2020/10/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 闘技場のバックライトが、煌々と試合場を照らす。
その光を受けるのは、有象無象の観客たちと――二人の選手の姿。

『さあ、始まりました。アケローン闘技場興行試合!
今試合の対戦カードは、まずはアケローン闘技場における万能選手こと、クレス・ローベルク選手!』

歓声と罵声の入り混じった声が、囃し立てる様に両選手の耳を劈く。
男はそれに慣れた様に手を振り、そして対戦相手であるもう一人に笑みを向ける。
それは挑発か、はたまた余裕か、あるいは親愛の表現と取るかは向かいの選手次第であるが。
そして、正にその選手の紹介が、これから行われようとしていた。

『そして、対するは――』

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にランディさんが現れました。
ランディ > 「いや、だからぼくは調査にきただけで、違……ひゃんっ!」
『どうやら飛び入り参加のようです!…コクマー学院!?…所属魔術師…? の、ランディ選手!』
途中で疑問符が入ったのは、会場に押し出されるように出ておろおろしている白衣姿の男が、ミレー族にしか見えないからだろう。
知識階級に居るには不自然なそれは、闘技場の職員も半ばフカしだと思っているのか、雑に彼を会場に押し出して。
視線があつまるとふわふわとした獣毛に包まれた垂れ耳を一瞬だけピンと立てて緊張しつつ……対峙する羽目になった男を見た瞬間…地獄に仏を見たような半泣き顔になりつつも、囃し立てる観客の声が耳を劈くと、ビクリと体を竦ませて耳を抑え。
目の前の剣闘士の彼が、顔見知りだったからだ。まあ、だからといって、仕事中の彼がそれに応えるかというと…。

クレス・ローベルク > 「……は?ランディ?」

と、一瞬間抜けな顔をした男。
彼のことは知っている――仕事上のパートナーであり、個人的にも友人である。
だが、彼の知るランディは、とてもではないがこの様な場所に現れる人物ではなかった。
魔術師と言っても、冒険者的な意味での魔術師と言うよりは、学者としての冒険者としての性質が強い筈、なのだが……。

「(疑問はある……けど、だからとって仕事で手を抜くわけには行かないんだよな)」

知り合いではあるが、それはそれである。
尤も、だからといってこのまま立ち竦まれても、試合に影響がある。
だから、男は「ランディ」と出来るだけ威圧的でない、かといって馴れ合いもしない、フラットな声をかけ、

「別に気にすることはない。彼らは君に何もしないさ。
まあ、何で君がここにいるかは解らないし、来ちゃった以上は戦うしか無いんだけど……」

そう言って、剣を抜く。
とはいえ、それを構えるではなく、ぶらりと手に提げて、

「此処は殺しは禁止だし、万一の怪我を負っても、スタッフが負傷を回復してくれる。
だから、安心して全力を出せばいい、俺もそうする」

そういいつつ、男は進行役のいる実況席に、『もう少し待って』のサインを送る。
彼は、臆病だが、そこまで弱い人間ではない。
適切に励ませば、直に立ち直るだろうという信頼が、男にはあった

ランディ > 「うぅ、クレスくん…闘技場の内装見せてもらってたら、なんか色々質問されてここに……。」
うっかり、参加希望者の部屋にでも入ったのか、運悪くミレーだし丁度いいと闘技場のスタッフに捕まったのか…そもそも現状を把握しきれていない学者風貌にはわからず、故に説明もまばらで要領をえず、舞台の上でおろおろと周囲の声と視線に戸惑ったままだったが…。

「うっ…ん?……えぇっと…その…うん。」
最初こそ、彼の平坦な声に一瞬びくりとなるものの…どうやらこの場の雰囲気を壊さぬように、己に声をかけているのは伝わったのか…ザワザワと緊張で逆だっていた耳の毛並みや、髪の茶色い部分が少しずつ、収まりを見せて…。
どうやら、彼の中で一応の納得と区切りがついたらしい。

「……わ、かった。………うん、いい、よ。」
そして彼の言葉に小さくうなずき…懐からカードを一枚取り出す。不思議な紋様…「収納の印」が刻まれたそれをビリッと破くと…中の封入されていた小さな弓が淡い光と共に姿を見せて…すぅ…はぁ…と深呼吸が漏れる。
聞き手に弓、逆手は白衣の内側から数枚のカードを取り出して…彼に相対した。
『どうやら準備が整ったようです。……では、はじめ!!』

