2018/09/09 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にティリアさんが現れました。
ティリア > (密輸業者の逮捕。物品の接収。
だがそれで終わりとは限らない…というのが。軍部全体に於ける見解だ。
何せ検挙よりも後になってから、魔導機兵の一件が起き始めている。
仮に両件が繋がっているとすれば――未だ、実行犯が王国内に潜んでいる可能性。それは存分に有るのだろう。)

――三番から四番の中は。うん――っと …はい。不審物、無し。続いて五番に。

(その上。直接的に高い戦力を持つ者達は、大半が機兵関連で出払っているというから問題だ。
お陰で予備役だの新米だの…己のような者ですら。調査任務に回される。
数多ならんだ煉瓦造りの倉庫群。朝から時間を掛けて巡り続け、手続き上存在しない荷だの、申請と異なる中身だの。
そういう荷が残されていないかを調査、否、精査中。

既に朝から数点。元来なら権益を通さねばならない青果物だの、ご禁制の薬だのは出て来たが。
何れも小規模な、個人を問い詰めればそれで終わってしまい程度の件だった。
少なくともシェンヤンの不穏な動きだの、今件だのとは関係の無い些事ばかり。

――身の危険が無くて良い、とも言えるが。半面、剰りに退屈だ。
少なくとも…魔導機械絡みの証拠発見や、密輸絡みの立件だのには。役立ちそうに思えなかった。
そろそろ疲弊に肩を落としてしまいつつ。倉庫と倉庫の間を歩む。)

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > そうしてとぼとぼと歩くティリア。 昼下がりであるのにどこか鬱々とした湿った倉庫の並び。
ティリアの後ろでは少し遠く、部下や同僚が話す声がする。
…そこで、ティリアは人影を見かけた。 黒い髪、黄色い肌、珍しい形の長衣。 …シェンヤン人の風貌の青年。

辺りを見回し、背を丸め、建物の陰から陰に歩く男。 物陰から曲がり角を覗き、するりと駆ける。
手には布に包まれた長い何か…立ち振る舞い、持ち方から、槍か何かだとティリアにも分かるだろう。
…町から少し離れたと言っても、街中。 ましてやこの情勢で、武器を持ったシェンヤン人が人目を憚るように。

…ティリアには気付いて居ないようだ。 追いかける事は出来そうだが…。

ティリア > ――――。

(ふ、と。微かに息を吐いた。
…その人物が特段怪しかったのかと言われれば…まぁ、とんとんだ。
見掛けた男の立ち振る舞い。それは確かに、一般人のそれではなかった。
素人目に見ても、身を隠す事、気配を殺す事に長けている。
半面――何と言うべきか。例えば丁度今後方で。やましい所など何も無い、だから倉庫を開けるな、と。
言えば言う程自滅めくだろう台詞を喚き立て、同僚達を困らせている船乗りの輩とは違う所作も感じさせた。
少なくとも――野にも卑にも見えなかった、という物か。
少しばかり思案すれば。)

…しょうがないね。行って、みよう――

(後方の揉め事は、もう少し掛かりそうだ。先行せねば見失う可能性が高かった。
…そして。後に後悔するかは、それこそ後にならねば解らないが。
独断が戦功に繋がるかもしれないなどという、功名心が有った事は否定しない。
出来得る限り足音を殺し――幸い己は人よりずっと「夜目が利く」。
一般的な尾行に比べ相応以上の距離を保った侭。男の後を追い掛けだした。)

ティエンファ > 追いかけだすティリアを背に、青年は足音少なに倉庫群を駆ける。
足音を完全に消すことはできないようだが、僅かに身を屈めた姿勢でもぶれもせず、静、動の波は滑らかで。
時折振り返り辺りを伺うが、青年を注視しているティリアの身のこなしは、青年に気配を悟らせなかった。
…?と首を傾げる事があったが、ティリアに気を向けるよりも、前に前にと駆ける方を優先する。 …急ぐ様子。
鋭い目、開けた長衣の胸元を彩る刺青は、堅気ではないことが分かる。 街の物ではなく、流れの者なのだろう。

