2021/07/03 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 今日は一日中曇天だった。
日暮れ時となった今空は更に黒くなって、遠く沖で海鳥がギャアギャア文句を言いながら巣へ帰って行く様子が見える。
びゅうびゅうと湿った不穏な風は船着き場まで吹いて、係留されている小舟はまるで木の葉のように揺れ、大型船と桟橋はぎぃぎぃとこれまた不穏な音を響かせている。

「…――――没中签(はずれ)…」

船着き場の端の端、積まれている木箱の一つに腰掛けている女がひとり。三つ編みを風に嬲らせながら小さく呟いて、手にしていた中華饅頭を頬張る。
じゅわぁと広がるトマトベースの挽肉の味。
もう粗方冷めているけど、この味はここの屋台まで来ないと食べれない(たぶん)。偶に『アタリ』でチーズが入っていたりするのだが、これは違った…
というのとは別の理由で、女は何やら難しい顔をしてぶらぶらと脚を揺らす。

今日は荒天のせいだろう、船の行き来は全くなかった。
そのせいで喧嘩を買ってくれそうな荒くれものの船員もゴロツキも闘技場目当ての戦士も、もっと言うと人もほとんど見当たらない。
辛うじていつもの屋台があったから良かったものの、全部空振りだったらどうにかして猫の一匹でも探し当てて、思う存分モフモフしてからでないと気が収まらなかっただろう。

ホアジャオ > 「好吃(美味い)ー…」

難しい顔のまま細い目を閉じて、考え込んでいる、のではなく味わっている。
鼻腔に抜けてゆくトマトの風味はいつもの中華まんよりシンプルだけど、ちょっとしめった今の気候にはすがすがしくて、太陽の味みたいだ。

ひとくち、ふたくち。
最後の一口を口に押し込むと、むぐむぐと頬を動かしながら改めて船着き場を眺める。
うーん、やっぱり誰もいない。

(街のほうでゴロツキを探した方が良さそうかなァ…)

よくよく噛んでからごくんと飲み込むと、木箱からぽんと飛び降りる。
何はともあれ、好物で腹が満たされたのでひとまず上機嫌。

「♪」

女は一日の締めくくりのデザートたる喧嘩相手を探しに、たんと弾むような足取りで三つ編みを揺らし
不夜城たる街の方へとまた、船着き場から人影が消えていく

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。