2018/10/21 のログ
■リュシー > ―――――えっ、とぉ……
(月明かりに照らされた路地へ、ただ長く伸びていた影が、
折れ曲がってべたりと、前方の壁に貼りつく。
―――――行き止まり。
拙い歌を止めて、ひとつ、息を吐いてから振り返る。
右も左も、同じような煤けた色の倉庫が並ぶ界隈。
はっきり言って土地勘は皆無に等しく、気ままに歩いてきた己はほぼ迷子である。
しかし、―――――不思議なほど、焦る気持ちは湧いてこない。
もう一度、行き当たった壁のほうへ向き直ると、右手をそっと伸ばして壁に触れる。
壁に―――――というより、そこへ滲む、己自身の影に。
そっと小首を傾げて、瞬きをひとつ、ふたつと。)
■リュシー > (ず―――――
指先が、掌が影のなかに沈む。
瞬く間に手首まで、なんの抵抗もなく―――――あまりにも手ごたえがなくて、
逆にほんの少し、目を瞠ってしまったけれど。)
……意外と、簡単、かも……?
とかいって、……変なところに出たりしたら、笑えないけど……
(そんな呟きを洩らした口端が、ひくりと引き攣る。
とはいえ、もしも失敗してしまったなら、その時はその時だ。
やってみなければわからない、とばかり、影に沈む手に力を籠める。
手首から肘へ、腕の付け根へ―――――影に紛れるように、やがては身体全体が。
沈み込んだ果てに残るのは、無人の路地。
無事に帰りつけたかどうかは、己だけが知ること―――――。)
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からリュシーさんが去りました。