2022/11/16 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にヴェルニールさんが現れました。
ヴェルニール > 空に浮かぶ白雲が揺蕩い、穏やかな風の吹く夕暮れ間近な海辺。
港の方では停泊する船が荷下ろしを終え、賑やかな一団が今日の宿や食事処を探している頃合い。

「良い風ですわねぇ…」

港近くの飲み屋――と言っても、昼も空いているあたり、お洒落な言い方をすればカフェバーとかいう類の店なのかも知れない。
尤も、店内は入りやすい敷居の大衆的な内装をしているようで。

声の主はといえば、空いた酒樽をテーブル代わりにしたデッキテラス、椅子は用意されていないが、木枠の柵に腰を下ろして屋根の支柱に背を凭せ。
沈む夕陽の緋色と紺碧のグラデーションの中、夜に溶ける黒髪を靡かせ、薄絹を何枚も重ねたようなワンピースの裾を潮風に揺らしながら酒を楽しんでいた。
青緑を基調にした衣は、重ねた一枚一枚が夫々違った色合いのもの。
透け感がある布を何枚も長さや角度を変えて重ねる事で特有の陰影ができている。

酒樽テーブルの上には無造作にカードの裏面を並べている辺り、暫く前までは気紛れに旅人の道先でも占っていたのか、或いは賭博にでも付き合っていたのか。
今は共に過ごす相手もおらず、近くに錨をおろす帆掛け船の舳先を見るでもなしぼんやりと眺めて。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にリュシアスさんが現れました。
リュシアス > 店内がバーとしての賑わいを見せるには少し早い夕暮れ時の時間帯。
利用客の出入りも疎らといった最中、入口の扉が開く音がひとつ。
琥珀色の液体と氷の入ったグラスを片手に、現れたのは簡素な装いをした金髪碧眼の男の姿だった。

「―――……やぁ、お嬢さん。隣、失礼しても良いかな?」

ゆらりと流れるような足取りながらも泥酔した様子は無く。
デッキテラスに佇む先客の姿を認めればそう声を掛けはするものの。
彼女の返事を聞くよりも先に、男はその傍の木枠の柵に凭れるように両腕を乗せると、ふーっ……と一息吐く素振りを見せた。

ヴェルニール > 混み合うのはもう一刻ほど後の事だろう。
客の疎らな店の奥、屋外に視線を投げいたものの。
新たにやってきたらしい客の足がこちらへと向く気配に、ヴェールと共にさらりと髪を流して肩を動かして。

「…うふふ。まぁ。お嬢さん、だなんてこそばゆいものですわね。
ええ、勿論どうぞ。」

蒸留酒らしいグラスを手にした人物を瞳に映せば、笑みを浮かべてゆるりと頷き。
返事よりも聊か早めに凭れる素振りにも、眉を動かすことなくそのままの表情。
凭れていた支柱から背を起こすと、腰を下ろしたまま、手元を近づける。
飲んでいる途中ではあったものの、同じような色合いの液体が入ったグラスを寄せ、軽く縁を合わせようと。

リュシアス > 夕暮れ時に赤く色づき始めた、白雲の浮かぶ空を背に、ヴェールと共に艶やかな黒髪を海風に揺らす女性の姿は、
暫し男が惚けたように見つめてしまう程、何処か絵画的な美しさを纏っていて。

「では、お言葉に甘えて。………おっと、これは光栄だ。」

仮に断られた所で動くか如何か怪しい程に既にその場に落ち着きながら、
しかし笑みと共に快く受け入れる彼女の言葉に上機嫌そうに口許が笑みを形作る。
加えて、相手の手に握られたグラスが寄せられるのを見て取れば。
己の手にしたそれと縁を合わせれば――小気味の良い乾いた音色がひとつ響いて。

「………お嬢さんは、ダイラスには観光?それとも仕事?
 あぁ、もしかして元々こっちに住んでいる人――とか?」

グラスに入った琥珀色の液体を数口仰いでから、ちらりと隣の彼女へと視線を向けてそんな疑問を投げ掛ける。
偶然立ち寄っただけの旅人のようにも見えるし、この辺りのバーで歌っている歌姫のようにも見える。
それ程までに、男にとって目の前の女性は何処か浮世離れして掴み所が無いように見えた。

ヴェルニール > 言葉では礼を尽くしながらも、元より立ち去る気配も感じられぬ素振りに、くすくすと肩を揺らして。
こちらとて断るつもりは無いので構わず、この手の相席が常態化している店では、それも言葉ばかりの挨拶と思っているようで、持ち上がる彼の口元に同じように唇で弧を描く。

「あなたのような素敵な方でしたら、喜んで。」

小ぶりなグラスの音を軽やかに立てると、グラスを口元へと傾けて。

「ええ、旅の者ですわ。
空に泳ぎながら形を変え、青色に溶ける白い魚たちを追ってきましたの。
この辺りは潮の気配が濃厚で、とても心地よいものですから。
帆船が藍の境界に溶ける頃までは過ごそうかと思っておりますのよ。」

恰好が格好であるからして、舞姫や夜に夢鬻ぐ者と思われる事もよくある事。
その辺りは左程気にならないらしく、曖昧な言の葉に塗して、察しが良ければ当てをつけられそうな返事を。

