2020/04/08 のログ
シュバルト > ――…ほらねー?ほらね?悪い方向に予想通りである。
ただ幸運なのは投石で身体を砕かれることは事がなかったが少しだけ心にザクリと言葉という刃は突き刺さる。

それならばならば気を取り直して……どうするか。

「ンッ、ンー……失礼。スミさんですか、自分はシュバルト。魔導調律を生業としている魔導調律師です。で、その、近眼ではないのですよえぇ決して近眼では。あとナンパも違うんです、勘違いのお詫びに宜しければお酒でも?と誘いたいのを我慢するくらいに男ではありますが、ナンパでもなく、いえ、スミさんに興味がない、わけでもないのですが、えぇ、えぇ!」

言葉が自分でも判るくらいに矢継ぎ早。
ごまかしにごまかしを重ねようとして見事言葉は空回り、お探しのお嬢さんはアナタのお膝の上ですといいたかったのが全て自分で台無しにして、勝手に溜息をついて1人勝手に肩を落とす、猫を撫でたかったが、仕方ない。

でも諦めきれない。
基本動物が好きである。
お酒と女と美味しい食事と仕事の次くらいに好きである。

だから矢継ぎ早の言葉の後に営業スマイルなる笑顔を浮べて一言付け加える事にした。

もちろん見せ付けるように猫を撫でるスミなる学者さんに猫を撫でていいか許可をえるための一言だ。

「……ンッ、で、そのもし良ければ初対面でこう言うのもおかしいかもしれませんが、スミさん、頭を撫でてもいいですか?」

その言葉が再び勘違いを招きそうになると気がついたのは、此度も言葉を吐き終えてからであった。

これでは本格的にナンパ師である。

スミ > 「はぁ、魔道調律、ですか!」

眼鏡の奥で緑色がぱちぱちと瞬く。
その度に好奇心の光が宿って、男の頭のてっぺんから爪先まで見てから、にまーと笑って返した。
一見面白そうな靄は見えない。恐らく彼の仕事中になら面白いものが見れそうだ……

「はは、お探しの方はどうやら意中の方でしたか?
 それはまあこちらこそ申し訳ないことを。
 ははははまあ無理なさらずとも大丈夫ですよ!折角意中の方を見つけたと思ったのに空振りだったのですから、私などの相手をしてごまかさず、本日はぜひともその寂しさを噛みしめて、強く生きて行って頂きたい」

最後言いながら、膝の上の猫の手を取って『がんばれー』とばかりに振って見せる。
流石に猫も抗議の声を上げたが、一応逃げずにいる。
というよりも
ちょっと男のほうに胡乱な目を向けているのは寧ろ、猫の方だったりして……

「―――はあ?
 頭ですか。
 ……そんなに似ているんですか?
 ううん、私その方と会ったらもしかして死んじゃったりしますかねえ……」

至極まっとうに(?)勘違いする女。
しかし流石に今回は悩み。猫をなでなで暫し悩みぬいて。

「……良いでしょう。
 その代わり、慎重にやってくださいね?意外と絡みやすいんです」

男が訂正の言葉を発しないのなら、どうぞ、とばかりに
その赤いふわふわ巻き毛の頭を差し出すだろう。

シュバルト > お?自分の仕事に興味有り?
なら語ってしまう?説明してしまう?と一瞬だけ薄灰色の瞳に説明したがりな輝きが宿りはするが、女の続いた言葉に自分がそうしてしまったのだが、こう、色々間違って絡み合って複雑にしてしまって……言葉が間違って伝わっている感がヒシヒシと。

意中の方?
いないいない、昔は居たかもしれないが今はいない。
なので、違う、違うし、仮に居るとしたら今アナタに抱かれている彼女?です、雄か雌かはこの際脇に避けておく。

う、うーん……どう挽回したものか。
表情は悩んでいる素振りを見せるとより話が複雑になりそうで、一先ず流せるところは流して、何とか軌道修正をしようとしたところで、女性の行動にえっ、って思うわけで。

何故頭を差し出しているのか。
一瞬だけ頭の上に?マークが飛び交うのだが、撫でたいのは猫なのであるが、女の言葉から矢張り勘違い、似ているとか、死んでしまうとか、言葉の流れからしてドッペルゲンガーの話?ああ、どうするべきか、どうしなきゃ駄目なのか。

