2023/03/18 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にレベリオさんが現れました。
レベリオ > 丸い月明かりが深夜の船着き場を照らし出す。
立ち並ぶ倉庫の影が長く伸びる中、ひとつの倉庫の扉が開いて
その中から、ひとつの影が歩み出てくる。
いくら半隠居を決め込んでいても、しなければならない雑務というものはある。
ほとんどは、何も知らない人間に管理を任せている商品。
後ろ暗いものもあれば、真っ当なものもある。
その日は、それらの確認を行わなければならない日だった。

「やれやれ…面倒なことだな。」

吐息と共に吐き出した声音。
零れ落ちるそれに、微かに混じるのは甘い鮮血のような薫り。
見るものがいれば気付くだろう。
月明かりに照らされれる倉庫の影、路に伸びるそれに男の影がないことを。

――薄汚れた不死者は月明かりにすら見放される。
血色の悪い貌の中、深紅の瞳が足元を見下ろして、少しだけ困ったように笑う。
こういう刹那にふと、事実を思い出したように。

「――――。」

そして、緩やかに歩き出す。
立ち並ぶ倉庫の間を、月明かりだけを頼りに歩く。
まるで夜の散歩でもするような足取り。
それを彩るのは微かな鼻歌のような歌声。古い古い、最早知るものの少ないような歌。
人でなくなった魔物の悲哀を謳っていたような気がするが、正直歌詞は覚えていなかった。