クレス・ローベルク > 「(さ、災難な……)」

ランディの言葉から、大凡の事情が解ってしまった。
恐らくだが、元々は別の選手が男の試合相手だったのだろうが、それが用事なのか事故なのかで出れなくなってしまったのだろう。
地下の奴隷を使うか、それとも別の選手を呼ぶかとなった時に現れたのが、ミレーで一応魔術が使える彼だったという訳で。

「(それにしても、)」

試合開始の合図とともに、男は戦闘態勢に入る。
今回は、ハンディキャップなしなので、こちらが先に攻撃できるのだが、
――手の内が半端に解ってるってのがなあ、逆に厄介なんだよなあ

「ま、考えてもしょうがないか」

そう言って、一直線にランディに向かい走る。
飛び道具相手に無防備とも言える突撃だが、まずは様子見と言った所。

ランディ > 弓を手にしていると、少しだけ気分が落ち着く……そう、狩りだ。狩りのつもりで、頑張ろう。
せっかく彼の力を見る…そして自分の力を彼に見てもらう機会なのだから。そう切り替えよう、正直未だにこうなった理由はわからないが。
すぅ…と新緑に似た色合いの瞳が細くクレスを見据え、カードを持ったまま左手が弓を引き絞ると…ボッ、と光をともして消え、「光矢の印」を施されたカードから生まれた緑色の光が矢の形として現れ、弓に番えられる。
まずは一本……脚を狙って……ギリギリと引き絞った弓を離すと…ヒュンッ!と風を切る音、そして風をまとった矢は引き絞った以上の速度で、クレスの太ももを狙って飛んでくる。
護身用なのだろう、これに貫かれても実際に怪我はしない…ただ、痛みと痺れがしばらく動きを阻害してくる。
それは弓に刻まれた印による風の力で、多少のズレなら風向きごと先を捻じ曲げ補正するだろう。
それと同時に、ランディの口から言葉が響く。

『風よ 風よ 風よ 其は捉えられることなき緑衣の旅人 触れられぬものなき精霊の腕 水と光をまといし汝は七彩へと至り あらゆる美をその身に映す…』
それは、精霊に語りかける詩人めいた旧いエルフの言葉…風が渦巻き、雨の匂いと木漏れ日の気配が、舞台をふんわりと包む。

クレス・ローベルク > 風を纏う光の矢が、男を狙い飛んでくる。
その矢の力は知っている。
普段、冒険者として活動する際に、良く見るものだ。
故に、

「対処もきちんと、見知ってるんだよね」

そう言って、男は矢を下から上に切り上げる。
風の力で追尾するというのなら、それ以上の力で跳ね上げればいい。
そのまま、男には判別できぬ言葉で魔術を編み上げる彼にまで辿り着いて。

「せえええいっ!」

そう言って、剣を彼の喉へと突き出す男。
魔術により、生体への切断力は失っているが、鉄の棒で怒突かれれば、声帯は潰れ、詠唱を紡ぐことはできなくなる。
勿論、完全に呼吸を潰してしまわないよう、調節はしてある。

「悪いけど、一撃必殺、さくっと終わらせてもらうよっ!」

ランディ > 『雨を纏い 光に照らされ 七色に光る汝はなんと美しいことだろう 誰もが汝を見上げ ため息と共に その美しさに心を射抜かれるのだ。』
矢はあっけなく跳ね上げられる、仕方ない、彼の目の前で何度も使っている矢を一本だけ射ってもどうにもならない。
目の前まで迫る彼に詠唱を続けながら、遅れてタンッと後ろにステップしつつ、喉を守るべく腕を盾にする。

パキンッ!と響くのは、かばった腕の骨が折れる音……ではない、白衣に『白い糸』で施された「盾の印」が攻撃に反応し、魔力の盾で切っ先を弾いた音だ。
普段は彼が前衛を張ってくれているので、左右の袖へ施された白衣への仕込みはあまり見る機会の無いそれ。即効性の代わりに持続性のないそれは硝子の割れるような音と共に一撃を防いで霧散し、同時に印をかたどっていた刺繍がちぎれ、ほつれて印の形を崩して使えなくなる。
後ろに下がりながらも今度は矢を番えず、彼の目の前にカードを3枚かざし、効果は同じだが、弓の加護がなく速度と追尾性に劣る光の矢が直接カードから直線で3条、クレスに向けて発射される。
そして、詠唱は佳境に入ったのか…空にきれいな虹が、舞台を平行になぞるように円を描き出した。

