようで、少々背徳感が湧き上がる。
もちろんそれは興奮を煽るものにしかならず。
上ずった声を上げながら、縮んだ掌に愛撫してくるのが愛らしく思える。

不意に、ベッドへと押し倒される。
腰の上に跨る幼い姿に肉棒が大きく脈動を繰り返す。

「っは……リン、こんな可愛くなった上に、
 そんなかわいいこと言っちゃうのかよ……たまんねぇ」

若い屹立が雫こぼせば片手はそれに絡ませて、もう一方の手を自身の陰茎へと押し付けられた尻肉へと伸ばす。
柔い感触を割って、しっとりと濡れた尻穴へと指を忍ばせ、軽く解す。

「やらしい……いやらしくて、かわいいぜ、リン」

リン > 「だめぇ、そんなふうに言われたら……もっとちっちゃくなっちゃう……」

後ろをほぐされながら褒められて、それだけで絶頂してしまいかねない悦びがリンを貫いて、
イアの上で更に一回り収縮してしまう。
はじめの大人と子供の体格差は、今や完全に逆転していた。

蕩けきった後孔をぐりぐりとイアの昂りの先端に押し付けるうちに、
やがて、ぐりゅんとその柔肉を押し広げて入り込む。

「あぐ――……っ。イアのっ、あついぃ……」

快楽のあまり涙をこぼしながら、淫らに腰を振って怒張を奥まで誘う。
融けそうに熱い濡れた肉が、イアのものに食いついて離さない。

「ぼくっ、イアのほしいっ、イアのあついの、びゅーって、中にちょうだい……」

身体を揺らすのに合わせて、リンの肉茎もぴょこんぴょこんと躍る。
ろれつの回らない口で、いやらしく相手にせがむ。

イア > 「いいじゃん、ちっちゃくなっても気持ちよくしてやるから」

腰の上で快楽に震える、すっかり小さくなってしまった相手の屹立を軽く扱いて。
軽くで十分に解れてしまった後孔に、すっかり硬く熱く勃ちきった屹立が押し付けられる。
自分の上で淫らに揺れる尻を眺めれば、ずりゅ、と容易く侵入を果たしてしまう。

「っく、ふ……すげ……っ、リンのここ、柔らかくて……きもち、いぜ」

涙の伝う頬に唇寄せて、雫を舌で舐めとる。
どんどんと奥へ誘い込まれるのに合わせて、自らも腰を突き上げ、少しばかり乱暴な所作で腸内を犯す。
熱く濡れた内壁がきつく締め付けて、快楽を齎すのに、律動が徐々に早くなる。

「ああっ……リンがいやらしくてかわいいから……っ、中に、いっぱい……出す、出すよっ」

気づけば両手を彼の腰に添えて、より大きく揺れるように支えてやって。
下から上へと強く突き上げ、腰を回し、浅く、深く挿入を繰り返す。
そうして、可愛らしいおねだりに一層早く、夢中になったように腰を打ち付け。

一際熱い白濁を、リンの内壁を叩くような勢いで放つ。
どくどくと、痩せて小柄な身体からは思いがけないほど多量の精を、望まれるままに注ぎ込む。
ぎゅっと、相手の腰を掴んだ手は逃さないよう力強く。

リン > 「ほんとぉ……?」

優しく許容する言葉に、つい甘えたくなる気持ちが首をもたげる。
ねずみみたいに小さくなってしまっても、可愛がってくれるだろうか。
かわいい、と言われるたびに緩やかに小さくなって、そのたび肉塊を強く締め付ける。

「イアっ、イアぁ……」

相手の突き上げが激しく、狭い腸内に淫棒の形が刻み込まれるようだった。
快楽を貪り、膨張し律動するのが手に取るように感じられる。
入り口を、奥を、灼けた杭でえぐられる。
イアの欲望が確かな形として伝わってくる。

「あぅぅぅぅ――――っ……!
 しゅご、いぃ……!」

ひときわ強く叩きつけられて、熱液が奥に注がれる。
射精を頭蓋に直接叩きつけられているかのようだ。
リンも応じて、腰をしっかりと支えられながら身をのけぞらせて
びゅうと噴水のように白く濁ったものを放つ。
腸が熱いもので満たされていくごとに、思考も白くなっていく。

