2015/10/22 のログ
ご案内:「カジノ『ブルズアイ』」にチェシャさんが現れました。
チェシャ > このカジノ『ブルズアイ』は他の店舗と違いそれぞれのテーブルが比較的個別に距離を取ってもうけられ、
店内の雰囲気も落ち着いたシックな内装になっている。
というのもこのカジノには貴族や王族、あるいは特別な身分の者たちが個人的な取引を、
賭け事の裏でやりとりする場所という後ろ暗い面もあった。

だからこそ個別にテーブルを用意し、店員やディーラーにも秘密を漏らさぬよう徹底した教育が施されていたし、
不正があればすぐに対応できるだけの防衛能力や武力も裏に控えていた。
だからこそこの店は信用に値したし、重要な取引ならばここを選ばぬ理由がなかった。

チェシャが座った席はこの店の中ではレートの低いルーレットのテーブルだ。
いくらかのチップを手で弄びながら、ルーレット盤に転がされたボールを視線で追う。
耳としっぽはもちろん隠してきたが、このボールが転がるさまというのは種族柄どうも目で追ってしまう。しっぽが見えていたら激しく振られていたに違いない。

従者然とした少年がただ一人大人の客に交じってテーブルに座るさまはさすがになかなか浮いているのかもしれない。

チェシャ > チェシャの横に座る、紳士然とした壮年の男もまた節くれだった手でチップを弄り回す。
その手が懐から一枚の紙を取り出してそっとチェシャへ見えるようにテーブルの上を滑った。
男が差し出した紙にはこの国では仕入れることが難しい魔法具の材料や薬、資材などの内訳と詳細。
つまり納品書だ。
チェシャがその紙の内容を確かめると軽く頷いて納品書を懐に収めた。

「確かに。代金はお帰りの際までには用意しておきます。
 今回のお取引、主人も深く感謝しております」

これからもよきビジネスパートナーであることを、と形ばかりのあいさつを交わすと
男はふんと鼻を鳴らして賭けを降りると、席から立ち上がり別のテーブルへと移動した。
どうせ形だけの遊びだ、すかんぴんになるまで負けることはないだろう。

チェシャ > 「ベット」

ディーラーが声をかけるとテーブルに着いた客たちはめいめいに自分のチップを賭けはじめる。
ホイールが回転し始めボールが鮮やかに投げ込まれる。
そのボールを再び目で追いながら、小遣い程度の額をチェシャも賭けた。
その金緑の猫の目がひっそりと細められる。
まるでこの先の未来を見通すかのように。

「ノーモアベット」

ディーラーがそこまでと客の賭けを止める。ボールの勢いが徐々に失せてゆき、赤と黒の数字が描かれたポケットにゆっくりと入ってゆく。
ボールはチェシャのかけた数字のポケットに見事に吸い込まれた。

割り当てられた配当を受け取ると、ほっと溜息を吐いて席を降りる。
チェシャの持つ魔術、未来の短期的予知だ。だがあまりに使いすぎれば頭痛が起こるし予測の正確度も下がる。
それにこういうところで魔術を使うと何かと面倒だ。
もともとカジノは胴元が勝てるように作られているものだし稼ぎすぎれば目をつけられる。

チップを持って、休憩スペースであるラウンジに移動した。

チェシャ > 「ミルク」

バーテンに飲み物を雑に頼んで受け取る。
同僚と口元に手を当ててミルクを頼む自身をひそひそと笑った。
そんなにミルクを飲む人種が珍しいかよ、糞喰らえ。
などと胸の中で絶対に表には出さぬ悪態をつきながら
革張りの上等なソファに身を沈める。

今日の成果を主人は褒めてくださるだろうか。
そう思い浮かべると、今悪態をついたことも幾分か気がまぎれる。

チェシャ > 一杯だけの今日のごちそうを口にしてコップをカウンターに返すと
そろそろあの取引相手の男のために代金を用意するかと席を立つ。

持ってきた主謹製の魔道具は他国でもよく売れる。
持ってきた分を確認してもらった後はあの男の部下に引き渡せばそれで終わりだ。
そうしてすぐにこの街を発とう。主人が王都で待っているのだから。

ご案内:「カジノ『ブルズアイ』」からチェシャさんが去りました。