倉庫群の中でも古い水路が混ざるその道を駆け、不意に、水路のわき道に飛び降りる青年。
そこから更に追えば、薄暗い道を抜け、橋をくぐる。 裏道に入ってしまい、段々とティリアの知らない区域。

…ティリアがそれに気づいた所で、足を止める青年。 そこは水路を引き込んだ古い倉庫。
青年はその扉のそばに身を屈め、中を覗き込み…身を戻し、深呼吸。 武器の布を解けば、それは…身の丈を超す、木の棒。
青年の表情が変わり、険しい物。 まるで、その倉庫を襲撃するような身構え…!

ティリア > (気取られずに済んでいるのは、娘の技量――というより。単純に、距離が遠かったお陰だろう。
その片目を用い、それなり以上の遠方から対象を監視する。
気付けばとうに本日の捜査対象区域を逸脱し。それどころか、使用率の高い表界隈の倉庫群すら離れ。
確実に良からぬ者の方が多いか、或いは打ち棄てられた物が目立つか…そんな地区の裏手迄踏み込んでしまう。

途上、一度だけ。脇へと飛び込まれた際にだけ、見失いかけた。
何せ、所詮視線の延長線上での監視なのだから、物理的に視覚から隠れられてしまうと意味が無い。
大慌てで駆け、追い掛け、更に人の気配すら疎らな路地を潜り抜ければ…)

 ―――― 、 っ……! ま  …待って、未だ、待てって …!

(ふと。先方が足を止めた。古い…古い、それこそ調べるにしろ随分後回しとなるだろう倉庫前。
どうやら得物であったらしい包みを解き、構え、今正に突撃でもせんばかりの様子。
その一歩が踏み出される前にでも、せめて追い付く事が出来そうなら。
背中へ掛ける声と……勢い余って、背後から突っ込むか。抱き付くかの勢い。)

ティエンファ > 足音と話声が倉庫の中から聞こえる…青年は耳をそばだて、気持ちを高めていく。
前情報では5人だが、掴めていない物も含めて10人弱を相手にすることも覚悟している。
無駄な動きは出来ず、相手が突然の闖入者に驚いて動きを止めている間に、どれだけ倒せるかが肝要だ。
…なァに、こんな依頼は少なくない、今日もうまくやるさ。そう心で自分を奮い立たせれば、思い切って中に飛び込…

めなかった!?

「ぬぁっ!?」

真後ろから思いっきり突っ込んで抱き着かれる衝撃。
倒れこそしなかったものの、入り口を通り過ぎ、倉庫の外の瓦礫に転がり込む。
すわ自分が来るのを見越した逆襲か!?と思うが、しかし、腰に抱き着いているのは…

「なんだァ!? どこの坊主だお前…っとォ!」

見るからに身なりの良い、悪党とも思えない綺麗顔のティリアに声をかけ…
途中で、グイっとティリアの身体を抱き寄せ、物陰深くに隠れる。
一瞬遅れて、倉庫から飛び出してくるのは見るからにガラの悪い男二人。
顔や身体に走るよぎり傷が、男達が日の元を歩きにくい職種だと教える。
…男達が何かを話し、当たりを見回す。 ティリアの口を片手で覆ってそれを見る青年。

「…坊主、良い子だから静かにしてろよ …お前を殺したりする訳じゃない とにかく、静かに…」

ティリアの耳元で、落ち着いた青年の声。 ゆっくりと囁く。 見上げれば、男達を鋭い目で見る青年の横顔…。
… … …そうしてるうちに、物陰に居た猫が飛び出して慌てて逃げていく。
それを見送った男達は舌打ちを漏らして倉庫の中に戻る。
青年深く息を吐き、そこでやっと、ティリアの口から手を外したのだ。