「あ、ぁ……」

肉杭が突き刺さったまま、張り詰めた弓の弦がたわむように、ぐにゃりと脱力し、絶頂の余韻に、しばしよだれを垂らして自失する。

イア > 「あぁ……本当、だよ」

甘えるような声音に切羽詰まりながらも、優しく応える。
手のひらサイズだって愛してやれる無駄な自信ならあった。
身体が縮む度に、挿入感がキツくなることで小さくなっているのだと実感して。

可愛らしい嬌声を上げて、幾度も名を呼び。
自身が達したすぐ後に、白く服を、肌を汚す淫液を放ったのに、僅か安堵する。

その身体がくたりと脱力すれば、肩を抱いて自分の胸へと抱き寄せて。
ぼう、とした彼の髪を梳きながら、悪戯心に一回り縮んだが挿入したままの肉棒を浅く引いて突き上げた。

リン > 「はう……」

脱力した小さな体を抱き寄せてもらって、胸元に甘えて顔を擦り寄せる。
抱きしめた頭の上に顎を乗せられるぐらいには、今のリンは小さい。
汗でびっしょりと濡れた肌同士が吸い付く。
髪を梳いてもらうのが心地いい――

「んあっ!」

刺さったままの男根が突き上げられて、リンのものもびくんと立ち上がってしまう。
紅潮して、責めるような眼差しでイアを見上げる。

イア > 身を委ねて甘える姿も可愛くて悪くなかった。
けれど同時に、悪戯心が疼いてしまうのも事実。
そして、その反応もまた可愛かった。
責めるような眼差しに肩を揺らして笑い、宥めるように背中を軽く叩く。

「ははっ、悪い悪い……もっとするか? それとも、一眠りしてから?」

お望み通りに、なんてからかうように付け足して。
どちらにしてもこれで終わり、というわけではない二択を提示する。

リン > あやされてため息を一つ。
それでも再び欲の火が疼き始めているのも確かだった。

「じゃあもっとしよう。
 ぼく、挿れられない大きさになっちゃうかもしれないけど」

ぼくも大概だけど、きみも大概だな――と、皮肉を言うだけの余裕は戻った。
しかし、もっとしたい、ということを言われて、それだけで股ぐらのものが
すっかり元気になってしまうのだから単純だ。
理性が戻ってきて、耐えきれない恥ずかしさに追いつかれるのが
今は怖くて、相手に強くひっついた。

イア > 「挿れられなくても、リンが気持ちよくなれればいいさ。
 何せ俺は買われた身だから」

なんて冗談ぽく笑いながら言って、片手で尻を掴む。
胸を寄せ合う体勢のまま、小さな彼の身体を揺する。
もう片方の手は相変わらず彼の背中を優しく撫でつつ。
もっとしたい、と言われれば嬉しくなるのも当然で。
繋がったままの肉杭が再び熱を持って硬度を高くする。

「俺の精液でいっぱいにしてやるからな」

そう予告して浅く、三度突いて勢いよく深く突き立てて。
一度出した腸内でどぷりと自身の白濁をかき混ぜる。
一回り縮んでいた肉槍が、先ほどよりも硬くなる。

リン > 「あ、そこは律儀なんだね」

微妙なところで感心を示す。
そういえば、一応買い買われた関係であった。

予告の言葉に、背筋が泡立って。
身構えるよりも先に再び硬くなった棒が体内をかき回し始める。

「あう……!」

これ以上精液を詰め込もうというのか。
世界全体がぐらぐらと揺れるようだった。
呼吸は苦しげになり、力の入らない手で相手にしがみついて、
胸元に口づけして吸う。

イア > 「一応、売りもんだからなぁ」

はっはっ、と肩で短く息をする。
腸液がとろとろと溢れて若干の白濁と混じり、マーブル模様を薄ら描く。
ぞくぞくと、小さな相手に対して征服欲に似た想いを抱きながら。

「っく、は……リン……っ」

挿入が辛くなるようなサイズまで縮めば、その身を指や舌でもって満足いくまで愛撫してイかせてやるつもりで。
今は窮屈だが柔らかな中の感触に意識を蕩かせて、腰を深く突き立てた。

リン > 「うぐっ……イ、アっ……」

すっかりと頭の中がだめになってしまったらしく、
蕩けた声で名前を呼ばれるだけで幸せになってしまう。
身体が収縮し、みちみちと結合部が音を立てる。
見上げる相手の顔が遠く高くなっていく。
もう半分ほどのスケールになってしまった。

