2021/10/29 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 船着き場傍にある倉庫街。
夜になれば街灯もなく、合間の路地は真っ暗で悪い事をするにはもってこいの場所。
しかしこの国らしくそんな場所は色々な需要があって、あっちの路地でこそこそ、こっちの路地でざわざわ、時折くぐもった叫び声までして今宵もやたらと人気にあふれていた。

「黎明来♪~」

細い月明かりが辛うじてさし込むその倉庫街の路地を、場違いに鼻歌を歌いながら歩く女がひとり。
軽い足取りで両手をスボンに突っ込み、空の木箱の影から路地を覗き込んではそこで起こっている出来事を細い目でじーっと見つめてみて
期待した様な騒動でないと解るとフンと鼻を鳴らしてまた路地裏散歩を再開する。

(折角丁度いい場所なンだケド)

故郷でマフィア同士の抗争をするならこういった場所が良い。
公安だって手を出したがらないし出さない言い訳もあって、非常に喧嘩がしやすい。

だというのに

この街ときたら恫喝か恐喝か強姦か拷問か、なんかそんな感じのやりとりばかりのようで、うろうろしているこの女としてはかなり盛り上がりに欠ける。

「……酔っ払い同士の喧嘩探しに行った方がマシだったかも……」

もう路地を覗き込むのも飽きたようで、適当に路地を周って進む。
建物の合間からは近く遠く、潮風が漂ってきて波音が運ばれてくる。

表に辿り着いたら、今夜はここを諦めて点心でも買いに行こう。
思うともなしにそう決めて、ふと目を止めた場所に虎猫が一匹。薄茶と黒の柄がはんぶん闇に溶け込んでいる様子で、合間から爛々と黄緑色の瞳を光らせている。
その瞳と、女の細い目の視線がばっちりとぶつかって

「―――你过来(おいで)…」

反射的に逃げようとする猫に対して、女はしゃがみこんで手招きをした。

――――暫し、膠着の時間。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にリコリスさんが現れました。