2015/10/16 のログ
ご案内:「アケローン闘技場前」にリィン・レイヴィアさんが現れました。
リィン・レイヴィア > アケローン闘技場前の複数ある掲示板前には多くの人間がいた。
掲示板の張り紙には『闘技大会のお知らせ』という風に、幾つかの闘技大会の案内が記されていた。
街主催のもの、貴族・王族主催のもの、はたまた豪商主催……それぞれにルールも異なっていたが、共通していたのが賞金が出ることだ。

「闘技大会……」

そんな張り紙をリィンは眺めていた。こういう闘技場などを見るのは初めてだったためだ。
先日、リィンはこの港湾都市の一角で、男たちに凌辱されたばかりだった。
エクレシア王家の仇の一人であるカルネテル王家の王子にであってしまったためだった。
正体は見抜かれ、反逆者として公開凌辱された。とはいえ、そう言った横暴は既にこの国では珍しくない。
リィンは男たちに卑猥な目で見られはするものの、すぐにまたどうにかされるわけではなかった。
そんな恥辱などを受けても、リィンは諦めることなく冒険を続けていた。救世のために。
「すごい賞金……でも私じゃ無理そうですね……」

冒険者として冒険を始めてからしばらく経つものの、大した仕事はもらえないことが多かった。
リィンには金銭の余裕はなく、つい闘技場のこんな張り紙に目が行くのであった。
“偽神”ヤルダバオートを倒すには自身の力だけでなく、様々な装備とてそろえなければならない。故にこそ、リィンには金が必要だった。

リィン・レイヴィア > ここで行われる闘技大会の多くは、半ばショーのようなものであった。
もちろん己の実力を競い合うものもなくはない。しかし、リィンはそんな実情は知らない。
王族として長い間暮らしてきたため、冒険の手順や情報収集の方法、その他諸々の事のやり方は手探りだ。
怪しげな依頼などにもひっかかりそうになる始末である。
この闘技場の実情など当然知らず、書いてある通りの事をそのまま受け止めていた。

「……ミレー族?」

ふと掲示板から目を離すと、何人かのミレー族の女性が闘技場内に連れて行かれるのを見た。
他にも、無理矢理参加させられているように見える者もいた。
リィンはそれを見て首を傾げた。確かに少しキナ臭そうな雰囲気は感じとった。

リィン・レイヴィア > 「……少し、調べたほうがいいのかも」

そんなことを呟きながらリィンは再び掲示板に目を向ける。
ミレー族が出場する闘技大会、というよりミレー族は奴隷にされているのが基本だ。
闘技大会に自由に出られるとは思えなかった。
近くにいる挑戦者と思われる男女や観客に聞いてみようと思ったが、あまりミレー族のことを気にかけているとわかれば、不審がられる可能性もあった。

「私が闘技大会に出れば……」

もしかすると、ミレー族がどこかで囚われているのかもしれない。
これまでの経験から、闘技場で見世物にされている可能性があると、リィンにもすぐに理解できた。
リィンは王国の民とミレー族、それらを共に救う預言を持たされた救世姫だ。
ミレー族を救うことに迷いはない。問題は自分の実力であった。

「……とにかく、闘技場の中に入れれば」

実際に出場するかどうかは別にして、選手としてもぐりこめば調査も可能なように思われた。
自分のような子供を警戒する者もあまりいないはずだと自覚して。
自分がエントリーできそうな大会を探し、掲示板の前を歩く。
無自覚の魅了の力を振りまきながら、この場所に似つかわしくない幼い少女が掲示板を何度も眺める姿は奇異であろう。

リィン・レイヴィア > 「……とりあえず、様子を見てからにしよう」

時折、リィンの体に触れてきたり、尻を揉んで来たりしてくる男達から何とか逃れながら、リィンはなけなしの金を使い、闘技場の中へと入って行った。
まずは、観客として――

ご案内:「アケローン闘技場前」からリィン・レイヴィアさんが去りました。