「あっ、うあぁ……!」

突き上げられた衝撃だけで通電されたように身体がわなないて、
まだ残っていたらしい精液をびゅうびゅうと細く噴き出して絶頂してしまう。
少しずつ、少年の逸物を収めきれない大きさになっていきながら……

イア > 苦しそうに、けれど幸せそうな声に名を呼ばれることで、ぞくりと背筋が震える。
突き上げて、再び白濁を噴き出して達する姿に征服欲が満たされる。

自身の屹立を受け止められないほどに小さく、小さくなってしまっても。
挿入からは解放して、全身を舐めて、指でまさぐって、幾度か気をやるまでは愛してやって。
ぐちゃぐちゃになるまで白く汚した後、ベッドの中へと潜り込んだだろう。

リン > 延々と、身体を貪るように求められる。
何もかも忘れ、年下の少年に可愛がられ、手の上で転がされ……
もはや性も根も尽き果てる、というころには文字通りに濡れ鼠の有様だった。

次に起きればきっと身体ももとに戻るだろうし、
この少年ともお別れとなるだろう。
済ませていなかった支払いには色をつけてやろうとか、
またかわいがってもらいたいなぁとか思いながら、
寝返りで潰されないように気をつけて、リンはイアの傍でともにねむりに就いた。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からリンさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」からイアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にクロウさんが現れました。
クロウ > 一つの建造物が、「街」と形容される事もそうよくある事ではあるまい。
不夜城、大歓楽街ハイブラゼールはそうした希少な建造物だ。
実際は、一つの大きな建造物というのはなく、大量の建造物の寄せ集まりであるようだが、それはもう利用する者達にとってはどうでも良い事だろう。

ともあれここは、あらゆる陥落施設の寄せ集められたその歪な建造物の一角にある酒場。
主に船乗りや旅人、冒険者等が集う酒場だ。
腹ごしらえをし、たらふく酒をかっ喰らっていい気分となった後、色を求めて歓楽街の他の施設に繰り出して行くという、言うなれば補給施設のような場所である。
当然、彼ら、或いは彼女らに花を売るために集まる娼婦や男娼の類も多く出入りするから、賑わいも大きい。
ただ、賑わえば賑わう程、闇も深くなるのはこうした歓楽街の常というものだろう。
怪しげな密談、非合法な取引が行われる事も日常茶飯事。

そんな酒場だ。

今宵も、あらゆる者でごった返し、店は賑わっている。
ふと、そんな店内の一角。テーブル席に一人の男がついている。
いつからそこに居たのか、いつの間にかその男は座って、カップに注がれたラム酒をちびちびと煽っていた。

ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”」にルキアさんが現れました。
ルキア > 酒場の喧騒に、また一つ新たな音が加わる。
複数の冒険者らしき服装の男たちが、酒場の扉を開いて中へと入ってくる。

『親父、酒だ、酒!高いやつをくれ!』

ひと仕事を終えたパーティーのリーダーらしき男が、カウンターの親父に景気よく声をかける。
ラム酒を煽る男性の隣のテーブルに、決めた男たちが装備を外しながら椅子に腰掛けていく。
そちらに注意を向けていれば、冒険者の男達の中で異質に見えるエルフの少女がいる事に気づくだろう。
逃げられないように、手と腰を縄で縛られメンバーの一人の男の腰にその縄は繋がれている。

『無名遺跡で見つけたんだ、バフードにでも連れて行けば高く売れるぜ、何しろエルフだ』

高い酒を、とわざわざ注文した理由を聞いてもいないのに親父に自慢げに話す声が聞こえるだろう。
とうのエルフはといえば、遺跡の地下から逃げ出したままの状態で、薄汚れたワンピースを身にまとい疲れた表情をしていて。
けれど、このままでは奴隷として売られてしまう。
せっかく遺跡の地底湖から正気を取り戻して抜け出せたというのに。
そんな焦りが滲んでいることか。逃げられては、と一緒に連れられて入った酒場。
なんとか逃れる術や、助けてくれそうな人はいないかとちらっと視線を彷徨わせ。

クロウ > 破落戸の集団の来店。
別段珍しくもないし、それがいかにも奴隷といった少女を引きずっていようとも、やはり珍しくなどない。
誰も特に気にも留めず、店主や店員達もまた、常の通りに彼らに対応する。
大層機嫌よさげに、引き連れているエルフの少女について自慢する様子を、こなれた調子であしらって、店の親父は注文通りの高い酒をボトルで彼らのテーブルへと運んだ。

