2015/10/29 のログ
■アルフレイド > 最低限のボロ布だけ纏った者やそれすらも奪われた者。
皆様々だが一つだけ共通するのは既に折れてしまっているという事。
襲って来ようとする者は居ないみたいだが
路地の奥へと進み、次第に表通りの明りも差し込まぬ闇へと近づけば、次第に感じる複数の視線。
ゴクリ、と喉を鳴らしナイフを握る指先にも無意識に力が篭るのも無理は無く。
「……ダンジョンに居るような気分だな。この気配といい殺気といい…。」
少なくともここに居る者よりは男はまだ何も奪われていない者だ。
ならば亡者が生者を襲うが如く、突き刺さる殺気は全て奪おうと欲の色強く刺さる。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”/裏路地」にリゼットさんが現れました。
■リゼット > 「――俺のことを見て、嗤っただろう!?」
不意に、男の怒声が響く。声の主の格好は酷いもので、「襤褸を纏っているよう」ではなく、実際に、襤褸を纏っている風采だ。……どうやら彼は、このへんでうずくまっている奪われた者のひとりのようで。
「ち、違います……!! 無意識に視線がそちらに行っただけで、それ以上の意味はありません、本当です!」
男の声に、応えるのは女の声だ。――いかにも、貴族然とした身なりで、場違いな人物だった。彼女の右手のカンテラが、動揺に揺れる。……でなくとも、この目立つ男女のやり取りと光源だ。彼らの位置は、特定しやすいだろう。周りの反応は、うるさそうに溜め息を吐いていたり、チラと彼女たちを見るだけですぐに視線を逸らしたり。特に意味もなく、生気の失われた目で動向を眺めているなど。様々だ。
■アルフレイド > この狭く細い路地では腰の黒剣は役に立たない。
だからこそ、余計に警戒を強め構えも緩めずに、最早この路地の住人を威圧する事で探索しているようなものだ。
一歩、また一歩とユルリ、路地の奥へと進んでいけば、突然更に奥の闇より耳に届く男の怒声。
半ばホルダーから刀身を抜きかけたその時に、揺れる微かな光源を双眸が捉えれば、持たざる彼ら同士の争いでは無く、部外者が巻き込まれたのかと理解し
「……ッたく…何処のどいつだ。コイツら刺激してる馬鹿野郎はッ!」
怒声の主の怒りが万が一にでも周りに伝播すれば、それこそ数の暴力で生きて戻れる可能性は皆無だ。
腰のダガーを再度強く握り直せば、トラブルの現場に居る人物の探知も後回しに、男の脚は強く石畳を蹴り、問題の現場へと駆けつける事となるか。
■リゼット > 「………………」
女は冷や汗をかく。頭に血が上っている相手に何を言っても、かえって、相手の機嫌をなおさら、損ねそうだった。――ここは、黙っているのが得策か。「言われっぱなし」という姿勢を決断しかけた際、男の手の中には、いつの間にか銀色に閃くものが。
「――え」
強い戸惑いの中。脳内で最良の行動選択の分析が始まる。牽制で相手の足元を凍らせるか。さすがに、大人しく切り裂かれたくは――。
「……っ、……!」
こちらが次の出方を決めるより早く、相手は既に、感情任せに選択していた。「うらぁ!!」と気合のひと声とほぼ同時に、薄汚れているが……とりあえず、切れはしそうなナイフを振り下ろしてきたのだ。彼女は慌てて後退するが、その切っ先は、彼女の胸元に届いており、案の定、まるで肌蹴るように胸元が――下着が、豊かな胸が露出される。
「……よくも」
底冷えした声。羞恥と言うよりは、怒りで、彼女の顔は赤く染まっている。
■アルフレイド > 光源も持たずただ夜目を頼りにやって来ただけに
暗闇の中、狭い路地に座り、寝そべり脚や腕を投げ出す彼らに害せず駆け抜けるのは、普通に走り抜けるよりも倍の労力を必要とする。
故に、次いで裂帛の気合声が路地裏に響いた途端
「――クソが…!頼むからこれ以上悪くすんじゃねぇぞ…!」
流血沙汰にでもなれば我が身も危ない。
故に、この際多少のリスクを背負ってでもと通行の邪魔する物は蹴散らし蹴飛ばし、まだ揺れたままの光源の下へと両脚は速度を速め掛け抜け――
