2019/08/24 のログ
ホアジャオ > とっぷりと日が暮れた刻限。
波も穏やかな、ダイラスの船着き場。
昼間はそれこそ、船乗りに貨物を運ぶ人足、発つ旅客に来る旅客、それを目当てに商売する者などなどで人で溢れ返って賑やかな此処も、陽が沈んでしまえば三々五々。
最終便も発った今となっては、船着き場を根城にしている猫やら海鳥やらが、時折ちらりと横切る程度だ。

その船着き場の片隅、貨物用の空木箱が積まれた一角。
積み上がったてっぺんに、脚をぶらぶらさせている女がひとり。
ゆるやかな海風に吹かれて三つ編みを揺らされながら、細い目でぼんやりと海の上に浮かぶ月を眺めている。
なーんとなく寝付けなくて、宿から夜の散歩に出て、こうしてここでぼんやりして、どれくらい経ったろう?
夏とはいえ夜の海風はひやりとして、むき出しの腕や頬は少し、冷たいように感じる……

ホアジャオ > ぶなぁ、と少し野太いような鳴き声が足元の方から。
ぼけっと、ちらつく星と月とそれを照り返す波間を眺めていた眼が、はたと瞬く。
それからかくんと首を落として、視線は足元の更に下の方へと落ちる。

「哦……好久(おやま、ひさしぶり)」

赤い唇がにまあと笑うと、ぶんと脚を一振りした勢いで木箱の山から下へ。
すとんと軽い着地音を響かせるとそのまま屈み込んで、鳴き声の主、少し太った白猫の、黄色い瞳と見つめ合った。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にアスさんが現れました。
アス > 船着き場に波が打ち付けられる音が静かに聞こえる中、明かりのない船着き場を歩く人影が一つ。
時折真っ黒に見える海に視線をやりつつ、ゆっくりと、辺りを探るように歩いている。

「もぅ……どこなのここ……」

深夜の迷子はたまに聞こえる波以外の音にいちいちビクビクしながら宛もなくさまよう。
そして猫の鳴き声と、それに続いて響いた着地音。少しだけ飛び上がりつつ、そちらの方に声をかける。

「……誰、ですか?」

ホアジャオ > 猫と見つめ合って、『コイツまた太ったなァ』なんてうっすら思っていたところ。
人声が聞こえて、ぴょこんと三つ編みを撥ねさせながら上体をそちらへ捻った。

「――…誰、てェか。
 夜の散歩中のモンだケド?」

声はまだ幼げなものだった。迷子かしらと思いながら、猫を抱えつつ立ち上がり、頼りない月明りの中細い目を更に眇めてそちらを伺う。
相手からは、猫のきらりと輝く瞳が向けられているのが解るだろう。

「アンタは?迷子かなンか?」

駆ける言葉は剣呑な音よりも、ただ単純に不思議がる声音だ。

アス > 少し、じゃなく結構強めの口調の相手に気圧されつつ、ワンテンポ遅れて口を開く。

「えっと……多分そう、です。
港町で路地を歩いていたら急に誰かに襲われて……それで気づいたら木箱の中で何が何だか……」

覚えている範囲で状況を説明しながら、お互いが見える距離へと近づいていく。
やがて、相手にも彼の身体的特徴の獣耳が見えるだろう。それを隠す素振りすら見せずに、無警戒に距離を詰める。

ホアジャオ > 「――…ヘエー…良く、箱から出てこれたね?」

うっすらとした月明りの中、小柄な相手の体躯と、その特徴的な獣の耳までが見えれば細い目はすこーし、更に細くなる。
抱いた猫を、よいしょと抱えなおして。

「大方、人さらいかなンかかねえ?
 箱詰めされるだけで無事で良かったね。明日ンなってたら出荷されてたんだろケド」

言うのに続けてけらっと笑うと。少し首を傾げて相手を見遣る。

「ここはダイラスの港だよ。
 アタシは『ホアジャオ』てえの。普段は王都でアルバイトしてンだケド、ちょいと来てるとこ」

アンタは?と反対に首を傾げる。
猫を持つ手が、段々と下がってきてはよいしょと持ち直しながら。

アス > 「まぁ……目が覚めた後拘束は魔法で壊せたので……」

相手の視線には気づかず、少しだけ先刻のことを思い出す。
手錠と鎖で縛られてはいたものの、魔法対策がされてなかったため、杖無しでも光の矢で壊せた。そのまま箱の隅に投げられていた杖とカバンを持ってでてきたところだ。当然の如く財布は見当たらなかったが。

