2020/10/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にルインさんが現れました。
ルイン > あまり王都外で仕事をすることはないのだが今日は偶々複数の同業と護衛の仕事を行った後の副業。
現地解散の仕事だったので観光をするつもりであったがどうせならば小銭を稼ごうと船着き場で荷物の見張りの仕事を受けて。

「この辺は人目もあるの平和ですね…」

そんな事を口にして荷物の木箱一つに腰を掛けて半ば暇な仕事の最中。
周囲にはそれなりに人目があり、厳重に梱包された荷物の見張りという事で安全面は高く。
比較的に平和に見張りを続けてはあくびを零して。

ルイン > そうしてゆっくりとした平穏な仕事の時間は過ぎていく…
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からルインさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にフェリーチェさんが現れました。
フェリーチェ > 本日到着したばかりのオーシャンライナーから、多くの人々が溢れ出してくる。
数も多ければ人種も様々。
外遊から戻った富豪は上級船室からのんびりと歩みだし、団子状に固まった奴隷たちは鞭の撓る音に追い立てられる。
そんな中に、常盤色の上質な生地のシスタードレスを身に纏った少女の姿があった。
背には着替えなど生活必需品が最低限詰め込まれたリュック、更に肩掛けしたボストンバッグには新天地でさばかなければならない商材。
そんな身なりの良さの割に付き人もなく自ら大きな荷物を抱え、地面に降り立ってまず大きく伸びをする。

「ふぅあぁ……思ったより遠いのですね、チケット代に見合っているということでしょうか」

桟橋の砂が積もっていない場所まで歩いてから、ボストンバッグの方だけ下ろして痺れた両手をグーパーして身体をほぐしていく。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にセイン=ディバンさんが現れました。
フェリーチェ > さて少女の目的はと言えば、着の身着のままの観光旅行でもない。
まずは生活基盤を整え、今後のより良い顧客との縁を祈らなければならなかった。
狭いベッドがあるだけマシという船室で随分と固くなった身体をある程度まで解し終えると、重いボストンバッグを再び引っ張り上げる。

「最低限はお安い市場の場所と今日寝られる宿、それから所得別に宅地を調べて……あ、その前にこの辺りを仕切る商会に顔繋ぎしておかないと」

指折り今後の予定を考えながら船着き場を歩き、情報が得られそうな人物をキョロキョロと探し始める。
決して目利きに優れているわけでもない少女は、あぁでもないこうでもない、とすれ違う人々を品定めして……。

セイン=ディバン > 「……あ~い。確認とれた。
 『商品』に欠品一切なし。
 後は、店の人間が来てくれるだろうよ」

ダイラスの船着き場にて。一人の男が気だるそうな声を上げる。
男の目前には大勢いる奴隷たち。
男はその奴隷たちの数を確認して、近くにいた水夫に書類を渡す。

「ほいじゃ、オレはお役ゴメンだな。
 報酬はギルドによろしく~」

水夫が書類を受け取れば、男はそう言い、ん~、と一度伸びをする。
本日の仕事は、納品される奴隷の受領確認。
それと、それに伴う『商品』の護衛。
それらの仕事が終わったので、ここからは男は自由の身であった。

「……さて。どっかの宿に部屋でも取りますか。
 ついでに、酒場も併設だとなお嬉しい……」

自宅にすぐに帰ってもいいが、せっかくのダイラス。
久々に来たのだから、羽根でも伸ばすかぁ、などと考え。
男は、船着き場から移動を開始しようとする。
そんな中、なにやら周囲を見ている少女の姿を認めれば。
うん? と首をかしげる。本当に幼い少女。
周囲に知人などがいる気配も無い。

「……お嬢ちゃん。探し人? それとも探し物?」

その様子がちょっと気になったので。
男は、ある程度離れた位置から、そう声をかけてみた。
警戒されないように、スマイル。
ただ、この男の笑顔は、見る人間によっては胡散臭さしか感じないかもしれない。

フェリーチェ > 声をかけられ見上げた少女の最初の反応は、ビクッと肩を跳ね上げる小さな身震い。
開きかけた唇は半開きのところで一瞬その動きを止め、上目遣いで少し考えた末に唇をひと舐めしてから喋りだす。

