2021/03/06 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 深夜の船着き場は、昼間とは違ったもので満たされる。
曰く、係留された船や桟橋の軋む音、打ち付けるさざ波の音、吹く風に揺らされる帆布に時折海鳥の鳴き声。
そしてたまに…猫の鳴き声。
今夜はそれに、女の声も一つ。

「ちょッと、これ食べ物じゃ無いッてば」

船員や漁師、訪れる船客にと様々に餌付けされているのだろう。彼等の殆どはつやつやとした毛並みをして堂々たる体躯のものまでいて、こんな深夜に至るまで来る人に愛想を振りまくのを忘れはしない。
その猫を意図せず引き連れる事になりながら、船着き場に現れたシェンヤン女は波止場の端の方へとずんずん歩いて行く。
胸に何か抱えているが、それが猫を寄せ集めている様でもあり…

「あっと、对不起(ゴメン)」

足元にまつわりつかれれば踏みもする。
多少見せしめにわざと軽く。踏みつけられる前にするりと逃げた猫も抗議の声は上げるが、程なく再びまつわりつく一団に戻る。
女は面倒そうに口を尖らせて足を運び、それでもそれ以上振り切ることはせずに
波止場の端まで辿り着くと抱えていた紙袋から更に小さな袋をひとつ。

「…これ猫にも効くのかなァ……」

中の正体は麻薬に近い媚薬。
カジノで因縁つけてきた相手を熨して取り敢えず持ち物を押収したら、おまけで付いてきてしまったのだ。
海中に投げ込むつもりだったが、まさかヒトの他にも需要があるのだろうか、とまつわり付く猫たちを細い目で見下ろす。

ホアジャオ > 「―――……」

半端ない好奇心が疼く。
今でさえうにゃうにゃ言って何だか酔っぱらっているように見える彼らが更に悶える様は、何だか……春らしいではないか?

「――――――不,不(いやいや)…」

ふっと妙に大人びた笑いを口元に浮かべて首を振る。
弱いものに対して悪戯は良くない。

(せめて、安全なところに行ってやらないとね…あとおやつと)

にんまりと笑みを浮かべると、小袋を紙袋に戻してくるりと踵を返す。
そのままにゃあにゃあなあなあごろごろと付きまとう猫を引き連れて
船着き場からほど近い、夜の屋台街へと…

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。