2020/03/14 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にホアジャオさんが現れました。
ホアジャオ > 日暮れも近い船着き場。
今日は天気が良かったものだから、昼間の船着き場の賑わいは大したものだった。
港へと降り立つ人に行く人、それを目当てのお土産や軽食の出店、更にそれを目当てのハイブラゼールの住人まで。
つい先までの冬の間出るのを渋っていた人々があふれ出たようで、春の訪れ近い日差しの中特有の光景だ。

しかしそれも、陽が傾いて日暮れ近くなって、冷たい海風が吹くようになれば三々五々。
船と港とを行き交う人が少なくなって、屋台も店仕舞いの様相をするようになると、船着き場の彩がひとつ、またひとつと無くなって
人出も町の方へと移ってしまったのか、賑わいはまるでその風にでも吹き散らされてしまったよう。

「―――――…未如愿(はずれ)……」

その船着き場の端の方、主に貨物船が着くあたりある木樽が積み重なっている場所で、ひとつ木樽の上に腰かけ、足をぶらぶらさせている女がひとり。
どこから捕まえて来たのか迷惑顔の黒猫を抱きかかえて、行き交う人をその細い目で見つめては、かるーく溜息をついている。

たまにだけど、闘技場の選手とか、通りかからないかなーと思ってここに顔を出してみている。目的は勿論、喧嘩を吹っかけてやるためだ。
所がそういう輩は大体陸路なのか、とんとそんな相手に出くわさない。

(――――抑(それとも)…)

自分が見逃している、か。

「…のーアル鷹は爪を折る、だッけ……」

ぼそり呟きながら、猫を更に抱えるように身を寄せる。
ほんの少し、猫の方から抗議の唸り声。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にイエナ・イズバックさんが現れました。
イエナ・イズバック > 「おい! お前! その猫が嫌がっているじゃないか!」

突然、彼女の背後から声をかけられた。

「放してやれ!」

夕暮れの港には一人の長身の女性が現れていた。
暮れなずむ風景に立つ姿は豊満かつ筋肉質な半裸の蛮族風ビキニアーマーで身を鎧うている。
その背に担がれたグランドシャムシールの長い鞘。
彼女はミレー族だった。しかもハイエナ系とは珍しい。
白茶色の体毛に覆われたイエナは、三つ編みの彼女が嫌がる黒猫を邪険に扱っていると思っている様だ。
イエナは樽の傍まで大股で近寄ってきた。

ホアジャオ > 背後からの声に、姿勢はそのまま細い目が軽く見開かれる。
ゆっくり振り返ると、目に映るのはずかずかと近寄ってくる、毛皮の特徴が印象的なミレーの女だった。
ぱちぱちと瞬きしながら彼女が近くで立ち止まるまで見守って、それからまた、惜しげもなくさらされた鍛えられた体躯の上から下まで眺めて。

「―――良いンだよ。このコはさっき肉まんで買収されたンだから、ちょッとくらい迷惑かけたって。あンま暴れたりもしないもンね」

女がその姿勢のまま猫に頬ずりしてやると、確かに迷惑そうな顔をするがばたばたと暴れたりはしない。寧ろ女の方が猫の髭でも当たったのか「刺痛(イテテ)」と少し顔を顰める始末。

「まァ、放してあげてもいーケド…
 そンかわし、ねェさん、アタシとちょいと喧嘩しない?あったまるよ!」

猫から顔を離し、樽から下げた両足をぶらぶら。
ちょっと見当違いな提案をしつつ、期待のこもった黒い瞳が、獣の特徴色濃い彼女を見上げる。

イエナ・イズバック > 「フムン?」

イエナは彼女の返答に意外そうな表情をした。
ともかく猫がイジメられているわけではない事は納得する。
しかし。

「喧嘩、だと」

彼女も腕に憶えあり、だ。
その提案に答える前に背の武器を鞘に納めたまま、身から離し、横の大きな木箱の上に置く。

「面白いじゃないか。売られたものが無料ならとりあえずもらっておくのがあたい流でね」

武器を外して軽くなった身で自己流の武闘の構えをとる。
先手必勝。
イエナはためらいなく豪快な左ストレートを彼女の顔に向けて打ちはなった。