2022/07/01 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」に八蛟さんが現れました。
■八蛟 > その日の晩は、限りなく細い輪郭を描く月が空で鋭さを増している。
こんな鋭い夜は、剣士ならその鋭さに魅入られて、人を斬りたくなるほどに、己の刃を見て切っ先に焦がれるらしい。
そんな物騒な夜のせいか 鬼もまた機嫌よさげにこの夜を満喫していた。
鬼の夜はどんな暗闇でも 向こう側の見えない海の線でも恐怖しない。
船着き場は酔いどれ 奴隷市場 見所のある大小の船などが立ち並ぶ場所
ほろ酔いなのか 手には素焼きの壺徳利を片手で軽々と持ち上げている。
背丈の高さに対してみれば、子供どころか青年だって軽々と収まりそうなそれを片手に、醸した澄まし酒
それが太い健康的な歯列の奥 口の中へと どべんどべん と流れ込んでいく。
「―――ぷはァ。
良い夜だ こんな夜は鬼でなくても体が疼くもんさ。」
頬を少し染める鬼は、愛用している獲物を片手に、酒を呷りながら船着き場で立っていた。
歩くたびに蛇革で足をつなぎ止めた厚みのあるサンダルが 下駄歯をガランゴロンッと鳴らしてる。
好戦的な女は楽し気に月を見上げて酒を飲む。
タバコの煙を常飲するかのように 酒を手元から離すことはない。
「ハイブラん中で、暴れてくるべきだったかねェ。」
ついつい、月に魅せられて顔を出してしまったかのように
鬼は酒を片手に外をぶらつくことを選んでいた様子。
街中に比べれば 何か出ずるかわからない暗い海 波の音 時折道を忘れた酔いどれ以外は
奴隷市場の童のすすり無く声だけが耳を拾いそうな場所。