「―――おかわりを貰えるかな?」

そのままカウンターの奥へと引っ込もうとした店主の背中に、そんな声がかかった。
酒場の喧騒の中、何故かその声はその場にいる全員の鼓膜を打った。
別段、大きな声だった訳ではない。
特別よく通るとか、そういうのでもない。
低くも、高くも、籠りも、響きもしない。
しかし、聞こないという事は絶対にありえない。
そんな声だった。

それは、破落戸たちに連れられていたエルフの少女であっても例外ではない。

一瞬、しん、と酒場の中が水をうったように鎮まりかえった。
視線が、声の主たる男の方へと向く。

一人、ラムを煽っていた男だ。

店主は、何故か笑顔を少し引き攣らせながら振り返り、「何だ来ていたのかい」などと言いながら、注文を承ってカウンターへと今度こそ引っ込んでいく。
店内には、すぐに喧騒が戻り始めた。

「やぁ。……いい娘を連れているな。」

そんな男が、そのままゆっくりと視線を破落戸たちの方へ、正確には彼らが連れる少女の方へと向けながら、言葉を向ける。
口元には、うっすらと微笑。
声は相変わらずで、語気はどこか朗々とした独特の調子。

ルキア > エルフの少女というのに、その端麗な容姿にちらちらと見る客はいるものの、戦利品として女を連れている事自体は、珍しくないようで人々は我関せずといった体だ。
船に乗せられてしまえば、逃げられる可能性は殆どなくなる。
こうなったら、冒険者の彼らが酒に酔いつぶれるのを期待するしかない。
店員から、いかにも高そうな装いのボトルとグラスが彼らのテーブルへと運ばれてくる。
『おぉ~うまそう』
『まずは乾杯だな』
などと、高い酒に色めき立つ男達。
そんな中で響いた男性の声に例に漏れず男たちも隣のテーブルへと視線を集めた。
それは少女も同じ。喧騒の中の、大きくもないその声はすっと耳に届き俯いていた顔をあげて、蒼銀の瞳を男性へと向ける。そうすれば、男性と視線があうだろうか。
静まり返ったのは、本当に一瞬の出来事。すぐに喧騒は戻ってきた。

『おうよ。無名遺跡の下層の方まで潜ってたんだが、なんでか中をふらふらしててよ、なかなかの上玉だ。高く売れるだろうよ』

お宝の方ははずれだったが、予想外の拾い物をしたと自慢げに一人の男が語るか。

『汚れちゃあいるが、この絹みたいな肌。肉付きはまあ薄いが磨きゃあ貴族の目にだって止まるだろうよ』

「…っっ、やっ…」

もうひとりの男が、ぐいっと縄と引いて少女を引き寄せるとその体に手を這わせながら下卑た笑みを浮かべる。
それに少女は、顔を赤くしながら必死に手で押し返そうとして拒絶するか。
彼らの知るところではないが、これが少し前であれば蛇の淫紋によって発情し艶めいた声を出してしまったことだろう。
けれど、それがなくなった今あるのは羞恥と嫌悪だった。

クロウ > 戻って来た喧騒の中、しかしそれまでと少し違う動きもあった。
そそくさと、席を立つ者が少し増えたのだ。
また、件の男をチラチラと遠巻きに気にする者や、あからさまに視界に入れぬようにしている者の姿もある。

彼らに共通しているのは、誰も彼もこの店の常連であり、特に娼婦や船乗りが多いという事であった。

そんな男は、珍しく口に入るのであろう高い酒に色めき立つ男達にはそれこそ目もくれず、ただ面白そうに、彼らが連れる一人の少女を見つめていた。
少女もまたそうしていたなら、視線は交錯する。

昏い昏い、蒼い瞳であった。

深海よりも深く、深海よりも昏い、蒼い二つの眼。
それがしっかりと、じっと、彼女を見つめている。

「確かに、上等な娘だ。とても……佳い。」

眼が弓なりに細まる。
傍から見れば、破落戸と海の破落戸のただの世間話だ。
男もまた、装いに関しては特に特徴などなく、いかにもと言った海賊の出で立ちなのである。
しかし男の物腰は、その様子に反して酷く穏やかだ。
そして穏やかに、彼女を見つめ続ける。
破落戸どものいう、絹のような肌、肉付きの薄い身体、を見つめる。

