2019/01/11 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 観客席」にジナイアさんが現れました。
ジナイア > 巨大な闘技場の観客席。幾重もの段が折り重なり連なった長大な一般席のやや上方、一角に宙へと張り出した硝子張りの部屋があった。
俗に『貴賓席』と呼ばれるその部屋はVIP――つまり金持ち連中が『落ち着いて楽しむ』ために設えられた場所であり、中は外の一般席とは打って変わってごく静か。軽食と酒を提供するバーカウンターを背後に、闘技場に面した硝子沿いにソファが幾つも設えており、来訪者はそこでゆったりと観戦できるという事らしい。

真昼の筈なのに薄暗く紫煙さえ漂うその部屋へ、長身の女が案内されて入ってくる。案内のボーイにありがとう、と声を掛け、彼が下がれば訝しげに室内を見回した。

「……失敗したかな」

外で聞こえた下世話な話と怒号とで、つい「静かな席を」と所望してしまった。だが、本当に此処を『楽しむ』ならば、それをも受け入れるべきだったかもしれない…
赤銅色の頤の熟れた唇を苦笑いに歪め、ひと先ずカウンターへとゆっくり足を向ける。

ジナイア > やあ、とバーテンに微笑んでカウンターに凭れる。
「ホットサングリアを貰えるかな…グラスは小さくていい」
注文を伝えると反転して背をカウンターに預け、再度室内を眺めまわす。

室内の客は男女が半々…というか、男女のペアばかりだ。…少なくとも今は。しかも半数以上は顔を仮面で隠している。
そこまでして観たいものなのか、という気持ちと、何もそこまで、という気持ち半分、一瞬呆れかけるが、よくよく考えたらそんな場所を見物している自分が一番どうかしている。

ジナイア > バーテンから酒を差し出され、振り返ってありがとう、と微笑む。
――と、丁度試合が始まったらしく―――客のどよめきと共に、室内に存在していたらしい大きなモニターに、闘技場のリングが映し出される。

ジナイア > 「………」
バーカウンターに背を預けたまま、暫く、モニターの試合を眺める。
組み合わせは人間の男女―――これはまあ、文句はない―――だが、女性ファイターの衣服が異様に布地が少ない。
―――まあ、文句、はない。

と、室内の(主に男性)客たちが息を飲み始めるのが解る。
「………」
翠の双眸をモニターに投げたまま、女は黙ってグラスを呷る。

ジナイア > やがて訪れた、想像通りの光景と――――部屋に溢れる音声。

男女の息遣いが耳朶に響く。女はひとつ、身震いをしてごちそうさま、とカウンターへグラスを戻す。

ジナイア > 「………試合と結びつける必要が全く分からないな…」
小さく零すと、それを聞きつけた様子のバーテンがもの問いたげ視線を投げて来る。それにうっそりと笑いかけて

「…気が向いたら、また来るよ……」

そう言い残すと、最早音声からだけではない男女の息遣いが満ち始めた部屋を、密やかに後にする…

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 観客席」からジナイアさんが去りました。