2016/01/16 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 寂れた酒場」にイーリスさんが現れました。
■イーリス > 店の外は相変わらず、昼夜問わぬ喧騒に包まれている。すでに深夜に近い時間であろうとも、変わることがない。
ただ、寂れた酒場だけは、時間が止まったように静寂が包んでいる。
カウンターの向こう側に立つ主の初老の男は、無駄のない動きでグラスを磨き、客らしい姿はカウンターテーブルに1人だけ。
しかもその客がカウンターテーブルに突っ伏して眠っているように静かだから、ボックス席もない狭い店内は必然的にそうなるわけで。
ただ、半ばほどまで口をつけたグラスは片手に握っているから、果たして眠りについているかどうかは定かではなく。
その姿が視界に入っているにもかかわらず、主は声をかける様子もなければ、気に留めるそぶりもない。
■イーリス > カタンっ。
不意に静寂を破る硬質な音がカウンターテーブルから発せられる。
と同時に突っ伏していた身体を起こすと、一瞬視線が彷徨い。
「…あぁ」
半歩遅れて吐息にような声を零したのは、その音が何かを理解したためで。
手にしていたグラスが倒れ、テーブルに輪を描くように麦酒が零れていた。
それを、特に表情を変えずに主の男が拭いているから、漸くそこで状況が理解できたような表情になる。
「すまない。…久々に酒を飲み過ぎたかな」
やや苦く笑っては、謝罪の言葉を口にする。
実入りがよかった証拠でしょう、などと主のゆったりした声がしたから、相槌を打って肯定に返して。
同時に、もう1杯オーダーをすると、さほど待たずに新たな麦酒が注がれたグラスが目の前へと置かれ、それを手にする。
ゆっくりと喉を潤すように飲むと、その冷たさとアルコールが程よく喉を焼く感覚に眠気も落ち着いてきたようで。
■イーリス > 麦酒程度は酔いを深めることにもならず、単なる水代わり。
ふぅ、と深く息を吐くと、グラスを置き、それをついとカウンターの向こうへと押しやって。
少し身体を傾け、腰の革袋から金貨をいくつか摘まむと、無造作にテーブルへと置きながら腰を上げる。
「また何か、いい“話し”があれば頼むよ」
そう声をかけて、ひょい、と片手を上げて挨拶に変えて。
扉を開けて外へと出れば、まだまだこれから賑わうこの街。眩い不夜城の喧騒へと消えていき。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール” 寂れた酒場」からイーリスさんが去りました。