2019/08/16 のログ
■黒須 > 「おーおー、こりゃすげぇな?」
(自分の二倍程ある大きさの騎士が召喚されるのを見る。
軽々しく振り回す長剣に盾、めんどくさそうだなと簡単に考えていると、いきなり襲い掛かる。
振り下ろされた長剣がリングを切る様に降り、大きな傷痕を作りながら高く砂煙を起こし、地鳴りを起こす。
しかし、そこに黒須の姿はなく、軽々しく避けていた。)
「なるほど、こりゃやべぇな?」
(そう言うと、着ていた革ジャンを脱ぎ捨てて、そのままYシャツ姿になる。
その後、こちらを見る騎士がそのまま、長剣を振り回し、水平切りの構えとなるが、その刃を受け止める様に両腕でガードする。
通常なら切れてしまう体、しかし、カードした腕によって剣は止められ、鍔迫り合いの様にギチギチと押し合う。
しばらくすれば、その剣の行く方向を利用して跳ね返し、自分の片足に赤いオーラを纏わせる。
一歩踏み出せば、その地面を壊すかのような強靭な飛びをして、騎士の顔面へ。
構えた手にも同じようなオーラを纏わせる)
「…オラァ!!」
(大きな怒声と共に拳を振ると、その騎士のヘルメットにへこみが生まれ、強烈な衝撃波を放ちながら亀裂を入れ、お返しするかのようにギュンターに向けて飛んでいく)
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 騎士と戦士の攻防を眺めつつ、次の手を考える。
どうやら、彼は徒手空拳を得意とする戦い方の様子。であれば、今召喚した騎士は敏捷さに劣るだろう。
戦い方も合理的であり、場慣れしている様子が伺える。ああいう兵士が欲しいものだな、と呑気な感想を抱いていたり。
と、思っていた矢先に此方へすっ飛んでくる騎士。
巨大な弾丸と化した騎士に溜息を一つ吐き出して――
「…余り衣服が汚れる様な真似はしたくないのだがな。大体、私は武術は好かぬと言ったではないか」
体内に蓄積する魔力で肉体を強化。循環する魔力が己の身体を包む様に仄かに輝く。
そうして得た魔力で強化された筋力で、飛んで来た騎士を錫杖で無造作に振り払う。黒須とは違い、洗練さの欠片も無い無造作な一撃は、騎士を明後日の方向へと吹き飛ばし、闘技場の壁に轟音と共に埋め込まれる事となる。
「…やはり狙った方向へは飛ばせぬな。まあ良い。私が前線に出る訳でも無し」
ひん曲がった錫杖を放り投げ、パチリと指先を鳴らす。
次いで現れたのは、灰色の毛並みを持つ狼の群れ。自我の無い曇った瞳を男に向け、無数の狼が唸る。
「あんな木偶の坊相手では貴様もつまらなかろう。それに、戯れるなら大男より獣の方が愛着も沸くだろうしな?
一拍の間をおいて、狼の群れは低い鳴き声と共に黒須へと飛び掛かった。
■黒須 > 「ほぅ、犬野郎に野良犬ぶつけるか?いい度胸だな?」
(新しく出た狼たち。生物ではないのはすぐにわかり、飛び掛かる。
一匹が飛び掛かれば鋭い牙を向けて噛みつく。これはすぐにわかり、避けるのが一般だが、黒須は避けずに自分の腕に噛みつかせた。
その後、大量に襲ってくる狼の集団を見て、噛みついたのを気にもせず、逆に重りの様に扱いながら腕を振るって足技で落としていく。
鞭の様に関節を動かし、地面に叩き付け、片足で捕まえながら飛び、空いている手で弾き飛ばし、巻いたのを地面に落として頭を潰したりなどと、奇妙な技を使っては一瞬にして潰してく。)
「さてと…そろそろ良いか?」
(腕に噛みつく狼は動けば腕の肉を引きちぎる。
しかし、痛みを感じる様子を見せずに、逆に腕には赤いあのオーラが纏われていく。
そのまま、一歩踏み出して回転踵落としの様にすると、腕に噛みついていた狼をギュンターに向けて飛ばす。
その勢いは大砲のような軌道と早さを誇り、一直線に飛んでいく。
その間、黒須の居た所で強い地鳴りが起こると、そのまま瞬間移動かの如く、その場から居なくなる。
次に現れたのはギュンターの後ろ、そのまま気付かれぬ程のソフトタッチで背中に触れると、赤いオーラをその手に宿してそのまま発頸を放とうとする。
魔術により強化された一撃は、通常内臓に直接殴りを食らう異常の威力を誇り、喰らえば同時に骨を砕くだろう。)
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「同じ方法では芸が無いぞ。観客に飽きられ……――」
演舞の如く狼を屠る姿に感心していたが、此方に飛ばされる狼には小さく首を振る。
再び指を鳴らして顕現させたのは、堅牢な壁の如き大楯。生命では無く、唯の置物同然の武具の生成ではあったが、轟音と共にぶつかった狼の直撃にも容易に耐えた。
そこまでは良かった。
しかし、それ故に。己の背後に現れた黒須への対応は一手遅れる。元より、肉弾戦の経験も無い己では対応は難しかったかも知れないが。
そうして触れられた掌。それに反応するのは、生命の危機に瀕した火事場の馬鹿力でも、突然武術に目覚めただのでは無い。