ティリア > (文字通りにガブリ寄り。がっつり腰の辺りへ危険なタックル。
今正に飛び出す瞬間だった相手の脚力に、更に飛び込みの勢い迄加わったなら。
バランスの崩壊と慣性の法則が鬩ぎ合い…結果、二人して地に転がった。あれよあれよ、当初の位置と扉を挟んで反対側。
…小尖ったその先にも、視界を塞いでくれる障害物が有ったのが。幸運だったと思い知るのは、数十秒後。)

――誰が …じゃなくて、此処もしかして、危な―― っん、 ん …ー…!?

(顔を上げたその瞬間、口元を塞がれた。
わやくちゃにこんがらかった状態から、抱かれた形で物陰奥に引きずり込まれれば。
…抵抗する素振りを見せず、大人しくする事を選んだのは。
薄暗い倉庫の奥から、扉へ突進してくる影を捉えたから。
外迄飛び出して来た人影は。いかにも、としか言い様の無い悪党のテンプレート。
そんな輩が中に居るという時点で。今直ぐにでも殴り込みたくなるのだが…と、考えてみれば。
恐らく、それを知っていたからこそ。この人物は今正に踏み込もうとしていたのだろう。
…さて。敵の敵は味方だのと、単純な二元論で世界を語る気はないが。
少なくとも、倉庫を見張り…再び中へと消えていった二人組よりは。
どう考えてもコミュニケーションを成立させる事の出来るだろう彼が。再び口を離してくれた所で。)

―――― っ、ぷは。 …邪魔、しちゃったのかな…これって。
失礼――えぇと君って。…傭兵とか、この街の自警団とか。そういう…?

(思い当たるのは、そういう部類。少なくとも先の二人が、市民の代表や平和の使者であるとは、間違っても思えない為に。)

ティエンファ > 「お邪魔しちゃった、じゃ、ねえ!」

ゴチン、とティリアの頭に拳骨が落ちた。 手加減はしていたのだろうが、中々芯に響く一撃。
ティリアの身体を開放すれば、音を立てないようにゆっくり慎重に体を起こす。 いてて、と声を漏らしながら背を伸ばし。
頭に木屑をのっけたままティリアを見下ろす青年は、まるで子供を叱るようにティリアの鼻先に指を突きつけ、声を潜める。

「どこの貴族のお坊ちゃんだァ? こんな所まで来るもんじゃあねえ!
 まったく、もうちょっと俺が気付くのが早かったら、アイツらの仲間かと思ってぶん殴ってたぞ」

いや、もう一発ぶん殴ってはいるんだけれど。
貴族と推測しながらも、その叱り方と拳は遠慮なく。
その辺りのしがらみの外の人間であることが分かるだろう。
問いかける言葉には少し考え、息を吐き。

「冒険者だよ、旅の者だ ティエンファ、用心棒や護衛もやってる
 …で、坊主、お前はなんでここに? 見たところ、うん? …兵隊か何かか?」

やっとそこで、子供じゃないのかと気づいた様子でティリアを眺める。
そこで気付く、スカート。 …少し間を置いて、頬を掻く。

「坊主じゃあなかったか、こりゃあ失礼 …だがよ、尚更こんな所で何やってんだ?
 …って、こんな事してる場合じゃあねえ! おい、見た所ちょいとは戦えるんだろう?
 付き合え、捕り物だ 相手は10人、ご禁制のお薬だとよ」

ティリア > った っ。

(加減が有ろうが拳は拳。
それはもう頭に響く一撃に。一瞬目眩すら覚えそうだった…今、特に頭を使っていた為に。
くらつく頭を押さえつつ、取り敢えず下ろされた所で立つ――のではなく。
何となく、その場に正座してしまったのは。相手の剣幕に圧されたからか。)

…そうだね。状況確認の甘さは、反省。巻き込んでたら洒落にならなかった。
余所様も、こういう事してるってのは。ちょっと考えてなかったから。
……ぁー……ところで、さ。