クレス・ローベルク > 「(っ!)」

放った突きが、白衣に防がれるという中々稀な経験。
とはいえ、予想外という訳ではない。
元々、ランディは遺跡に研究に行く、謂わばフィールドワークを行うタイプの研究者なのだ。
ならば、防御手段の一つや二つは持っていても不思議ではない。

「逃がすかっ!」

そして、後ろに下がるランディを、男は追う。
だが、今度はランディは三つのカードを男に掲げてきた。
そこから、放たれる三条の矢が、男に向けて――

「連続の二度ネタは、舞台の恥だぜ?」

放つより先に、男は追撃のために曲げた足のバネを使って、ランディの上を棒高跳びの要領で飛び越えてみせる。
放たれた矢は、クレスを追うが、しかしそれ故に着地したクレスを追い、矢はUターンする様に軌道を描くだろう――放った当人であるランディに直撃する軌道を。

「自分の攻撃を自分で受ける――魔術の実験でもやった事は無いんじゃない、かなっ!」

そう言って、ランディを背中から足刀で蹴り飛ばそうとする。
前は放った矢、後ろは蹴り。挟み撃ちである。

ランディ > 「……っ!?」
目の前で跳躍する彼が一瞬視界から消えて息を呑むが、詠唱を途切れさせるわけにはいかず、言葉は口にしない…が、なんだかダメ出しを受けた感覚に浮かべた顔は如実に「そんなこと言われても…」と語っていたことだろう。

弓の加護がないため、ぐるりと大回りでUターンして追尾してくるが、それ故に彼の読みどおり、挟み撃ちになる。
目を驚きに見開きながらも、とっさに、左腕に残ったもう一つの盾の印をかざすように身を翻してクレスの足刀をパンッ!と弾き、2つ目の保険もほつれて消え…その体が足刀を防いだまま…何を考えたか、自らバランスを崩して舞台にドサリと倒れ込んだ。
そう、自分の術は良くしっている…弓を介さない光の矢は追尾性に劣る分急な軌道の変化には耐えられず、クレスにすら当たらずに高さを合わせようと下に曲がり、地面にバヂバヂッ!とあたって消える。ただそのうち1矢がバヂンッ!と投げ出された脚に当たるが、どちらにしろ無防備を晒している今結果は変わらないだろう。痛みに顔を顰めることにはなるが。
そして地面に倒れたまま、空に弓を構え……最後の一節を唱え、弓を引き絞った。

『万人よ空を仰げ 風と水と光が彩る七色の美に射抜かれよ。さぁ、空の弓は引き絞られた……七色の天弓【レイン=ボウ】』
弦に現れた光の矢を天に放つと…空に浮かんだ真円の虹の中に矢が消えた直後……舞台の空を彩る虹の輪の内側全てに…七色に輝く無数の光矢が、雨あられと降り注ぐ。
これを凌げば、あとは地面に転がった術者が無防備を晒すのみ、勝ちをえるのは容易いだろう。

クレス・ローベルク > 勿論、男とてランディに剣闘士のホスピタリティを求めている訳ではなく、単に格好つけである。
格好つけという言い方が気に入らないなら――演出というべきか。

「ちぇっ、そうそう思いどおりにはいかな……っ!?」

今まで詠唱されてきた魔術が、今現実する。
まるで、光の雨といった風情だが、その中にいる男は溜まったものではない。
必死に矢を避けつつ、発生源だろう虹の方を見て、

「邪魔……っ!?」

邪魔眼。男が使用する切り札の一つにして魔術封じ、だが。

「いや、無理――!」

あの虹自体を消すことは時間をかければ可能であろうが、矢を回避しながら虹に対して集中力を向けるのは不可能だ。
となれば、後は――

「ええい、ままよっ!」

そう言って、ランディの方に走り出す。
途中、足や背中を射抜かれたが、それを無視して、何とか辿り着く。
そして、ランディを思い切り持ち上げる。
体格、体重の差で、ランディは軽々と持ち上げられるだろう。
何故、そうするのかといえば、当然。

「盾……!」

彼の身体を盾にして、矢を乗り切る、というわけではない。
むしろ、ランディに矢が当たらないと見越しての盾である。
何故そう思うのかと言えば、正に彼がこの魔術を使用したという事実そのものだ。

