2021/01/23 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 水平線に沈む夕陽は面白い。
森に暮らしていた時は山々に囲まれていて、黒々とした山影に沈む陽もそれはそれで面白いと思っていたけれど、海と空とを真っ赤に染めながら、そこから水上の路を段々と縮めていくような様と、同時に空から藍が迫って来る感じが凄く近くて――――

「―――…きれいだなあ…」

かつて貨物だったのだろう、今は空らしい、木樽に腰掛けてそんなことを思う。
故郷を離れて放浪中に何度もやったけど、ちっとも飽きないのは我ながら本当に不思議だ。

物珍しい気持ちで潮風を嗅ぎながら辺りを見回す。
船着き場の端のほうだということもあるけど、もうきっと客船が行き来する時間は過ぎたのか、見渡すところの人影と言えば漁師か船員と思しきもの位。
恐らく彼らももう少ししたら、街の方へと姿を溶かすんだろう。

で、私はと言えば

「…―――今日は来ないみだいだなあ…」

此処へ到着するであろう人物から、届け物の受取を頼まれていた。
取り敢えず相手の特徴と素性を聞いているから、宿を確認してそこで受け取りのための伝言を頼もうと思っていたのだけど。
ブツは薄い封書がひとつ。
侮るなかれ、貴族同士でわざわざのやりとりだから、何かしらややこしいものにちがいない。

(――――さっさと終わらせたかったけれども)
樽の上に両脚も乗せて、膝を抱える。潮風が髪を嬲って行くのに目を細める。

この様子だと、明日一日またここに来なくちゃいけないかもしれない。
どうにか宿に留め置いてもらうとかしないと…

「っくしっ」

風邪ひきそう。

ジギィ > 空と地平線が紅から藍色へと移り変わっていく間に、想像どおり、人影はなくなっていく。
時折船員が近寄ってきて冷やかしみたいな声掛けてきたけど、尖った耳と肌の色とを見て大体が愛想笑いで去って行った。
こっちで見かけるエルフは大抵白い肌だから、なんか別の種族だと思われたのか、そもそもエルフが苦手だったのか。

遠くで海鳥が鳴きながら、恐らく巣があるんだろう、海に突き出た岩山のほうへと跳んでいく。
そろそろ藍色に星がちらちらと浮かんできて、海から吹く風も冷たさを増して来た。

(…今日は来ない)
諦めよう。ほんと、風邪ひきそう。
宿に帰って、明日貼りつきにならなくても済む方法でも考えよう。

ちょっと勢い付けて樽から飛び降りると、平らなお腹をぽんぽんと叩く。

(何食べよう。海の近くだからやっぱり魚かな…)

浮かれた気分半分、仕事について厄介な気持ち半分。
そんな感じを鼻歌で歌いながら、船着き場からまたひとつ消える人影となって、街の方へと…

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジギィさんが去りました。