(いい加減坊主は止めていただきたい。何せこちとら…と。幸い、彼方も気付いてくれた様子。
膝を正し座り込み。前へと出た太腿に手を置いて。お陰で目に止めてくれたらしい。
…畜生、とは内心で。残念ながら上半身だけ見られていても。その上半身が確かに密着した筈でも。
此方が女性なのだと証明する凹凸は。彼には伝わらなかったようだから。)

――そ、だね。改めて。王国軍所属。ティリア=F…っと。ティリアで、宜しく。
魔道機械の密輸事件。あれを辿っている途中で―――― って、ぇ…?

(残念ながら。最後迄此方の素性を語る事は出来なさそうだ。
彼に急き立てられた、だけではない。明らかにその原因なのだろう…倉庫内での動き。
取引でも始まったか、それとも、今正に終了しつつあるのか。
別件だが、ご禁制品を放っておくのは義に反する。こくりと頷き、腰から得物を引き抜いてみせた。
彼の棍とは異なり、後方、遠方に向いた銃。)

――了解。……突入、宜しく。

ティエンファ > 「聞き分けが良いな、良い子だ」

素直に頷くティエリアの言葉に、しかりつける表情から明るい笑顔に変わり、ティリアの頭をポンと撫でた。
酷く着易い青年だが、さっぱりした性分なのだろう、怒りはすでになく。
こんな所にいるティリアを少し心配するように首を傾げて辺りを見回す。 1人か、と確認して。

「ティリア ああ、貴族の名前は長くて覚えきれん ティリアで こっちこそよろしく頼むぜ
 …機械の方は、俺も探っちゃいるんだがな 早く解決してくれんと、街で因縁付けられ続けて堪ったもんじゃあない」

そう言って肩を竦める。 誰からの依頼か、とかは口にしない所が、こういう依頼を受け慣れているのだろうことが分かる。
ティリアの銃を見、構えを見れば、頷く青年。

「俺が突撃する 手が届かない所の奴が動いたら狙い打て
 俺が7、そっちは3で良い 乱射には向かないだろうし、フォローを頼む
 初めて会ったが、ティリア 俺の後を追いかけるだけの力量、頼りにしてるぜ」

に、と口の端を上げれば、まるで悪戯を決行する少年のようで。
ぽん、とティリアの肩を叩き、扉に顔を向けた頃には既に、武芸者の表情。
扉の前、腰を落とし、秒読み。 …開けるのではなく、

「ゼロッ!!」

思いっきり、分厚い木の扉を蹴りぬき、ぶち開ける。 木が飛び散り、金具が弾ける酷い音。
その音が消える前に、飛び込む室内。 夜目が利くティリアは、内部の事が分かる。
護衛らしいごろつきが6人、商人らしい男が2人、術師なのか、怪しい人影が1人。
ティリアが飛び込むころには既に、1人が倒れ伏して、2人目に飛び掛かる青年の動きは素早く。
ごろつきが振るう拳をするりと避け、顔面に肘、2人目が沈む。 それを狙うごろつきの1人、投げナイフを構えている!

ティリア > それは失礼。――出来得る限り早急に、市民の平和を約束するべき、なんだけれど。
お陰で躍起になっているのは否めないね。…誰も彼も。

(きっと。懸案のシェンヤン出身であるというだけで。有らぬ疑いを掛けられる、咎め問い詰められる、という事を。
幾度も体験しているに違い無い。
というより、娘自身も。要注意と鑑みて後を追ってきた結果が、この事態なのだから。
何とも困惑気味に眉を寄せつつ、せめて、己一人だけでも。国の代わり、軍の代わり。頭を下げてみせようか。

そして。後は一旦口を噤んだ。…内部からの話し声は、未だ囁かに聞こえてくるが。
それが、此方の会話を隠しきってくれるとは限らないのだから。
黙して頷き、掌を振り、立案に対して了承の意を示す。
彼が向き治った扉の片脇。壁に背を付け銃を構え、屋内へと撃ち込む姿勢。
…銃を、用意。ぼぅ、と片目が光りを強めたのと同時。)

―――― ッ…!

