2021/05/05 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にナランさんが現れました。
■ナラン > 空が夕暮れから薄闇に移る頃。
旅客や商人、船で働く人々が三々五々と散って行く時間帯。
去って行く人の流れが多い中、逆らうように船着き場へ踏み入れた女がひとり。
街灯に灯りが灯されていく石畳の路を、係留されている船をひとつひとつ確かめるように見ながら、もう人気も無くなりそうな奥へ奥へと。
「――――あの」
2人連れの船の男らしき姿へと声を掛ける。
曰く、そろそろ着くはずの、そして折返しで王都へ向かうはずの船を知らないか、と。
『――――ああ、それなら』
ひとりの男に思い当たる様子に、女がほっとした顔をしたのも束の間。
どうやら時化があって出立が遅れているらしい―――
『来るのは、明日になるんじゃないか?』
たぶんな。
言って男たちは、街の方へと歩みを再開する。
「…ありがとうございます」
その背にぺこりと頭をさげて、上げた女の顔には落胆と困惑の表情。
―――宿は引き払ってしまったから、改めて見付けなくては。
(――――それとも)
どこかで野宿でも、してしまおうか。
野営を苦としない女は、そんなことも考えたりする。
■ナラン > 人の出入りも収まった船着き場の入口、街へ続く路を見遣る。
途上で見つかればいいけれど、歓楽街まで戻って宿を探す気力はない。
あの夜なお明るい街で様々色々と袖引かれるのにはすこし、食傷気味だ。
(賑やかなのは、嫌いじゃないけれど)
いつもなら珍しく面白いと思うのだけど、今はすこし、距離を置きたい。
考えている内に水平線上を漂っていた陽はじりじりと沈んでいて、海特有のすこし強い風が吹き始めた。
■ナラン > 波に揺れる桟橋がぎぃ、ぎぃと音を立てる。
女はターバンを解けない様に押さえて、まだすこし考えるように瞳を伏せて
やがて意を決したように顔を上げると踵を返す。
そうしてまたひとり人影が、ターバンから零れる黒髪を潮風に嬲られながら、船着き場を去っていく―――
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からナランさんが去りました。