2020/04/06 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場闘奴鍛錬場」にヴォルフさんが現れました。
ヴォルフ > この日…少年は二度目の殺し合いを経た。
負傷が本復していない時を狙い、少年の主とは別の闘奴の主が、試合を望んだのだという。出る杭は打たれる。
まさに、その言葉通りに、少年は負傷をおして剣闘に臨み、そして…こうして無事に観衆からの声援を血だらけの総身に浴びていた。
敵の血潮も己の血潮も、もう定かではない。
縫合され、せっかく閉じかけていた胸と肩の傷もまた、開いていた。
それでも少年は、こうして無事に白い砂の上に立っていた。
殺せ
殺せ
殺せ
満員の観衆からはそう、声が響く。
その度に、少年は腹の奥底から煮え滾る怒りを覚えて、やまない。
おまえたちのうち何人が、眼の前のこの男ほどに闘えるというのだ。
おまえたちのうち何人が、眼の前のこの男ほどに苦痛に耐え得るというのだ。
そしてまた少年は、手にしていたグラディウスを白い砂に突き立てた。
またも望みを蹴った少年のその行いは、観衆をやはりざわめかせることとなる。
が、それでも。
魅せられた闘いを、観衆は讃えていたのだった。
控えめに降り注ぐ拍手を浴びて少年は、ゆっくりと闘技場の地下へと続く闇の中へと降りて、そして。治療の手もそこそこに、今最も落ち着ける、闘奴の鍛錬場へと一人足早に戻ったのだった…。
縫合は、受けた。
そこに火酒をたっぷりと振りかけられ、傷口は激しく熱を持っている。
そんな身体に早春の夜風は…いっそ心地よいと少年は眼を閉じる…。

ヴォルフ > 頭上、底に硬いほどの冷たさを秘めた風が吹きすぎてゆく。
その風の来し方行く末に瞳を馳せて…。
今宵も少年が、唯一自由へと思い馳せられる空を見上げる時が過ぎてゆく…。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場闘奴鍛錬場」からヴォルフさんが去りました。