(首を竦めるのは仕方ない。目の前、扉が文字通り粉々に吹き飛んだのだから。
そして、次の瞬間には。一人、もう一人、荒くれ者共が同じく吹き飛ばされている。
手に手にナイフだの鈍器だのを手にした男共だが、リーチも…それより技量も、彼の棍が、対術が上回る。
正直見惚れていたい程だったのだが。更に三人目が、ナイフを振り被ったとなれば。
轟音。火薬に火が点きぶっ放された弾丸は。狙い違わずその男の手首を砕いた。
殴られるより酷い痛みに上がる悲鳴と、予期せぬ狙撃に、此方へ向くごろつきも居る筈だが。
暗所に慣れきった彼等からすれば、突如開かれた扉と、其処からの逆光に。即時対応は出来ないだろう。
光に紛れて次の射撃。商人を護り最奥で倉庫を脱しようとしたごろつきが。腿を貫かれて転がった。)

『一、二…! あと、半分…!』

(声を大に。彼へも伝わるように…同時に、瞬く間に減少した人数を敵にも伝え、戦意を削ぐ為に。
正確には、残りが一人分多いのだが。仰天して腰を抜かす商人達は、戦力に数えなかっただけ。
…咄嗟に判断出来無いのは。貌を隠す術者めいた何者かだが…)

ティエンファ > 「ま、しゃーなしさ 実際なんかあっちから被害受けてるんだろ?
 因縁付けてくる奴はぶん殴って黙らせてるから良い そういう奴に限って口ほどにも無いもんだし
 一部の馬鹿はともかく、少なくとも、ティリアはー… …良い奴そうだしな」

頭を下げるティリアに、大丈夫だよ、と笑って返す。
そして、場面は戦闘の場に移る。 銃声が室内に響き渡れば、血花が咲いて男が蹲った。

ぴゅう、と称賛の口笛を吹く気軽さのまま、青年はくるりと棒を回して、そこから放つ突きは、剣を構えた髭の男を昏倒させる。
身を翻して、逃げ出そうとした商人の一人の顔面に放つ回し蹴りは、綺麗に弧を描き叩き込まれる。
宙で一回転するような衝撃の蹴りを受け、商人は持っていた鞄の中身をばらまいて気絶する。
束にされた植物や、金、それに気を取られたもう一人の商人が、某の一撃で昏倒する。

そして、怪しい男が何か印を結べば、周囲にいくつかの火の玉が浮かぶ。
古典的な魔法、ファイアボール。 それがティリアに向けて放たれる瞬間、斧の男とやり合っていた青年が、不意にそこに飛び出した。

爆発。 轟音。 …煙が晴れたそこには、焦げて折れた棒を構える青年姿。 身体や服のそこかしこに、火傷痕。
怪我も炎も恐れずに突き進むのは、貴族の社会ではあまり見られない、荒々しく雄々しい武芸者の姿。
火傷が痛む拳を握り、術師を壁に叩き付け、沈黙させる。 あと、1人。
荒い息をつく青年の後ろから、さっきまでやり合っていた男が斧を振りかぶる!

ティリア > 【後日継続】
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からティリアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からティエンファさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にティエンファさんが現れました。
ティエンファ > 【継続中】
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にティリアさんが現れました。
ティリア > …十中八九、引き続き、ね。
やりすぎは、まぁお勧めしないけど――礼を欠いた相手には。相応の対応で良いんじゃないかな。
………っぁ、は。どうかな。少なくとも――淑女からは、もう随分。掛け離れているつもりだよ。

(少なくとも。紳士淑女は体当たりもかまさないだろうし、銃火を携え悪党共と渡り合いもしないだろう。
だが。今現在の己にとっては、こんな自分の方が余程良い。
斯くして現在、鉄火場のど真ん中。
連鎖事故宜しく、一石二鳥で二人の商人がまんまとダウン。更に破落戸ももう一人。
残りは二人――その一方へと目を向けた瞬間だった。)

 っ―――― …!?

