2022/06/05 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にグァイ・シァさんが現れました。
グァイ・シァ > 深夜。
船着き場に昼間の賑わいは無く、ただ湿気を含んだ熱気だけが残っている。
波音は静かで、時折届くのは遠く海鳥の鳴く声。

船着き場に併設された倉庫街は、その建物がくろぐろと落とす影によって更にしんと静まり返っている様にみえる。
合間の路地は深夜に街灯もない、一目につくことは殆どない、悪事にはうってつけの場所。

その場所を、硬質の音を伴って歩く足音がある。
隙間を縫って振り落ちた月光に姿を照らされるのは、朱い髪の女だ。

(…なんだここは)
表情はいかにも忌々しげ。
気付けば知らない場所にいるのは時折あることだったが、このような場所は初めてだった。
耳に届く規則正しい音、嗅ぎ慣れない香りを運んでくる湿った風。

溜息とも憤然とした吐息ともとれるものを零して、女は取り敢えず視界が開けそうな場所を目指して歩く。
足取りに迷いはない。方向が解っているわけではないが、視界に闇があるのは余り苦にならない。

全く、忌々しい。
血の香りが無いということは、血を流せば騒動になる場所ということだ。
憤然とした足取りと、伴って甲冑が擦れる音が路地に響く。

グァイ・シァ > やがて開けた場所に出る。

眼前に広がった光景、月光に光を弾いて黒いびろうどのように波打つ、果てが無いような広大な水。
風が運ばれてくるのはその水の方向から。であれば、これは『それ』の香りなのだろう。

忌々しげな表情だった女は一瞬呆気にとられたように目を見開く。

暫くして
そんな場違いな存在は海辺から姿を消しているだろう。
残されたのは、静けさを染み渡らせるような潮騒だけ――――

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からグァイ・シァさんが去りました。