2019/01/13 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
ギュンター・ホーレルヴァッハ > 多くの船が錨を下ろし、様々なモノや人が行き交う港。
その一角に、些か不釣り合いな大型のガレオン船が停泊していた。無数の大砲をその横腹から突き出し、周囲の帆船を威圧する様な風貌の軍船。
その軍船を波止場から眺めつつ、満足げに息を零す。

「1000t以上の大型ガレオン船か。趣味や道楽で買うには値の張る玩具ではあるが…まあ、悪くは無いな」

家門の傘下にある造船会社が建造した大型ガレオン船。
遠方に領地を持つ貴族が購入し、今日引き渡されたばかり。
家門を代表して祝詞を述べて、つい先程まで船内で開かれていた舞踏会に参加していたところであった。

「この船一隻で、飢える領民が何人救える事か。まあ、私が知った事では無いが」

月光を浴びて黒々とした影を落とす軍船を眺めながら、皮肉めいた独り言を零す。
身を切る様な冬の夜風が、己のコートをはためかせていた。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 思えば、久しぶりにまともな貴族らしい仕事をした様な気がする。
大勢の市民や貴族達――ようするに、普通の人々――の前で話す様な潔癖で清廉な仕事をしている訳では無し。
今回は、偶々ダイラスに滞在していた事。当主である父親が王城での会議に出席しており、祝詞を上げられない事が重なり、長男の自分が代理を務めた形であった。

「子供のフリをするというのも、中々大変なものだな…」

年齢・体格としては間違いなく子供であるのだが、同年代との交友が極端に少なかったこともあって、子供らしく愛想を振る舞うというのは少々苦手であった。
取り合えず、笑みを張り付け、市民に手を振り、行儀の良い貴族の坊やを演じてはいたが、果たして上手く出来ただろうか。

「……こんな時は、酒でも飲んで寝てしまうのが一番かなぁ…」

肉体よりも精神的な疲労が高い。
馴染みのホテルにでも部屋を取り、偶には仕事の事を忘れて一人酒でも楽しもうかと思案しながら、ぼんやりと夜空を見上げていた。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 遠くからは、夜分にも関わらず賑わう奴隷市場の盛況が聞こえる。
今夜は、このガレオン船の船員達にも幾分かの金が報奨金として支払われている。酒場や奴隷市場で、一夜の欲望を発散させる為に盛り上がっているのだろう。

「……さて。不相応な買い物をした貴族が、何処まで支払いに耐えられるのか。いつ此方に泣きついてくるのかと思うと、楽しみで仕方がない」

今回、この軍船を購入した貴族は、自身の領地や荘園を担保に入れて分割で船を購入している。
最初のうちは良いだろうが、そのうち支払いが滞るのは目に見えている。というよりも、滞りそうな相手に売りつけたのだから。

そうなれば後は話が早い。
領地も荘園も。その領民も全て借金のカタとして此方が手に入れるまで。或いは、返済させる為に魔族へ無理な戦いを挑ませたり、海賊の真似事等をさせても良い。

何方にせよ、この軍船は貴族を破滅へ導く幽霊船なのだ。その事実に思いを馳せながら、白く凍り付くような吐息を吐き出して僅かに身震いした。