(暗視という行為には、一つ大きな欠点が有る。
暗闇に慣れすぎてしまう故に…その状態では明るさが目映さに、灯火すら目眩ましと化してしまう事。
得物を構えたならず者は前衛に任せ、術者らしき者へと向いた刹那。視界を眩ます――目映い炎。
堪らず目元を覆った、途端。迫る目映さを大きな影が遮った。

人の形。それが備える棍の影。――彼、だ。

上げようとした声は何だったのか。だが、それが可聴域に入る事はなく、爆音に掻き消された。
二歩、三歩、堪らず蹈鞴を踏まされたその向こう。炎を堰き止め、爆煙を除け、彼の姿が其処に在った。
必殺を確信していた術者の表情が変わり――その貌の侭、拳によって顔面は歪み、壁に迄吹き飛んで。
叩き付けられたその音に紛れ、最後の一人が振り上げた斧…の、刃が狙撃で欠ける。
頭上の得物に叩き付けられた衝撃で、蹌踉めいたその男に。次の一弾。
狙い違わず――否、狙いを付ける間もなく撃たれた為に、加減を知らず腹を貫き。
即死には遠いだろうが、同時に、立ち上がる事は不可能だろう。

さて。単身単発でしかない短銃で、三発、四発。如何に撃ったかと言えば――単純明快。
装填済みで計四丁、端から携えていたというだけだ。
それでも、結局全弾使い切ったから、余裕は無かったに等しい。
万一、敵が一人でも残っていたら。それこそ、術士でもその場に立っていたのなら、と考えれば。)

――――…終わりかな。 ありがとう。

(一応、未だ警戒はした侭。傷を負った彼に。
…きっと、そういう人間なのだと。あんな時真っ先に飛び出す人種なのだと察していた。
要するに彼も亦――「良い人」という奴なのだと。
だから、何故あんな無茶を、だの問いはしない。素直な謝意を言葉に載せて。)

ティエンファ > 「まったく、血は帝国だが、生まれはどことも判らない身としちゃあ、いい迷惑だよ
 皇帝さんとやらの横っ面を一発ぶん殴ってやりたいね、公衆浴場にもおちおち行けない
 はは、淑女だったらまず、俺とは知り合わんさ 見るからに堅気じゃあないしな」

そう言って笑い、飛び込む倉庫の中。 そして奮戦。
獅子奮迅の働きでならず者を平らげる若獅子の猛威である。
荒々しい暴風の様な青年の動きを縫い、的確に無駄なく仕留めるティリアの腕前。
あと二人、その時に巻き上がった熱風。 そして、ティリアの最後の2発の銃声。

砕けた斧を振り下ろすことはかなわず、大男はもんどりうって地面に倒れ伏す。
何度か足を動かしてもがくが、そのまま昏倒した。 起き上がる事は出来ないだろう。
先に倒れ伏した男達も、意識があっても戦意を喪失して震えている。

…そして、静寂。 青年は、背後で倒れ伏す斧の男を振り返る事もしない。
ぜえぜえと息を吐いて、それから努めてゆっくりと深呼吸をする。
長い髪の其処此処が焦げて縮れ、墨染めの上衣は火球の余波で穴や焦げ。
露な腕や胸元、破れた服の奥には火傷が生々しく、重くは無いが、決して痛まないはずが無い怪我。
しかし、