「はい、まずは捜し物の方です。この辺りでお安い宿屋がありましたら教えていただけませんか?」

周辺地域の分布は分からなかったため、適当に一つ紹介してもらえれば繋ぎになるだろうと適当に見回す仕草をして問いを投げる。
が、それからすぐに何かに重大なことに気づいたかのごとく、さっきの船を指差して間髪入れずに続ける。

「もちろん、お安いと言ってもあの船の三等客室よりはマシな広さでしたら嬉しいです」

ちゃんとした場所に泊まりたいんだという思いと、ついでにちょっと苦労した事への愚痴を載せて。

セイン=ディバン > 男は男なりに、少女を怯えさせまいとしたのだが。
やはり相手は少し驚いてしまったようで。
しまったなぁ、と男は内心思い。
微妙に、笑顔が引きつるも、なんとか笑顔のままで。

「安い宿、か……。
 そりゃあ、まぁ。知ってるけれども」

ふむ、と男は腕組みして考えるような様子を見せるが。
続く言葉に、男は苦笑し、口元を押さえる。

「ははは、三等客室はそうとうキツいもんなぁ。
 まぁ、何箇所か知ってるから、案内するよ。
 ちなみに、予算は如何ほど?」

うんうん、と頷きつつ、相手に数歩近づき。
軽くかがみこんで、相手と目線の高さ合わせれば。

「オレぁ冒険者のセインだ。
 とりあえずよろしくな? お嬢ちゃん」

そう自己紹介すると、男はすく、と立ち上がり。
相手がついて来れる速度で、記憶している安宿へとゆっくりと移動を開始する。

フェリーチェ > 男の笑顔の引き攣り具合に、失言したかもという不安で少女の眉が微かに震える。
けれど、相槌を打ちながら待てば目線を合わせてくれた優しさに唇がほころび、数回の瞬きで不安は胸の内へと仕舞い込む。
そうして言われてから気付いたとばかりにリュックの端のミニポケットを漁りだす。

「私はフェリーチェです。行商をやっていて、宝石とか、あと貴金属をいくらかご提供できます」

自己紹介の間も片手で抜き取った小袋から手の感触で貨幣の枚数を数え、おおよそ旅の5日分の生活費になりそうな金額を手のひらに広げる。
そこから見えるように数枚の貨幣を袋に戻し、歩きながら努めて精一杯の笑顔で路銀を開示する。

「これだけで5日ほど。もし良いお宿でしたらもう少しだけ色を付けられます」

期待と不安でゴチャゴチャした感情を営業スマイルの裏側に隠し、まだ見ぬ道を付いていく。

セイン=ディバン > 男自身、自分が人受けするタイプではない、と思ってはいる。
だが、相手がほほ笑み、自己紹介しながら何かを漁るのを見れば。
少なくとも、警戒は解けたか、と。男、内心安堵。

「フェリーチェちゃんな。……へぇ。その若い身空で行商人とは」

相手の名前を記憶しつつ、男は驚きを隠さない。
行商人にしても、ずいぶんと若いな。
そう思いつつ、相手の差し出した金額を見て、男はうん、と頷く。

「了解。ま、そうだなぁ……。
 5日間。朝と夜に軽い食事つき。
 それで、その金額でちょっとお釣りが帰ってくる。
 そんな宿に心当たりがある」

ククッ、と笑いつつ。男はゆっくりと道を歩いていく。
そうして、たどり着いた宿は、細い路地にある宿であった。
正直、概観は……ボロい、と言っていいかもしれない。
店先の看板もくたびれているが『肥え肥え海豚亭』という文字はかろうじて見える。

「すまん、この子に部屋を。
 宿泊日数5日で」

男はずんずん宿に入ると、受付を済ませてしまう。
するり、と鍵を預かれば、相手に向かって視線向け。
着いてきな、と身振りで伝え、部屋のある二階へと向かっていく。

フェリーチェ > 「いいですね。少しくらい余ってくれれば、ご飯が合わなくても他で食事をと……あっ」

好条件の提示にますます気を良くして、表情は頑張って作っているのに思わず考えが口に出てしまう。
それが若い身空でなんとかやってる行商人の、というか少女自身の限界。
決して交渉が上手いわけでもなく、今も溢れてしまった本音を宿の人に聞かれては良くないと思い返し、慌てて口を噤んだ。

