2022/11/17 のログ
リュシアス > 相手の視線に照れくさそうな様子を見せながらも、しかし続く彼女の言葉にはまさか、と大仰に肩を竦めて、

「少なくとも、女性からはそういった褒め言葉よりも、断り文句や罵倒を浴びせられる事の方が多いだろうね。」

そう答えてからその傍ら、テーブル代わりの酒樽の上に置かれたカードの中の一枚を、女性の指先が持ち上げるのを目で追う。
カード自体は男にとっても賭け事で慣れ親しんだ、記号と数字の描かれたもの、
しかし彼女の指先がそれらを巧みに繰り、流し目と共に作られた所作に思わず視線を奪われて。

「………うん。今まで、あまりそういった類のものにお世話になった事はないのだけれど。
 気が向く時が来たならば君にひとつ助言を求めてみるのも、悪くないかも知れないな。」

此方こそ、その時はよろしく頼むよと小さく笑って見せながら。
気が付けば赤く染まっていた筈の海空は暗くなり始め月と星々が浮かび、
少しずつ傾けていたつもりのグラスの中身も空となっていた頃合いで。

「さて、これ以上呑み過ぎると明日の仕事に差し支えるので、自分はそろそろ失礼するけれども、
 お嬢さんはどうする?宿に戻るつもりなら、自分で良ければ送って行くよ。」

尤も、一人旅の身の上と思しき女性にとってはそれも余計なお世話かも知れないが。
空になったグラスを手許で弄びながら、女性の方へと向き直り男は尋ねかける。
もし相手が拒まぬのであれば、男は喜んで彼女を宿まで送り届けるであろうし、
彼女が今しがた口にした通り、人肌の腕枕を提供するのも吝かでは無いといった物言いで―――。

ヴェルニール > 「…そういったお手合いの趣向がお好みでしたの?」

返される言葉には、まぁ、などと感嘆符をつけて。
指先を広げた片手を頬へとあてる同じように大袈裟な仕草で。

斜め方向にずれた勘違いをしてしまったのか、
それもまた軽口のひとつ、とでも受け取ったのかは定かでないが、表情は変わらず。
寧ろ面白そうに瞳が輝いたようにも見えるかも知れない。

賭け事にも、簡単な占いにも使えるカードは、港町という事を考慮して持ち込んだもの。
下手にカードを操ったあとで賭博しようものなら、いかさまと言われるので自分から持ち掛ける事はしていない。
予めすべてのカードの場所を知っているかのように一枚を抜き取ってカードにキスし披露する流し目の後で、山を纏めて再度シャッフルし、束ねて服の下へと仕舞い。

「何かの折に、思い出して頂けたのなら是非。
では、お言葉に甘えて、頼もしいナイト様に送ってもらいましょうか。
良さそうな宿をご紹介下さいな。」

底につきかけていた杯を空にすると、連れ立って店を後にして。
酔っているフリ――のつもりなのか、途中、腕を絡めるような素振りなどを見せつつ。
夜更けの港町へと消えていった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からヴェルニールさんが去りました。
リュシアス > 「それこそまさか。生憎そういう趣味は持ち合わせていないよ。」

大袈裟な仕草で投げ掛けられた問い掛けを軽口と取ってか、ははっ――と声を上げて笑いながら。
流れるような動きで女性の手の上で踊り、最終的に彼女の服の内側へと仕舞われたカードの束を見送ると、
テーブル代わりの樽の上へと空になったグラスと、二人分の代金を置いてから店内に居る主人へと声を掛けて店を後にする。

「―――しかと任されました。それではお手をどうぞ、お嬢様?」

そう言って、大袈裟にに彼女の手を取ってエスコートする振りをして見せるのだけれども、
冗談めかした調子とは裏腹に、その様子は手慣れたように見受けられたかも知れない。
道中、腕を絡めてくる女性の仕草に戸惑いつつも拒む事はせず。緩やかな足取りで二人分の人影が夜の港町へと消えて行った―――。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からリュシアスさんが去りました。