表情上は笑顔である。
多少不自然かもしれない笑顔を浮べて、猫の眼差しを受け止めながら、少し距離を詰めて女の方に歩み寄った後に、その自分よりもふわふわな巻き毛な彼女の髪に手を伸ばすと、そっと指を絡めるように、でも髪同士が絡み合い、引っ張る事がないように頭を撫でるのだった。

動物よりも女の方が好きだから。
悲しいけど男の性である。
善意につけ込みたくないけども、興味のある異性を前にして尻込みする性格でもなく。

「……ドッペルゲンガーではないかな。死なないとは思うけど、……こう、癖になりそうな、よき髪をされて……。ん、愛しくなる素敵な髪だなって。」

するりと、さらりと、掌で髪を撫でながら女の頭をゆるゆる撫でながら、言葉と一緒に浮べる表情は数秒前の不自然なものではなく、多少鼻の下を伸ばしたものであった。

スミ > 意を決して頭を差し出していると、一歩、男が近づく気配。
猫がほんの少しじたばたするが、手が伸びていく先が女の頭だと解ると様子見を決め込んだようで、うるる、と喉を鳴らしながらまた女の膝の上で丸くなる。

なんとなくおっかなびっくり手が触れてくる。
女の髪はふわふわして柔らかく細いが故に結構絡みやすいのだが、彼の手はその直前でつるりと指の間に透かしてしまう様で。
ついでにいうと残念ながら、そのふわふわから漂う香りは土と草に近い。

「ははあ、中々に器用な手を持っていらっしゃる!あ、そういえばその様なご職業でしたね。
 ははは、そんなに顔は似ておりませんか。成るほど、お目汚しでしたかな。
 我ながら中々特徴的な頭髪でしてねえ。覚醒遺伝らしくて、家族の中でもこの頭は私くらいなのですよ」

喋り終わると唐突にぐわ!と身を起こす。
その際に鼻の下を伸ばした男の顔を発見するが

「………随分とその方にご執心なんですなあ…
 良いでしょう!私も心掛けておきますよ。何という方です?
 いえいえお礼なんていいですよ!
 そうですね、そのうち貴方の施術中の姿などを眺めさせていただけるのであれば!」

みるみる気の毒そうに眉をひそめた後、どん、と胸を叩き満面の笑みで『そっくりさん(顔以外)』捜索を請け負う。
ついでに自分の都合の良いように報酬をねだっておいたりして。

シュバルト > ぐわっと身体を起こす相手に酷くビックリするのは仕方ない、と思う。

ふわふわと、まるで綿菓子とは違うけども個人的に好きな触り心地の女の髪に頭に触れていく度に嵌り始めたところで、行き成りである。

猫の撫で心地も悪くはない、けども女の頭の撫で心地も決して負けず劣らずで、へらと鼻の下どころかいろいろな意味で興味を持ち始めた瞬間の出来事、っと、と小さく声を漏らした後に軽く咳払いをして、取り繕う。

「そう、職業柄繊細なものに触れなれてるから、スミさんの髪を傷つけずに頭を撫でることなど造作も……。何特徴的というよりチャームポイントでしょ、自分は好きですよー?」

お眼汚しなんてとんでもない!まで言うと変に世辞を並べたように取られてしまうだろうなので、あえて其処は言葉にせず、軽くゆるい笑みを浮べ残したところで、此処でネタばらし……は出来そうも無かった。

一先ず手持ち無沙汰な手は空中をにぎにぎと動くはめとなりながら、彼女の何とも何ともな表情と、ちょっと叩いた胸元にちらと好奇の視線を向けながら……折角の流れなのでのることにする、存在しない意中の人の話に。

一度此処で深呼吸。
軽く自分の胸元に手を添えて大きく息を吸ってから、静かに吐いて……。

「……名前はわからないんだなー。時々見かける、うん、時々見かけるだけなんだ。だから、そうだなー眼鏡をかけていて、白い肌にそばかすが少し、緑の瞳が鮮やかで愛らしくて、赤毛で天然のくるりとした髪で……唇が特に魅力的かな?赤い果実のような真っ赤な唇。」