「自分に当たるような魔術を……自分中心に使うわけ、ないからね……!」

だから、恐らくランディのいる場所が安全地帯なのだろうと、そういう読みである。

ランディ > 「うぅ…いたい…。」
術が発動した後どうしたかというと……降り注ぐ光の雨の中…矢が刺さった脚を抱えてめそりと泣きべそをかいていた。
痛みと痺れをもたらすだけの光の矢…今降り注いでる光の矢もほとんど同じ性質だが大規模術式だけに痛みも痺れもずっと強い。
痛みにうめいていると、こちらに被弾覚悟で近づいてくる男に、ヒェッと情けない声を上げ。

「ああぁぁぁずるいー!やめてー!いやあぁぁぁ!!!」
軽々と持ち上げられた体…そして、彼の予想は的を得ている、が…じたばたと暴れるが、どうしようもない。
語りかけられた精霊が起こした魔法の矢は輩であるランディの体を避けて地面に弾けて消え…クレスはゆうゆうとその恩恵に預かることができるだろう。

「うぅ…せっかくがんばったのに……クレスくんひどい、ずるい…。」
無数の矢が降り注いだあと…持ち上げられたままさめざめと泣いているハーフミレーの魔術師が居たとか……。
ちなみに急に位置が変わったため、完全に避けたとは言えずにビシビシ体に矢が掠って痺れが酷いことになっている。

クレス・ローベルク > 「いや、それを言ったら魔術なんてずるさの頂点じゃないかな……」

と、呆れた様に言う。
実際、今のはランディが倒れていたからできた事であって、仮にランディの矢が脚に当たっていなかったら、何も出来ずに矢衾になって終わっていただろう。
その意味では、紙一重というか――試合の流れに助けられたといった印象。

「にしても、結構矢、当たってたよな……」

仮にあれが貫通性のものだとしたら、ランディごと自分も貫かれていた気がするが。
それよりも、位に喰らったランディが心配である。
どうやら、全くダメージが無いわけではないようだし、

「しょうがない、か」

そう言うと、男はランディを横にして、脚と背中で支える、所謂お姫様抱っこに持ち替える。
どうせ、後で闘技場のスタッフが回収するのだが、流石に知り合いをこんな所に放置という訳にもいかない。
試合終了後に、対戦相手を介抱するのは初めてという訳でもないし、問題はないだろう。

「さて、それじゃあ帰ろうか――」

ランディ > 「ひょんなことないぉん」
ビシビシ体を掠った矢の痺れが口にまで来たのか、文句を返す言葉が微妙にろれつが回っていない。
せっかく、せっかく大技使ったのに、締まらない!納得いかない!という気持ちはやはり多少あるものの…戦闘の場数が違いすぎたゆえの敗北か。

「……うぇ?あああぁぁぁあのくれすくん、これは、ひゃひゅがに…ひぇっ。」
しかし、くやしいなぁと思ってたら、持ち上げられた体がふわりと抱え直され…まさかの公衆の面前でお姫様抱っこに顔を真っ赤にしてもぞもぞと身じろぎするも痺れた体はどうにもならず…。

「……ぁぃ」
羞恥に悶える学者は両手で顔を覆って小さな声で応えるだけで精一杯だったとか…負けた相手にお姫様抱っこで退場させられて、さぞや笑いが取れたことだろう。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からクレス・ローベルクさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からランディさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」にモルファナさんが現れました。
モルファナ > コロッセオの中心。

犬獣人の娘は、垂直に構えた長杖-クォータースタッフ-で地面を規則的に突いた。
カツ、カツ、カツ、カツ。 同じリズムで四回。

『照覧あれ、戦女神イシュタル。我、眷属モルファナ。御身にこの戦いを捧ぐ』

紡いだのは、普段の訛ったマグメール共通語ではなく、己が生まれたミレー少数部族の言葉。
獣娘は、フォン、フォン、と風を切る音を立てて杖を頭上で横回転……後に虚空に紋様を描いた。

ステップを踏み、跳躍。尻尾と毛並みをなびかせ、踊る。
それは神に奉納する舞であり、己自身のウォームアップであり、間を繋ぐための余興でもあった。

舞は終局へ。
カ、ァァァァッ……杖先が地面に半月を描く音を立て、下段構えにて静止。

空気は、動から静へ。

ふわふわとした獣毛に覆われた顔を上げ、対面のゲートを見て。
対戦相手を、待った。

モルファナ > ゲートが重い音と共に開いた。
対戦相手が現れ、魔道拡声機のアナウンスが響く。

にィ、と口の端を持ち上げ、犬歯を露にする獣娘。
半身に構え、得物は槍を持つような吶喊姿勢……。

「よーシ。んじゃ、やろっかァ!」

地を蹴り、前へ。試合開始!

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からモルファナさんが去りました。