「僕はアスです。
……ダイラス?聞いた事ないです、僕がいた街ではないから……1回もう運ばれちゃったのかな……?」

弱った、と言った感じで悩み始める。金銭を奪われている以上さっさと帰ることも出来ない、どうしようか……

ホアジャオ > 聞いたことが無い、と訊くと細い目は軽く見開かれる。
それから、ちらりとまた彼の耳を見遣って

「嗯(ウーン)…そうかもね。
 しかもダイラスを知らないってェと、アンタの居た所って大分田舎か、この大陸じゃァないのかも」

そう言って、一歩彼の方に近寄って。
猫を抱えていた片手を外すと、おもむろに毛皮の耳に触れようと。

「こンな耳も見たの、アタシ初めてだし」

本当は自分もシェンヤンの田舎育ちで見識が広い訳では全くない癖に、耳に触れる言い訳のようにそんな事を口にする。
逃げるか、嫌がらなければ
毛皮を撫でつけてからふにふにと揉んだりするかもしれない…

アス > 何度も視線を向けられればさすがに気づいたらしく、そんなに珍しいのかと思いつつ自分の耳に何となく手をやる。

「そんな田舎じゃない……むしろ人は多いぐらいでしたし……大陸違うのかな?」

首を傾げて考えていると相手が近づいてくる。
何をするのかと相手の方を見上げて、伸びてきた手には特に何もせずにそのまま撫でられる。

「わっ……珍しいですか?僕の周りだと結構居ますけど……」

言いつつふにふにと揉まれたり、少し気持ちよさそうだ

ホアジャオ > 相手が嫌がるどころか気持ちよさそうにするならば、紅い唇はにまーと笑って調子に乗ってそのままふにふにと感触を味わう。
そのまま、声音だけはしれっと真面目に相談に乗っている風に戻して

「フウン?アタシが知ってる『人が多い所』は、王都かシェンヤンくらいだなァ…町の名前は?
 まァ、『ミレー族』自体もアタシの故郷じゃァ珍しいケドね。
 …アンタ、尻尾は?」

猫を器用に片手でよいしょ、と持ち直して
すこし背伸びをして、相手の肩越しにその存在を確認しようとしたり。

アス > いいように触られつつも、そのまま会話を続ける。全く動じていないと言ったら嘘にはなるが。

「えっと、街の名前はパラトって言うんですけど……ミレー族……?
あっ、尻尾もありますよ、もちろん」

口に出した名前は一切聞いたことがないであろう街だ。後から調べないと分からないことだが、熟練の船乗りも恐らく知らないだろう。
彼自身も聞きなれない単語に頭を悩ませつつ、片手で尻尾を軽く持ち上げる。

ホアジャオ > 「怎么(はあ)?
 ぱとら……知ンないなあ…
 熱い所?寒い所?」

言いながらも、細い目の視線は尻尾の存在を追いかける。
彼が尻尾を持ち上げれば、へえーと細い目の黒い瞳が輝いた。

「ミレー族も知ンないの?…ホント、相当遠い所から来たみたいだね…
 ――…ねえ、尻尾も触っていい?」

流石に尻から生えているのを触るには、一応断りを入れる。
相手が年上のやつだったら遠慮なしなかったろうが、どうやら年下らしいし、なんて。
散々耳をふにふにと弄んだ挙句、その手をひらっと彼の持ち上げる尻尾の方へ。

アス > 「え、暑くも寒くもなく……?普通だと思いますよ?」

ここの人が知らないようなら、一直線で帰るのはもしかしたら難しいかもしれない。ここに連れてきた奴らがいるはずだから帰れはするはずなのだが。

耳は何となく気持ちよさそうに触られていたが、相手の言葉に少し返事が遅れて帰ってくる。

「尻尾も……ですか?まあ、いい……ですけど、その、優しくお願いしますね?」

そう言いながら、くるりと相手に背中を向けて、ふさふさの尻尾を相手の方へと向けた

ホアジャオ > 「…いいの?
 嘿(わあい)!ありがと!」

生真面目を気取っていた顔が、ぱっと笑う。
片手で抱えていた猫が、身じろぎと共に逃げ出す。
それにも構わず、向けられたふさふさの毛に向かって両手をそおっと、近づけて行って