―――否。

多分、そうではない。
男が見つめているのは、彼女のその蒼銀の瞳。
ただそれだけ。

―――否。

或いは、そうでもない。
男が見つめているのは、もっともっと奥。
もっともっと深い場所。
彼女の奥底の、身の内の、もっともっと繊細で、重要で、美しく、脆く、そして悍ましく、醜く、忌まわしく、浅ましい場所だ。

ふとそこで、「くくっ、」と男が喉の奥から笑いを零した。

「いや、それにしてもそうしていると滑稽だ。その酒も、その娘も……。くくっ、まるで猿が最新式のマスケットでバナナでも採ろうとしているかのようだ。」

朗々と、謳うように男はそう続けた。

ルキア > 高い酒とこれから入るであろう、多額の金に舞い上がっている男たちは店の様子に気づかない。
少女もまた、湖の蒼さではないあまり馴染みのない海のような蒼い瞳に釘付けになっていた。
まるで夜の海のような、どこまでも沈んでしまいそうな昏い色彩。
冒険者の男の一人に引き寄せられ、体を触られるのを拒否するのに視線が一度それたが、男性へと蒼銀が戻されれば昏い海の色は未だ見つめ続けている。
男たちのように、下卑た視線ではなくどこまでも穏やかな視線。
けれど、どこか心の奥底まで見透かされるような気がして段々と落ち着かなくなってくる。

「あの…」

見透かされるような感覚に落ち着かなくて、もしかしたら助けてくれるのではないかとの期待もあって、少女の口から男性へと向けて声が出かけたその時。
喉奥での嘲りの笑いとともに発せられた言葉に、
『なんだと?!』
『もういっぺん言ってみろ!!』
男たちが声を荒らげ、椅子を倒しながら立ち上がりかき消されてしまう。
酒の酔いもあり今にも殴りかからんとする勢いだ。

クロウ > 一気に、視線が集まった。
喧嘩など、もめ事など、それこそ日常茶飯事だ。
しかし、この時に限っては、店にいる多くの者の視線がそちらに集まった。
好機でもなければ、驚愕でもなく、ましてや困惑でもない。

恐怖だ。

それも、暴力だとか権力だとか、そういうものに対して抱くそれではない。
それは、そう、幼い頃、長く伸びる影法師に、或いは夜の厠へ向かう道中の暗闇に、黄昏時に遠くに見えた得体の知れない揺らめきに、感じていたものと同様のそれ。

「―――これは失敬。根が正直なものでね。」

そこでようやく、男の視線が少女から外れた。
昏い蒼の瞳が、今度はゆっくりと破落戸達に向けられる。
語気を荒げて立ち上がる彼らとは裏腹に、やはり依然として穏やかに腰掛けたまま、ラムの入ったカップを片手に持って。
破落戸達一人一人と、男の視線が交差する。

「―――威勢が良いのは悪い事ではないが……君、足元には気を付けた方がいい。どこから連れてきたのかな……?そんなものを引き摺っていては、転んでしまうだろう。」

変わらぬ語調。
朗々と謳うように、男は一人の破落戸と眼を合わせてそんな言葉を向ける。
そしてそのまま視線を、彼の足元へ。

破落戸が、破落戸たちが同じようにそちらへ視線を移すなら、そこには。

そこには、無残な亡骸がしがみ付いている。

破落戸の脚に、がっしりと、しっかりと、しがみ付いて、彼を見上げていた。

否、それは亡骸ではない。
あろう筈がない。
だってそれは、声を発している。
そして破落戸を睨んでいる。

当人には、当然見覚えがあろう。
それはかつて彼が手にかけた者。
こうして彼の脚に縋ったところを、トドメをさして足蹴に、ゴミクズのように野に晒した者だ。

その姿は、少なくとも破落戸たちの目にはハッキリと見えている。
音も聞こえる。触覚もある。腐敗臭すら、する。

だがそれは、男と、破落戸たちと……そして、エルフの少女を除く誰にも、外には見えていないようであった。

ルキア > 「……っ」

男達が席を荒々しく立ち、怒声をあげるのに少女はびくっと身を竦ませる。
今にも男性に襲いかからんばかりの勢いに、周りに助けを求めるように視線を巡らせるが、誰も彼も怯えたような表情をしていた。
もちろん、それが男達に対してではないことは少女にはわかったが、怒声をあげられて尚穏やかな男性に向けられているものだとはわからずに、奇妙な光景に見える。