と、居ないので一先ず視線の先にいる女の容姿を当てはめて、特にそそられるところを満面に浮べる笑みの中で特に魅力的な唇を間接的に褒めてから、一度切った言葉を続けて。

「……仕事の姿なら何時でも?寧ろ施術ならスミさんにしても?折角なので体験して欲しいし、今からでも、後日でもスミさんの時間のある時になら。百聞は一見にしかず、でも一見よりも実体験に勝るものは無い、と思わない?」

と言葉のしめは何処となく意地悪く、どこか挑戦的な笑みをにたーっと浮べて、彼女の明るい緑色の瞳を覗きこんでみる。

スミ > 取り繕いながら男が言う言葉に、はははどうも恐縮です、なんて後頭部をかきながらお世辞に対する定型文を返して。
ちなみに女が身動きするたびそこそこ揺れるくらいの胸元ではあるが、薄汚れたツナギがかなり形状を不明にしている。

そのままにこにこと笑いながらふむふむと頷き『そっくりさん(顔以外)』の特徴を聞いているが、段々と表情が曇ってきては自分を落ち着かせるように猫の背を撫でる。
猫の方は脅威が去ったと感じているのか、時折ぱたん、と尾を揺らし目を閉じて、すっかり居眠りの姿勢だ。

「なんとなんと…目の色も肌の色もいっしょのようですねえ…
 訪ねて回ったら、私のことを指さされそうな。
 ……参りましたが、何とかしましょう!」

またどん、と胸を叩く。布の下でちょっとぽよんと揺れる。
勝算はちっともないけれども、一生懸命やっていれば何とか見つかる、はず。
その『何とか』の方法を考え込み始めようとしたとき、彼は意外にも施術の姿を気軽に見せてくれるようで……またはた、と眼鏡の奥から視線(星つき)が彼の方へと。

「本当ですか!?
 いやあ有難い!まあそうですね、確かに実体験も必要でしょう。
 ああでもどちらかと言うと他の方の施術の様子を眺めてはみたいのですが。まあでも皆さん薄着で施術を受けられるのでしょうし、まあ見てもいいよという方がいらしたら、ですが」

 彼の挑戦的な笑みに対してにこーと裏の全くない笑みを向けて、ぜひ。などと言葉を返すだろう
 が
 すっと顔が曇って

「ああでも申し訳ない、後日でもいいですかな?
 じつは今貨物を待ってまして………まあ、今日は来ないかもしれないんですけれども……」

はあーと溜息をついて、今や藍色に染まろうとしている水平線を眺める。
手はずうっと猫の背を撫でている。その温もりが愛おしいと思えるくらいには、空気も少し冷え始めていて……

シュバルト > 薄汚れたツナギ、労働者が好んで着ている華やかさのない服装の女であるが、その布を引ん剥いた時に出てくる柔らかな肢体を想像させるぽよりと小さく弾んだお胸に視線が吸い寄せられるけど、これも男の性であるのだ。

猫の背を撫でる姿も中々に……愛らしいではないかな。
それを言葉にするとまた世辞に取られるので飲み込んでおく事にするのであった。

「ははは、怖ろしい偶然もあるものですなー。と、それでは頼りにしておりますよスミさん。」

様々に抱える欲望を飲み込みつつ、すっかりと緩んだへらりとした笑みを浮べて、特に好奇心に輝く星が見えそうな眼鏡のレンズ越しの瞳を受け止めて、またキラリと似たような説明したがりが見せる疼きとした心に輝く灰色の瞳で見つめ返す、が……曇った表情にはほんの僅か首をかしげる。

で、女の言葉に、ああ、と一度頷く。
女が此処で猫を撫でて座っている理由に納得した。

「……後日でも勿論是非に喜んで、まあスミさんの危惧どおり見るのは難しいと思います。なのでもう是非実体験で、勿論報酬前払いって考えてますんでロハで。その際は是非自分の部屋に……だと、まあ、あまり宜しくない噂など立ちそうなので、スミさんの指定した場所でも、ベッドさえあれば施術は幾らでも出来ますし。……っと、そうだ。」

