2020/08/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にローズマリーさんが現れました。
ローズマリー > 倉庫街に程近く、暗がりに沈む桟橋の袂。
尼僧服の裾を翻し、風に攫われそうになるヴェールを右手で軽く押さえつつ、
左手に絡めていたロザリオ―――で、あったもの、を、すっと掲げてみる。
もう何度新調したか知れない、真新しい銀色の光を宿していたソレは、
今やすっかり変色し、ボロボロに朽ち果てて、もとの形すら判別出来ない。
つまらなそうに暫し眺めてから、するり、指を解いて――――

ぽちゃ………ん。

闇色の海の中へ、呆気無く飲み込まれてゆくソレが描いた小さな波紋を、
然程興味も無さそうに見下ろしながら。

「……良い加減、父様も諦めたら宜しいのに。
 幾つ作っても一緒だわ、こんなもの……私にもあの子にも、
 何の役にも立ちゃしない」

溜め息交じりの低い呟きは、潮風に紛れて掻き消える。
歓楽街の賑わいは遠く、倉庫街も静まり返っている様子。
荒くれ者たちが似合いの港町に佇む、明らかな異分子に気づく者は、果たして。

ローズマリー > 「――――に、しても」

指先にこびりついていた残滓を払い落とし、ゆっくりと首を巡らせ振り返る。
歩いてきた方向、歓楽街方面を細めた眼差しで見遣り、ふぅ、と息を吐いて。

「……ダイラス、だなんてね。
 今夜中に帰るのは、流石に無理そう、……何処かに、宿を取らないと」

とは言え、懐に持ち合わせの無い身。
ヤルダバオート辺りならば、適当な修道院を頼る手もあるが―――、

「………まあ、何とかなるでしょ」

あの子の振りをして、人の良さそうな男を騙す手もある。
あるいは本当に、あの子に任せてしまっても構わない。
―――――適当にも程がある結論を、真顔の下で叩き出して。
尼僧姿の女は一人、再び、賑わう不夜城を目指し―――――。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からローズマリーさんが去りました。