「大丈夫、引っ張ったりしないから……」

根元に近いところを、両手で以て緩く握る。
そのまますうーと先端まで撫でると、笑顔がまた更に深くなって
片手で尻尾を支えながら、もう方でで梳くように毛並みを撫でる。

「呀(わあ)ー…フサフサー…」

もう真面目に相談に乗るフリさえ微塵もない。
そのまま目を輝かせながら、止められなければいつまででも撫でて居そうだ……

アス > 「あ、猫が……ふぁっ」

猫に視線を奪われている間に触れられ、勝手に不意打ち見たくなってしまう。
根元からそのまま先にすぅーっと撫でられ、自分で触れるのとは全く違う慣れてない感覚に思わず声が漏れる。

「あっ…ふ……結構、凄い……」

くすぐったいけれど、それ以上に気持ちいい。止めることも出来ずに撫でられ続ける。
……そのうち、快感を受けてか、前尻尾なんて呼ばれ方もするものが甘く勃ってきた

ホアジャオ > 「ウーン、ホント…フサフサ―
 特別に手入れとか、してンの?」

彼が嫌がっている様ではないので、勝手に良いように解釈して目を糸のように細くしながらフサフサと触り続ける。
前の変化に気付きもせず、熱心といえるくらいに毛並みを梳いて撫でてから、またゆーっくりとした手つきに戻して。

「あー…そだ。
 アスって、魔法使えンでしょ?
 そンなら当面、どっかで用心棒とかで稼げるよ。
 アタシも、今夜くらいなら宿、貸したげるし。
 明日ンなったらアスの故郷を知ってそうな奴とかに、訊いてみたげる」

心配してる家族もいるんだろうし、なんて思いながらも、視線は尻尾の毛並みの上のままだし、撫でる手は止まらない。

アス > 「確かに……魔法は使えます、けど……っふ……
す、すみません、そろそろ……」

ヤバいので止めてください、とまでは言わず、後ろ手でトントンっと相手の撫で続ける手を軽く叩いて合図する。

そして少し呼吸を整えるように深呼吸してからまた口を開く。

「えっと、魔法は確かに使えますけど、使えるの回復魔法とか防御魔法とか、あとは本当に最低限の攻撃魔法ぐらいなので、用心棒ってのはちょっと……」

ホアジャオ > 漸くの静止の仕草に、少しはっとしてから名残惜しそうに手を放す。
最後に指先で、毛並みを弄んでから。

「回復も防御もあれば十分だと思うケドなァ?
 アタシは相手を叩きのめす専門だケド、守る相手が怪我したら何もできないもんね」

毛並みから離れた手が寂しいのか、今度は背後から彼の頭をその耳ごと撫でてやって。

「まァ、何にせよ先立つモノは必要だからね。
 ―――ねえ、お腹、空いてない?
 取り敢えずアタシが取ってる宿に行ったら、ご飯くらいは出してくれるよ。」

唐突に話題を変えたのは、音もなく女の胃が少し抗議を始めたからだ。
平らな腹を撫でながら、どうする?と首を傾げて見せる。

アス > 相手の手が離れれば、少し安心したように相手に向き直る。

「そう……かな?でも、魔法対策少しでもされたら攻撃効かないし、やっぱり1人は無理……だと思います」

向き直ったら今度は頭に手が伸びてきた。頭は特に問題ないらしく、そのまま素直に撫でられる。

「……確かに、もう遅いですし、襲われてからここまでずっとなにも口にしてないので僕もぺこぺこですね……。
それじゃあ、お邪魔させてもらいますね」

ホアジャオ > 止められなければわしわしと、頭を撫でつける手は止まらない。
相手が同意すればにこにこと満足げに笑みを浮かべ、ひとつ、頷いて。
その手を取って、港の出口へと足取りを進め始める。

「一人が無理なら、アタシとコンビでも組む?
 バイト代ははんぶんこ、ってえことで」

相手の歩調など考えていない。
手を引きながら、弾むような足取りで

(機会があれば、また触らせてもらお)

悪だくみするようなにまあと笑う顔は、背後からついて来る彼には見えなかったろう…

アス > 「なるほど……それなら……おわっ!?」

思ったより早い歩幅に引っ張られるように歩き出す。
未知の土地でどうなるか、不安と少しの期待を抱きつつ、転ばないように足をはやめた

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からアスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からホアジャオさんが去りました。