僅かにかしげている首を戻しながら、肩からかけている革鞄に手を入れると、中から布に包まれた掌サイズの陶器の瓶を取り出して、ハイと差し出す。

触れれば温かな陶器の瓶。
保温の魔力が付与されていて、中には温かいワインが。
それをスミさんのほうに差し出して、「飲むなり懐にいれるなりどうぞ、温かいですよ?」と言葉を付け加える。

少し冷え始めた空気。
自分は慣れた物である、が女はそうではないだろうと、精一杯の下心つきの気遣いである。

お代は施術の際にたっぷりと堪能させていただくので、引き換えに何か、何て言うつもりは全く無い。

スミ > 頼りにしている、と言われると得たりとばかりに頷いて、またにまーと笑い返す。
しかし施術が只、と言われるとそれはいくら何でも、とと赤い唇を開きかけて……また閉じる。
正直、懐は温かいほうではない。いや、汚れた形はそのせいではないのだけれども。

「いやはやあの、只というのは……
 正直大変、有難い。面目ない
 何かのご縁ですからね、きっとその方を見つけて見せますとも!」

ぺこ、と頭を下げて、また上げた時には屈託のない笑顔に戻っている。根拠ない自信ではあるはずだが、本当に彼の言う条件に当てはまる絶妙な容姿の女を見つけてくるかも……というのをうっすらと予感させる執念が、瞳の奥に見つかってしまうかもしれない。

遠い視線を水平線に投げていると、彼からふと目の前に陶器の入れ物が。
眼鏡越しにうっすらと靄が買っているそれは、受け取ると絶妙に温もりがある。
わあーと緑の目が見開いて、胸の辺りに抱えてにっこりと笑みを向ける。

「ありがとう!やはり温もりというのは良いですな。ただ単に体の緊張が楽になるというのもあるけれど、やはり心も温まります……
 そうだ、代わりと言っては何ですがこの子をどうぞ。」

そういうと陶器を胸元にぐいっと突っ込んで、居眠り猫をぐいっと彼に向けて抱き上げる。
猫――――どうやら雌―――は不機嫌そうに鳴くが、暴れたりはせずにぶらん、と彼に魅惑の身体を晒す。

「とはいってもその子は私のものではないのですが。
 生き物の温かみというのも良いものですよ」

そういって立ち上がって、ほぼ彼に押し付けるようにして猫を抱かせようと。

「さて、私はいい加減諦めて宿へ戻ろうと思います。
 暖かいものをありがとう、シュバルトさん
 施術は次の機会にぜひ。
 私の宿は―――――」

思い切り悪そうに視線を水平線にやるが、相変わらず船影はひとつも見えない。
少しだけ肩を落としてから、気を取り直した笑顔で彼を振り返ってぺこりとお辞儀を一つ。
それから、この街での自分の宿を伝えるだろう。来る日取りと時間が解れば、居るようにするから、と。

シュバルト > 陶器の瓶の代わりが猫、当初の目的は果たした上に良い縁に恵まれそうだと表情は曇ることなし。

しかしながら一抹の不安もまた胸を過ぎる。
スミと名乗った学者さん、彼女のヤル気?執念?が見える明るい緑色の瞳に否応にも嫌な予感が……。

「憶えたよ。寒さが厳しくなってきたし自分も帰るけど、たぶん行く道は別方向だと思うし、気をつけて帰ってな?」

普段なら送ろうか?と口説き文句の一つもつけるけども。
彼女とは一度此処でお別れを、そして再びの出会いと施術の際に楽しめるであろう、無骨なつなぎの奥に眠る柔らかな肢体の予感に鼻の下を伸ばしながら見送るだろう。

そして、見送り終えた後に猫に頬擦り一つした後に、自分も仮の店舗も兼ねている宿のほうへと歩き出すのだ。

彼女のお辞儀に、手を振り替えし、自分もまた宿のほうへ歩く足取りは複雑。
なんせ自分の方の本命である船も結局見当たらず、詐欺られた可能性もあってか、足取り重く……であった。

猫が重たかったのかもしれないが。である。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からシュバルトさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からスミさんが去りました。