『あんだと?!コラ』
『痛い目みせてやろうか』

唾を飛ばしながら、男たちが男性へと詰め寄ろうとしたが、男性の言葉に足元を見た男達は総じて青ざめて悲鳴をあげ始めた。
自身が宝を得るために、その命を奪った者だちが足にしがみつき恨み言を言っている。
ぐしゃりと腐った肉がズボンから染み込む感覚、鼻腔に入り込む腐臭。
払っても払っても、亡者たちは縋り付いてくる。
大の男が終いには涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、失禁までしながら悲鳴をあげる。
それらは、少女をはじめ周りの人間には奇行にしか見えない。
悲鳴をあげる男のすぐそばで、繋がれた縄がひっぱられてよろけながら呆然とその光景を少女は見ていた。
どさりと、少女の縄を腰につないでいた男は、白目を剥いて気絶し、ある者は同じように気絶し、ある者は酒場から飛び出して奇声をあげ、その声が遠ざかっていく。
戸惑い、少女は再び男性へと視線を向けるか。

クロウ > 「……いやはや、何とも見てくれに反したナイーヴさだ。」

男は既に興味を失ったかのように、破落戸達から視線を外して、ちびりとラムを煽った。
傍らには、恐慌状態の男達。
周囲の客らは何が何だかわからぬ様子でそれを見つめている。
しかし、困惑や疑念以上に、その眼差しに恐怖を滲ませる者も決して少なくはなかった。

やがて、気絶するなり逃げ去るなり、破落戸共が静かになれば、あとはもうただ静寂だけが残った。
変わらぬのは、ラムを煽っている男一人。
もはや亡者を観測する者は、この場には誰もいない。それはつまり、この場からの亡者の消失を意味していた。
観測者がなくば、それは存在しないのと同義なのだから。

慌てたように店主の親父が、しかし恐る恐るといった風情で近寄って来て、何やらごにょごにょもごもごと男に言葉を向けながら、それでも決して男の方を見ようとせず、汚らしく転がった破落戸達を片付け始める。

「別段清潔な酒場ではいにしても、それはあんまりだな。」

くつくつ、とまた喉の奥から笑いを零しながら、男はそんな風に嘯いた。
床は、男達が漏らしたものやら、ひっくり返したテーブルの上に載っていたものでぐしゃぐしゃである。
それでも、周囲りの席では気にせず喧騒が少しずつ戻り始めるのは、黒い歓楽街の強かさと言えよう。
それでも、彼らは先ほどより明確に、遠巻きにその男を気にしていた。
それと同時に、男のすぐ近くに残されたエルフの少女の事も。

「―――改めて。こんばんは、お嬢さん。」

そして男はまた、やはりあの不思議な声で、謳うように言葉を紡ぐ。
ゆっくりと、彼女へと再びその蒼い瞳を向けながら。
彼女が男を見ていれば、その瞳は再び交錯する。

「これで、晴れて自由の身だ。おめでとう。」

何とも愉快げに、男は告げる。
そしてそのまま、くらぁいくらぁい瞳でしっかりと、彼女の美しい蒼銀の瞳を捉えながら、彼女の返事を待った。

ルキア > 遠ざかる奇声が消えると、一瞬またしん、と酒場が静まり返った。
ざわざわ、ヒソヒソと遠慮がちに喧騒が再び戻ってくるもののどこか怯えたように活気がない。
男たちの突然の奇行に、少女は呆然と立ち尽くすばかり。
慌てたようにやってきた店主が、男性へとごにょごにょと話しかけている間も、少女は立ち尽くしたままだったろう。
男たちを片付ける店主によって、おそらくは彼らはもう再起不能だろうとの判断で少女は縄から漸く解放された。

「――っ、あ…こんばんは…」

あの大きくもないのに、喧騒の中でも耳に届く不思議な声が紡がれて、現実に引き戻されたように少女ははっとした表情をしたのが、男性に見えただろう。
蒼銀と、昏い蒼の瞳が交わい少女の口から出たのは、まるでオウム返しのような挨拶だった。

「あ、え、っと…有難うございます。あの、もしかして助けてくださったんでしょうか?」

その瞳に見つめられると、やはり心の奥底まで見透かされるような気がして落ち着かなくなる。
だというのに、視線をそらせない。
愉快げに告げられた言葉に、礼を言ったあとの言葉は問いかけの形となってしまった。
彼が何をしたのかわからなかったからだ。