2023/06/11 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にセリカさんが現れました。
セリカ > 少しだけ、風に当たりたいのだと告げて、ふらりと夜の街へ。
歓楽街の一角にある娼館に、一時的に席をおいての『出稼ぎ』三日目。
異国風と銘打って、得体の知れない香を焚いた部屋での『仕事』は、
特段、いつもよりきつい、というものではなかったけれど、
なにしろ、新鮮な空気が恋しくなる。

仕事着に華奢なサンダルを突っ掛け、フードのついたマントを羽織り、
無意識に両手で襟元を掻き合わせて漫ろ歩くうち、
気づけば倉庫街に迷い込んでいた。

暗いことが恐ろしいとは思わない。
人の気配がしないことは、むしろ幸いであると思う。
恐れることがあるとすれば、それは。

「……そろそろ、サボったと思われているかしら」

実際その通りなのだが、出来れば目立ちたくはない。
例えばひと晩戻らなければ、きっと追っ手がかかるだろう。
連れ戻されれば当然、折檻をされることにもなる筈だ。
実のところはそれも、怖いとは思わない。
ただ、ただ、鬱陶しいと思うばかりだ。

セリカ > かつん、こつん、あちこち傷んでいる石畳を、サンダルの踵が打ち鳴らす。
迷い子である自覚はあったし、まずいことになりつつあるとも思っていたが、
同時に、大義名分のあるサボタージュ、というシチュエーションを、密かに楽しみ始めてもいた。

館を出てから、そろそろ一時間。
今更慌てたところで、サボった事実は変わるまい。
ならば焦って戻ろうとすることも無いだろう、と、歩調は緩やかなまま。

数分後には、なかなか戻らない娼婦を捜していた館の男と行き会い、
腕を掴まれ引っ張られて行くことになるのだが―――――今は未だ。
ひとり、気ままな夜歩きの時間であった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からセリカさんが去りました。