2021/06/19 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジギィさんが現れました。
ジギィ > ザァッ―と薄明りの零れる曇り空から雨が零れ落ちて来る。
最初はごく細い糸雨だったのが段々と船着き場の石畳を打ち付ける様なものになってきて、行き交っていた人々は避難場所―――街の方へと速足から駆け足に、露天商たちは慌てて店じまいに掛る。

「―――失敗したー…」

その露天を商っていた内のひとり、銅色の肌の女エルフが、船着き場に大きく庇を掛けている木の下で雨宿りしつつ辺りを伺って呟く。
ひゅうひゅうと風も逆巻いてきて、どうやら荒れ模様。
商品である薬草、粉薬の類は濡れてしまうと厄介だ。
布でくるんだそれをぎゅっと胸に抱き込んで、木の幹に背中を預けて不満げな鼻息。

(欲張りすぎたかな…)

旅の身とて、春の内に取りためた薬草類は夏本番までに売り払ってしまいたい。
路銀に困っているわけでも蓄えが全く無いわけでもないが、在庫を腐らせるのも忍びなく、隙を見つけては店を広げているのだが。

「…まあ、そういうこともあるか」

これ以上降り続けばこの木陰でも雫は免れまい。
覚悟の上で街まで駆けていくしかない。
胸に抱いた包みに力をこめると、油紙と布とで包んだそれはかさりと抗議の音を立てた。