既に一触即発な現場が夜目を聞かした双眸に映れば、その手に銀の刃手にした男へと、腰のダガーを左腕は引き抜き、手首へと自らの魔力を集め振り下ろし、暗闇の路地に一閃煌かせた。
狙いは凶刃持つ掌。
願わくば、怒りの衝動に駆られた彼女が行おうとしている行為よりも、先に男へと突き刺されば良いのだが。
■リゼット > 女から悲鳴を頂戴できなかったことに、男は、ナイフ片手に呆然としている。自棄になってイライラしていたところ、非力そうで場違いな彼女が、自分の視界を掠めた。……そして、案の定、因縁を付けてみればやり返して来ない女だったからこそ、「ここまで」調子に乗ってきたワケだが……。
「……ご自身が何をなさったのか、わかってらして?」
口調は強いものの、相変わらず崩されない丁寧な言葉遣いが、かえって男には嫌だった。――「そのへんの女とは違う」ということを、今さらになって、強く確信させるから。……男の、ナイフを握った片手が震える。戦意消失の表れ。今にも落としてしまいそうだった。
「――まず、その物騒な」
ものをしまいなさい。そこまで言葉が続くはずだったが、予想外のことに、それは中断される。突然の、第三者の介入。確かな意志を失い、「どうしたものか」とただ、男に握られているだけのナイフが、金属音を立てて地面に落ちた。……続いて、男の呻き声。片手を苦しそうに抑えている。――アルフレイドの衝撃をまともに喰らったらしい。
■アルフレイド > 運が悪いのかそれとも良いのか、投擲した短剣は狙い通り男の掌を貫きナイフを無力化できた。
だいぶ奥深くまでこの路地を潜ったものの、揉める男女の傍まで駆け寄れば、とりあえず血を流し痛みに苦しむ男には、駆けつけた勢いもそのままに、右足を振り上げそのまま側頭部を蹴飛ばして、壁際に叩きつける事で退いてもらおう。というか退かせた。
そして、毅然と立ち向かおうとしていた女の手を、この際強引にでもと、右手の手首を掴み取り
「馬鹿野郎が!さっさと逃げるぞ!」
切羽詰まっているとは言え、一瞬顔を会わせれば、以前この街の酒場で一時を過ごしたリゼットだとは理解した。しかし時間が無い、状況が状況だと。
その掴んだ手を牽いて、とりあえず大通りまで来た道を駆け抜けていこうか。
気高い心を持つだろうと感じたリゼットを野郎呼ばわりした辺り、もしかしたら怒るかも知れないが、今は彼女の身が第一だと――狭い路地を男女二人必死に駆け抜けていくのだった。
■リゼット > (……酷い)
男の損傷した片手を見て、咄嗟に抱いた感想はそれだった。相手に無礼を働かれたのは事実だったし、それ相応の罰はあって当然だったかも知れない。……それでも、そう思ってしまった。
「あなた、あの時の……!」
そう言い終えると同時に、アルフレイドの蹴りが野蛮男の頭部に入る。目まぐるしい事態の変化に、彼女は、忘れがちだった呼吸を自分に促すように、溜め息を漏らす。――ついていけない。だから、彼に掴まれ、促されると、まるで思考を放棄したかのように、彼の言う通りに従う。……有無を言わせない感じも、彼にはあった。
「……ば、馬鹿野郎って……!!」
ただ、その言葉には、彼の誘導のまま走り抜けながらも、露骨に反応してしまう。
「ば、馬鹿はないでしょう、馬鹿は!?」
どうやら、野郎呼ばわりよりも、そっちの方が、彼女にとっては引っかかるポイントらしい。――ともかく、もっと言い返したい言葉はたくさんあるが、それは後だ。彼に手を引かれている間は、とりあえず、口「だけ」は大人しくしていよう。……心の中では、いろいろ喚いているかも知れない。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”/裏路地」からアルフレイドさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス “ハイブラゼール”/裏路地」からリゼットさんが去りました。