2021/05/21 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 厚い雲に太陽が覆われて、今にも泣きそうな空の日。

船着き場には海から不穏な湿った風が吹きつけてくる。
係留されている船と陸とをつなぐ桟橋は軋んで波音の合間に悲鳴を挟んで、船着き場の人々に愛嬌を売っていた海鳥たちも鳴き交わしては何処かへ姿を消していく。

「…午前中は良い天気だったのになー…」

船着き場の一角、露店がならぶ片隅で銅色のエルフは空を見上げる。
布を広げたうえに薬草を並べただけの店は、今朝から幾らも減っていない。おまけに、びゅうと風が吹く度に薬草自体が布ごと飛ばされそうになる。
仕方なく風が向かってくる方向に腰を降ろして押さえていたものの、それは全く客から商品が見えず、女がぽつねんと布に座り込んでいる様にしか見えなかった。

(――…潮風は面白いから嫌いじゃないんだけど…)
膝を抱えている腕が、なんとなくべっとりしてきた気がする…

(場所代の元とりたいのになー)

船から降りてくる人たちも、露店に興味を示す余裕なく街の方へと去って行く。
ぼんやりその背中を眺める女エルフの、周囲の露店にはぽつぽつと店をたたみ始めているところもある。

降って来てからでは薬草がだめになる。
解っていつつ、お尻は中々持ち上がらない。

ジギィ > びゅ―――――

「うわっぷ…」

一際強い風が吹いて、女エルフのくせ毛はくしゃくしゃに乱される。
ついてに眼にごみがはいって思わず両目をぎゅっと瞑ると、悪態をつきながらごしごしと手でこすった。
次に上げたときには眼は真っ赤で、明らかにぶすっとして口を尖らせている。

「も―――…」
 (…他のお店冷やかしてかえろ…)

お尻で踏んでいた布を振り返ると、あった筈の薬草はことごとく背後にしていた石垣のあちこちに飛んでいる。ぺっとり隙間に入っているモノまであって、かき集めるのは大変そうだ。
まあ今回の予定としては、並んでいる薬草そのものよりも、コネクションというか、顔を売りに来たので……

(…肝心なところじゃないから、いいんだもん)

若干いじけも入る。
振り返った姿勢のまま盛大に溜息を吐くと、そのまま身体を捻って薬用をかき集める
漸く腰を上げた布で畳み込んで結べば、簡易荷物入れに早変わりだ。

ジギィ > その布包みをひっつかんで立ち上がる。
他の端に置いていたリュックを背負いなおすと、ぶわーとまた風が吹きあれてきた。
顔に纏わりつくのをうっとおしそう掻き上げながら、身軽な身一つのエルフは船客に混じって街の方へと……

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジギィさんが去りました。