2019/01/16 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 トレーニングルーム」にミセリコルデさんが現れました。
■ミセリコルデ > トントントントントンッ
汗臭く、泥臭く、何もかもが入り混じる最悪の臭気漂う此処はアケローン闘技場にある地下施設の一つで、剣闘士や試合の挑戦者達が身体を動かす為の設備が整ったトレーニングルームである。
今夜はもう全試合が終了したのか何時もの賑わいはなく、木製の藁巻の人型を打つ人影が一つぽつんと有るだけだった。
「………………フぅ………。」
運が良い事に今夜は偶然試合が無く普段ならボロボロの筈の身体も顔も綺麗なまま、体のダメージが無い事をいい事に、今夜は読書ではなく眠気がくるまで身体を動かす心算だった。
服装は試合に臨むときと同じ軽装。
両手には指先までキッチリと包帯を巻いて物を打つ仕度を整え、首輪は外してもらえなかったが、仮面の着用は免除され、比較的身軽な状態で藁巻の人型を叩くのに専念できている。
小柄で一見して痩せても見えるほど細身の身体、四肢の隅々まで力を込めて、物を打つにしてはゆるゆるとした速度で人型の側頭部に向けて上段蹴りを放ち、それが命中するか否かの距離でぴたっと足を上げたまま動きを止める。
自分で言うのもアレだが滑らかな動作だとは思う。
だが肝心の力が足りていないし、身体自体筋肉の付きも悪くないだけで決してよくも無い、と自覚が有る。
だからゆっくりと、着実に相手を打つことを優先する事で、相手に確実にダメージを与えて自分はなるべく受けないように……闘技場の試合では喜ばれない闘法だけども、こんな所で死にたくも無い、だからなるべくお互い致命傷にならない戦いを……。
と、蹴り足の鈍さ、試合の勝率、等はこの辺りの心の置き場所が悪いのだろう。
実際に勝率はすこぶるよろしくない。
ざっくりといえば百戦連敗、もう少しざくっと言えば10回戦って9回負けて1引き分け、つくづくこんな事は求めていないし、何とか帰りたい、無事国に帰りたい、と考えれば考えると程に動きは鈍り、蹴り足を下ろした時点で利用者の足で磨かれた床で滑りそうにも……。
■ミセリコルデ > そもそもだ。
前髪を無尽蔵に伸ばしている所為で前髪が瞼を越えて伸び、視界を阻害している所為で、藁巻の人形が今一視界に捉えずらい。
打撃を加えるだけの距離、であるから外す事は無いが……前髪を払って殴ればもう少しはまともな動きをする事が出来ると思うんだが、故郷の風習で髪を切る何て事はご法度であったし、此処に来て初めて前髪を切りたいと思ったし……ともかく、自分より背の高い相手を想定して調節した藁巻き人型の側頭部に放つ蹴り足を下ろした際に崩したバランスを上手く利用して、「キュ」と軸足の足先で床を擦り、身体を捻る事で勢いを逃がして強引に体勢を整えてから、大きな溜息を吐き出した。
傍から見れば蹴りの勢いあまってその場で一回転、と言う感じに見えただろう、し実際そんな感じでこけずに耐えて。
最後に適当に本当に軽く、左拳、右拳とスパスパンッと軽快な音を立てて藁薪人型の胴を叩くと、何ともスッキリしないもやもやを抱えて、今宵はこれ以上打つのを止めて、集中できなかった証拠の欠伸を噛み締めてトレーニングルームの出口へと向う、後で濡れたタオルで身体を拭くことくらいはやろうと、思ったとか思わなかったとか……。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 トレーニングルーム」からミセリコルデさんが去りました。