2023/02/05 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にロージィさんが現れました。
ロージィ > 船着き場にほど近く、黒々と闇に沈む倉庫群が建ち並ぶ界隈。
潮風は香りばかり、空気の淀む細い路地を、とぼとぼと歩く女の姿があった。

歩き始めた時には素足であったものが、数歩、行くうちに木靴が足先を覆い、
裸同然であったからだには、裾の長いワンピースが。
俯く面は未だ蒼白かったけれど、そこここに目立っていた傷や痣は薄れ、消えて、
この女特有の、花の香りが辺りに漂うまでに。

バフートからこの街へ、恐らくは異国に売られるために連れて来られたのだろう。
しかし女は、大人しく売られる気など無かった。
行く先がここよりもずっと深い闇であったとしても―――――前へ、進むだけだと。
思い定めた女の木靴の音が、ぽくり、ぽくりと闇夜を辿る。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にエズラさんが現れました。
エズラ > 「おおっと……こりゃまた――」

女が歩む暗がりの先から声が響く。
影の中からぬうっと姿を現したのは野卑な空気を全身に帯びた男。
酒気を帯びていることは漂う芳香ですぐに知れよう。
行く手を遮るように立ちはだかると、品定めをするような視線を女の頭の先からつま先まで、遠慮なしにさし向ける。

「こんなとこを一人で歩いてちゃ危ねぇぜ――オレのようなのが居るからな」

日がな一日、日雇いの荷運び労働を終え、一杯引っかけた後――さて、このまま夜の町に繰り出すかという矢先。
ちょうど目の前に――
男の視線が、明らかに獲物を前にした肉食獣のそれに変わっていた。

ロージィ > 重い足音、漂う酒精の香り。
闇が揺らいで人の形を、大柄な男の形をとっていた。

反射的に立ち止まり、声の主の顔を真っ直ぐに見据えて、
半ば無意識に半歩、更に半歩と後退る。
深く眉根を寄せ、蒼褪めた顔いっぱいに警戒の色を滲ませて、

「……… こっちへ、来ない、で。
 遊び相手が欲しいなら、どこか、他所を当たって頂戴」

危険な相手、危険な、男。
硬い声でそう返してみたけれど、相手が引くとは思えなかった。
だから女は息を詰めて、―――――踵を返し走り出す、タイミングを計っている。

エズラ > 「あ、ハハァ……ドゥァ~メだなァ」

声色は芝居がかって、しかし視線は油断なく相手の四肢の動きにまで注がれている。
しかし、不意に――

「ハハァ……んおっ、おお……――」

一歩、二歩、千鳥足となって身体を揺らす。
それは罠――相手に踵を返させる機をあえて与えるもの――
――そして、それが叶えば、瞬時に地を蹴り飛び跳ねて、相手を背後から羽交い締めにして壁に押し付け捕らえよう、という計画なのである。
さて、女はどう動くか――

ロージィ > 聞いているだけで背筋が寒くなるような、粘性の高い声。
女の眉間に浮かんだ皺が、更に深く影をつくる。
けれども男は相当に酔っ払っているらしい、足許が、ああ、覚束ないように―――――、

当然、女はその隙を逃さなかった。
その隙こそが男の仕掛けた罠だと気づかず、深く考えるよりも早く、からだを動かして。
かこん、と木靴の踵を鳴らし、ワンピースの裾を翻して、

「――――――― ッ、きゃ、あっ!」

走り出したばかりの背中に、重い衝撃が襲いかかる。
咄嗟に顔を伏せたけれど、壁へ強かに額を打ち付ける格好になり、
一瞬気が遠くなるほどの激痛に、女の顔は歪んだ。
手近な壁に押しつけられ、喘ぐように息を吐く女の柔らかな肢体は、
背後から巻きついた逞しい腕に、がっちりと捕えられており。

「は、なし、て………いきなり、なに、す―――――…」

痛い、苦しい、熱くて、気持ちが悪い。
ぎこちなく藻掻き始めた女のからだからは、甘く、誘うような香りが立ちのぼる。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からエズラさんが去りました。
ロージィ > ≪移動します≫
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からロージィさんが去りました。