大人しく宿の従業員に会釈すると、男が交渉している間にもと来た道を見返して道順を記憶し、思いの外早かったやり取りに興味深げな表情を後ろで浮かべる。

「あの、手慣れてらっしゃるんですね。セインさんは斡旋のご商売をされてるんですか?」

この地に知り合いも居ない今、顔が広い人なら覚えておいて損はない。
そして、覚えてもらっておくのも損はないと思って……部屋にはすぐ踏み込まず、室内を覗き込む仕草にまぎれて男の顔も下から覗き込み、そんな問いかけをしてみる。
歩き続けて方に食い込むボストンバッグを軽く揺すり、商売人がこの宿に着たと頭の片隅にでも残すため、満面の笑顔を作ってから。

セイン=ディバン > 「ははははは、そうだな。
 ダイラスのメシも、特色があって美味いんだよな」

相手の漏らした一言に、男は声を上げて笑う。
男としては、そういううっかりは。
可愛らしいと思うので、別段、指摘などしたりはしない。

「うん? いや、まぁ。冒険者だから宿はいろいろな所で取り慣れてる。
 あとは、仕事によっちゃあ、斡旋とかもやらなくないけど」

それこそ、依頼があればなんでもやるのが冒険者だからな、と。
そう言いつつ、男は部屋の鍵を開ける。
男が部屋に入れば、相手も室内が見えるだろう。
部屋は、広さは一般的な宿屋の広さと同格。
清掃も行き届いており、不潔さは無い。
ベッドは小さいものの、一人で寝るならゆったりとしたサイズ感。
はっきりいって、値段に見合わぬ、『イイ部屋』なのだが……。
男が窓を開けると、安さの理由の一つが分かるだろう。

「……これに文句が無いなら。
 格安で泊まれるぜ?」

……部屋の窓を開けると、すぐ目の前に、壁があった。
正確には、となりの建物の壁、だ。
そう、この宿。細い路地にあるため。
『窓からの風景』が絶望的に楽しめないのである。
男は、相手に向かい、ニヘラ、と笑ってみせる。
この部屋でも問題ないかな? という意味だ。

フェリーチェ > うんうんと頷いて、仕事の種類が多いなら顔の広さもまた期待通りなのだろうと満足げ。
それから改めて部屋に入りつつ、考えるように一つ一つ床の状況やベッドなどに指をさす。
清潔で広さも十分……特に目立って不満を持つところもなく、大した感慨を表さぬまま案内に従って付いていく。
そこでオチとしての風景の問題点を指摘してくれたのだろうけれど、少女の表情は今まで通りで驚きもない。

「えぇ、お部屋には何も不満はありませんでした。もちろん風景も」

しっかりと、それが皮肉でないと分からせるように一際大きく頷いて、さっきの交渉の際に見た金額を小袋から選り分ける。
浮いた分も指に挟んで取り出し、金勘定を日常にしているにしてはインクで汚れた跡の無い真っ白い手で差し出す。

「じゃあお部屋をお借りする前にこれ、案内してもらったチップです。
 私の国では冒険者はそんなことしてないから、相場は分かりませんけど……た、足りますか?」

先に抜いていた分だけ儲けは多いので、少女にとっては少し高めに見積もったつもり。
けれど経験不足故か、手を伸ばしてから十分か否か不安になったようで、やや押さえた声で尋ねてしまう。

セイン=ディバン > 安い部屋には、安いなりの理由がある……。
例えば、ダイラスのイイ宿であれば。
部屋からの眺めは見事なオーシャンビューだったりするのだが。
この部屋ではそんなものは望めない。

「そうか。それだったら良かった。
 朝飯と夜飯も、わりかし美味しいんだぜ、この宿」

だが、そんな宿にも不満は無い、という相手に。
男は、おどろきこそすれ、確認や念押しなどはしなかった。
相手が、いい、と言っているのだから。
ヘタなことをたずねるべきではない、と思っているのだ。