己の、王族としての矜持と傲慢。それが、触れられた掌へ尤も敏感に、そして迅速に反応する。
「……我が身に触れる事は許可した。だが、王族の身に触れるならば、それ相応の覚悟を決めろ、剣闘士」
今迄の余裕と高慢さが伺えた口調では無い。僅かに怒気を滲ませた声色。それと同時に、循環していた魔力が、急激に背中へと収束する。
そして、発頸の気の流れに反発する様に、内側から急速に体外へ向けて魔力が放出された。
同密度の力が相反する力は、まるで磁石が反発する様に互いの身を襲うだろう。
■黒須 > (敵の貴族の背から強力な魔力のぶつかり合いが反応した。
お互いに間近に爆破が起きたのち、距離が遠く離れる。
勢いに任せて飛ばされ、壁に衝突し、クレータを作ってはそのまま倒れる様に落ちて、地面に着地する。
その際に、風圧によって帽子が脱げてしまい、落ちる。
頭の上からは狼らしい尖った耳が出て来た。)
「ふぅ…あっぶねぇことしやがるな?」
(そのまま立ち上がると、ボロボロになったYシャツを脱ぎ捨てる。
その後、また別の魔術を発動する様にすると、黒須の体に異色のオーラが纏われる。
すると、細身の体がいきなり巨大化し、黒い体毛も生え、人間の顎や鼻先は動き、動物へと変化する。
そして、しばらくすればその姿は獣人へと変わった。
狼の顔にゴリラの様に割れて固そうな胴体を持つ黒毛に包まれた黒狼の獣人へ)
「だが、今のですぐに溜まったな…ここで終わらせるか…。」
(顔を上げて厳しい目つきで見ると、両腕、両足に赤いオーラが纏う。
野獣らしい四つん這いになると、そのまま飛ぶようにしてギュンターへタックルを仕掛ける。
しかし、その瞬間に黒須の姿が消える。
どこへ行ったかと探る前にすぐさま、ギュンターの体に向けて強烈ね一撃を放とうとする。
後ろからの背骨の骨折、また同じような移動をして脳天への踵落とし、喉ぼとけへの突き、金的への蹴り、そして、人間の中点を潰す鋭いナックルなどを放ち、完全なる戦闘不能状態を作り上げようとした。)
■ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…成程、獣人の類か。道理で良い動きをする」
彼と同じ様に吹き飛ばされた此方は、巨大なスライムを咄嗟に召喚して着地、というより墜落。
ダメージは防げたものの、覚束ない足取りで立ち上がって忌々し気に舌打ちを一つ。
「……何度も同じ手が通じると…!」
肉弾戦が得意であり、此方の視覚で追い付けない程の速度と、発頚を含めた武術を持つ。
種が分かっていても、それに対応出来るかと言えば疑問符が残る。そもそも、大規模戦闘等では無く、一対一の個人戦の時点で、既に己の勝ち目は薄い。
となれば、防ぐしかない。防ぎきれるかは兎も角。
再び発動する肉体強化。己の身を護る様に現れる無数の盾。雑多な召喚獣。武具の数々。
それらが打ち砕かれ、破壊され、蹴散らされる。彼が破壊する速度と、己が召喚・生成する速度のどちらが早いかというチキンレース。
その結果は、あっさりと訪れた。砕かれた武具の欠片が目を掠り、一瞬隙が生まれる。
その刹那。己の身に強い衝撃が走り、視界が一気に後方に流れていく。
どうやら綺麗に嵌まった一撃で吹き飛ばされたのだという事を理解したのは、辛うじて発動に成功した肉体強化の重ね掛けを終えた瞬間。闘技場の壁に砲弾の様に激突した後。
「……く、ハハハハハ!負けだ!此処迄綺麗に一撃入れられては、虚勢を張る事も出来ぬ。それに、これ以上やっては、大怪我ではすまぬ。明日の政務に差し支えてはいかぬでな」
もうもうと立ち込める砂煙の中から立ち上がった己は酷い有様である。そこかしこを擦り剥き、頬から血を流し、一撃入った腹部は衣服が破れ、そこを手で庇いつつふらふらと歩みを進める。
「……ぐ、む。本当に、王族らしく振る舞えぬ程痛いな…。もう歩くのも、億劫だ…」
そうして、ぺたりと座り込んで力無く黒須に微笑んだ。
そして、降参だと言わんばかりに両手を上げれば、観客から黒須に浴びせられる大喝采。
同時に、最早死体の方が健康的だとすら言える程の顔色ですっ飛んでくる主催者。
「……良い物を、見せて貰った。褒美は、必ず後程取らせよう。何、金はあるでな。今のうちに、買い込む物を決めておくと、良い……」
最後の力を振り絞って言い切ると、楽しかったと言わんばかりに息を吐き出して倒れ込んだ。
その身体を、黒須の身体を押しのける様に駆け寄って来た主催者とその付き人が大騒ぎしながら運んでいくのだろう。
平民が王族をコテンパンにした、というイベントに盛り上がる会場を担架で運ばれて退場する。
後日。黒須の元にはそれなりの額の金貨と"次は戦い方を教えて欲しい"という手紙が届いたとか。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」から黒須さんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。