2020/09/03 のログ
> ―――とはいえど、美味かろうが結果なんかどうでもいい
―――ボクは過程を楽しみに来たんだ。

淫蕩と強欲が渦巻いているこの広大な大陸であっても、確実に存在する
勇者と魔物が殺し合う話のように、“鬼退治”なるものをしようとする馬鹿野郎が存在すると。
鐵は信じて疑わない。 景品 女 映像 などの為であろうと、相手が借金漬けの死人だろうと、夢追い人だろうと

殺しはしない しかし絶対に勝って見せる
そんな目をしてやってくる。
遊び半分じゃない。必死で。

目の前に現れたやつも、瞳の奥に確実に赤黒い炎を宿すように、こちらを見つめている。
対等な立場ではない。 けれども鐵は嬉しかった。 なにかを為したくて倒しにくるんだから。

「―――……っ♡」

背中が、刹那で震える。
ブルブルッ ブルブルッ と。
この体の全部を使って屠り合うと、お互いで認識が終わったら

『はじめぇっ!』

ゴングが鳴った

> 剣戟と拳戟が交差しあう。
これが普通の大陸だったら、物語の端っこくらいには使われるかもしれない。

奴輩の得物は双子の片刃剣。
お互いに両手と五体を満足に使いあうには、近接での巡り合い。
一刀一刀の動きは、刃渡りを知れば手首の動きから知れた。

ニコ目で見つめる先端が何度も肌を圧で撫でてくる。
鐵は剣の腹と手首を中心に、受け止め、流し、密接に。

間合いを拳から剣にさせないように。
最も、ただの一撃で鬼の首が斬れるのかと言われればわからない。
しかし小柄な、♀にしては大きいほうだろう背でしかない
月明り色の髪りとニコ目が特徴なだけの人型ならば、と。

試すようなこともせず、勝負は続けられる。
間合いは近く、もっと近く。
足場を絡み合わせ、姿勢を崩す。
後ろに脚を千鳥にさせたところで、脚を一本掬った。

一瞬片足で留まる相手に、背を向けるようにして身体を丸める。
下から、上へ。
斜めに跳ね上がるように。

「粉っ!」

背中での体当たり
身体を浮かせるように打撃を与え、剣も震えぬ超近接
胴へ打ち込んだそれは相手が向こう側へ飛ぶように転がり、内臓への衝撃で嗚咽をしようと息が乱れる。
喉と肺が混乱するように、息ができない。

「―――……。」

向き直ってからも様子を眺める中での観客のコール
殺せと なぜ負けなかったんだと
阿鼻叫喚の中で、未だ立ち上がろうとする様子に、ニコ目は薄っすらと空き、歓喜した。

> 個人へではなく、その先の為への殺意が向けられていたから、本来に比べれば物足りない勝負
それでも、確かに奴輩は、鬼退治をしようとしていた

―――ボクを倒そうとしていた

その余韻に包まれながら試合も終わり、後がない奴輩ばかりを相手にして食傷気味になれば飽きたように待機場へ。
人種 サイズ 得物 いろいろな奴輩の中で、腰に下げていた銀瓢箪の中身を煽る。
瓢箪酒は出てくる量が細く、口をつけてから離れるまで少しそのまま傾け続ける。
濃く透明な澄まし酒。

煽り終わると、闘技場の悲鳴や阿鼻叫喚がここまで聞こえた気がした。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からさんが去りました。