「そういったあなたも、この辺りの方のようにはお見受けしませんけれど…」

気性が激しかったり、豪胆な者の多い海辺ではお見掛けする事の少ない手合いの御仁を一瞥して。
服装は質素ながらも整えられているあたり、お忍びの貴族を彷彿とさせるが、さて。
或いは――などと、彼の容姿から見えるものを拾いながら、笑みを落とし。

リュシアス > 「ははっ、素敵な方とは。君のような人にそう言って貰えると、お世辞でも嬉しいね。」

また一口、グラスの中身を少しずつ舐めるように呑みながら相手の言葉に嬉しそうに笑う。
決して大きくは無いグラスの中の琥珀色の減りが遅いのは、今は酒精よりも目の前の相手との会話を愉しんでいる証左。

「随分と、詩的な言い回しをするのだね。
 ――本職は吟遊詩人か、流れの歌姫といったところかな………?」

違っていたら失礼、と付け加えてから思い至った憶測を口にする。
舞姫や、一夜の夢を鬻ぐ者―――確かにその考えにも思い至らなかった訳ではないが、
流石にそれを初対面の女性に面と向かって尋ねる程、明け透けでも礼儀知らずでも無いつもりだ。

「―――嗚呼。お察しの通り、自分は王都から仕事でね。
 幸い今日は早く一仕事終える事が出来たので、こうして夕暮れ時から呑んだくれているという訳だ。」

手に持ったグラスを示すように掲げて見せながら、茶化したように笑いながら答える。
その回答が示すように、男も決して肉付きの無い方では無かったものの、
屈強な海の男達に比べてしまえばその身はか細く、色も白く貧弱に映ってしまうことだろう。

ヴェルニール > 「…うふふ。
お世辞ではありませんわよ。

あなたのその明けの宵に輝く星のような髪も、穏やかに水を称えた湖面のような瞳も。
それに、物腰優雅でいて、意外と大胆さの垣間見える処も素敵だと思いますわ。
きっと、これもまた似たような誉め言葉は貰っていらっしゃるでしょうけれど。」

幾らか先に店内に居たものだから、何杯かは既に煽っているのだろうが。
酒を傾ける速度は彼に合わせてか、ゆったりとグラスに沈む液体の嵩を減らしていく。
容姿に関しては目立つものなので、方々で言われていてもおかしくないだろう、と。

「吟遊詩人の真似事をしたり、占術を少々。
――他には、その土地で人手が足らぬ事がありましたら、気紛れにお受けしておりますわ。」

流れの旅人なので、困れば何でも、といった手合いの回答。
今はこうして、夕暮れ前から飲んでいるのだから、余裕はあるのだろうか。

「……まぁ、王都から。
あたくしも先日、王都に滞在していた所でしてよ。
少々知り合いを訪ねてみたのですけれど。
居ついていた宿の枕の寝心地が悪いので、出てきましたわ。」

王都から、と聞けば似たような足取りで来たらしく声を弾ませて。
それではお仕事お疲れ様ですわ、と改めて笑み。

リュシアス > 「――――その。何というか……そのような褒め言葉を貰ったのは初めてで、決して悪い気はしないのだが………。
 そこまで言われてしまうと、意外と恥ずかしいものだな………。」

少しだけ困った風な表情を見せながら、まるで照れ隠しのようにグラスの酒精を少し多めに煽ってゆく。
聞く者によっては揶揄われているように取ってしまうかも知れない相手の詩的な賛辞は、
決してそのような意図は感じられなかったし、不快では無い――それだけは、確かなのだが。

「………へぇ、占い師もやっているのか。」

その考えには思い至らなかった、とばかりに碧眼を丸くして見せた後、

「――――それは奇遇だ。
 自分はあと二、三日は仕事でこっちの宿に滞在した後、王都に戻るつもりだが………。
 お嬢さんの今後の旅の予定は?国内の色んな所を巡ったり……或いは船で別の国まで?」

もしまた王都に滞在する予定があるなら、今度はもっと枕の良い宿を紹介するよと。
労いの言葉には軽く腰を折って感謝の意を伝えながら、そんな問い掛けを口にする。
別段彼女の旅路や目的を詮索しようとする心づもりのものでは無く、単純な好奇心からくる質問を―――。

ヴェルニール > 「意外でしたわ。聞き慣れていらっしゃるのかと。」

見開いた瞳を向けるものの、ゆったりとした口調は驚きよりも業とらしさを感じさせてしまうかも知れない。
想定とは少々違った反応ではあったものの、揶揄うつもりはなく。
お可愛らしい――などと言ってしまうと、いよいよ揶揄っていると受け取られかねないので言葉には出さないが。
困ったような、照れたような表情を見せるのを、目を細めて見て。

「先行きを、天に任せてしまいたい時や、迷いがあって決めかねている事がございましたら。
…そういった事ではなくとも、気が向かれましたら伺いますわ。
或いは何かの切欠になれば幸いです。」

酒樽をそのまま使ったテーブルの上に一旦グラスを置き。
無造作に投げ出されたままのカードを軽く混ぜると、指先で一枚を持ち上げて。

今宵はタロットカードではなく、一般的に流通しているトランプと言われるカード。
指の間に挟んだ、ハートのエースのカードをひらり、と宙で返すと、口元へと。
カードの端に唇をのせて流し目を送り。

「探している物もありますから、この国には、当分いる心積もりですわ。
仔細は特に決めてはおりませんが――
気儘に王都にも戻りましょうから、その時はお願いしますわね。
ふふ。羽毛の枕とは申しませんけれど、人肌の温みのある腕の枕も良いものですわね。」