「……ん。いや、申し訳ないんだが。
 それは、受け取れない。ひっこめてくれ」

そこで、相手がチップ、という名目で金を払おうとすれば。
男は真剣な表情になり、それを固辞する姿勢を見せる。

「そもそも、オレは依頼を受けてキミを宿に案内したわけじゃない。
 あくまでも、お願い、に応えて連れてきただけだ。
 それに、これを仕事だとするなら。こんなチョロい仕事で報酬もらっちゃあ。
 オレの名が廃るってもんでね」

なので、悪いが受け取れない、という男。
この男、一応はそれなりに名の通った冒険者。
宿への案内程度で金を貰っては、色々といらない噂なども立ちかねない、のである。

フェリーチェ > 男がこの見晴らしの悪い宿へ案内してくれたことも、それで満足している理由を問われないことも、少女にとっては有り難い。
よもや……年端も行かぬ少女が自分を慰める声が漏れないことを重要な環境条件にしているなど暴露できないし、またいい具合の言い訳も用意していなかったのだから。
男の気遣いで知らず救われた少女は、しかし受け取れないという反応で遅れて驚かされた。
慌てて差し出した手を引っ込め、無かったコトにするかのように握りしめる。

「お仕事に誇りをもっているんですね……こんな子供がどれだけ払ったかなんて、誰も一々文句は言わないでしょうに。
 それなら商売のときは勉強させていただきますから、お買いも……奥様にご贔屓にさせて貰えたらと……」

相手の立場は決して軽いものでないと、名が通った者であると、そのことは理解してこの出会いに内心感謝しながら微笑みを浮かべる。
営業スマイルとは違った柔らかく緩んだ顔で、しかし緩んだのは表情筋だけではなかった。
口に出してから、相手が宝飾品類で飾り立てるタイプでないことに気づくと、少し濁しながらお礼はいずれしたいということだけは伝える。

セイン=ディバン > 男は、人生経験が……悲しいかな、豊富である。
若い身空の行商人少女の、これまでの遍歴だとか。
安い宿を求める理由だとか。
そういったものを、男の脳内は、勝手に想像してしまう。
そして、その上で。何も言わないことを決めたのである。
その後ろに、ちょっとトンデモな理由がある、とは。
まったく想像していない。

「別に、そうでもないんだが。
 ……少なくとも、子供から金をたかる、ってのがキライなのと。
 キミがこれからこの国で何をするかは知らないけど。
 まぁ、金は大事にしておきなさい、っていう気持ちがあるだけで」

掌を、実に軽薄な内面同様、ひらひら、と振って言う男。
基本この男は。女性に甘い。子供にも甘い。
詰まるところ、少女にはとても甘い。
なので、今回は固辞するに至ったのだが。
相手の次の一言に、男の表情が固まる。
まるで、凍りついたかのように。

「……あ~……うん。そ~ね……。
 うんうん。それじゃあ、そうしてもらえると助かるわぁ……。
 え、っと。ちなみに。なんで、奥様、とか。
 そういう単語が?」

あっ、と言う間に顔色が悪くなる男。
乾いた笑い。ハハハハハハハハ、などと言いつつ。
汗をだらだらとながしていたりする。

フェリーチェ > 「お金が、大事なのは、知ってます」

呟くような小さな声で、しかし噛み締めるように言葉を返す。
と、教えを説いてくれたような大人が、急に狼狽えだす理由が分からずに、キョトンと丸くした目を向ける。
眉根がピクピクと動いてまた若干の不安がぶり返してきて、恐る恐るといった様子で唇を巻き込んで湿す。
触れてはならぬ部分に介入してしまったことだけは分かったので、慎重に、良い印象だけを抽出するように。

「あの、立派なお仕事されてる方は、よい伴侶が引き寄せられると聞いてます。
 私はその、セインさんもそうじゃないかと思ったので……ま、まだご結婚前とか?
 お祝いのときにもいいですよ、セインさんみたいな素敵な方が贈られたら絶対喜ばれます。
 そういう……あ、あの、良い人、いない……です?」

男の緊張が伝染したかの如く、貨幣を入れた小袋と一緒にリュックの紐をギュッと強く握りしめる。
周囲は政略結婚ばかりだった少女は、本人の一存でどうこうという男女の問題には疎く、その機微を読み取るも何も無かったかったようで……。