「応、終わったぜ。 お手柄だよ、ティリア」

ティリアに向けた顔は笑顔で、じろじろと遠慮なくティリアを見れば、ふぅ、と息を吐く。

「よしよし、そっちも怪我らしい怪我はないな 良かったぜ
 巻き込んだ手前、嫁入り前の女にけがを負わせるのも気後れしてたんだ」

気軽な事を言って頷く。 あくまで、ティリアを戦える「女の子」として扱っていた。
貴族だろうが兵士だろうが、町娘だろうが、関係ないのだろう。
ボロボロになった上着を脱ぎ払えば、刺青が刻まれた、鍛え上げた上半身。
その上着を躊躇いも無く裂けば、倒れている男…主犯だろう商人二人の手と脚をきつく縛った。
こういう捕り物にも慣れているのだろう、手早い。
そして、その動きをしながら、ティリアに向ける声は穏やかで。

「…さっきの話なんだけどさ ティリアが淑女なんかじゃあなくて良いんだよ
 ティリアが淑女で、お屋敷に留まってたら、俺は今日ここで死んでた だから、ティリアは今の通りで良いと思うぜ」

そんな事を言って、立ち上がった。

ティリア > 人間見た目を気にするからね。…首に血統書提げておく訳にもいかないし。
取り敢えずは本当……早めに、ごたごたを収めないと。私達も、商売の邪魔しやがって、って。
嫌われ続けちゃ、おちおち枕を高くして寝られない。
…堅気じゃない、は。否定しないね。君の場合元より行き辛そうじゃないか。公衆浴場。

(少し苦笑気味に頷いた。
何でも、市井の公衆浴場の場合。刺青背負った人物はお断り、という店舗が多々有るそうな。
王都の方なら来る者拒まず、但し何が有ろうと自己責任、といった按配で。問題無く入店だけは出来そうだが。

そんな、冗談めかす会話も、倉庫へ飛び込む迄の物。
後に続くは得物の打ち合い、肉への殴打、連なる銃声…そして、爆音。
昏倒した者は声すら上げず。手や脚を砕かれた者も、呻くか気を失うばかり。
最後の男だけは…流石に、応急処置くらいはしておかねば。口を割らせる前に、口封じとなってしまいそうだ。
手荷物から、血止めと包帯を引っ張り出しつつ。倉庫の奥へ踏み出せば…自然。彼の至近へと。

改めて近付けば焦げた臭い。服の、そして肉と膚の。
到底無事とは言い難い有様の彼だが。…矢張り、自身よりも此方を。娘を気にしてくれるらしい。
これだけのお人好しは、世間知らずのお姫様方と比べても、そう居ないのではなかろうか。
少しばかり首を竦めれば。ひょいと投げ渡す小瓶。
…一応、火薬を扱う身である為に。火傷に効く軟膏くらいは持ち合わせていた。)

お陰様で。良い役割分担が出来たと思う…よ。
 あー ………あぁぅ、ん。 …そう、だね。

(後半の台詞には。少し生返事にならざるを得なかった。
取り敢えず、子と呼ばれる身でもないし、嫁には行けなかったし…傷は、今更、だ。
が、直ぐに。軽く首を振り、余計な言葉は飲み込んだ。
彼が処置してくれるなり、商人達の捕縛に勉めるなりする間。
己も、斧男の腹を止血して…その侭手足もぐるぐる巻きにしてやろう。
残る連中も、未だ当面動けはしないだろうが。今の内に二人で手分けしていけば。適宜縛っておける筈。)

――…? ぁ、は。律義だね、君も。
…大丈夫。僕は、望んで今の僕で居る。…居ようとしてる。
だから何も気にはしていないし――それに。こうでなかったら、君みたいな人に会う事も、なかった。

(だから、お互い様。
ならず者共をふん縛りつつの、色気の欠片も無い状態で交わす言葉ではあったが。
声の上には、柔らかく笑む気配を滲ませていた。)

ティエンファ > 実際、青年が行ける浴場は限られているのだが、どうやらその数少ない浴場でもごたごたがあるようで。
違いない、と笑った青年はしかし、開襟の上衣を羽織る見た目は、それを隠そうともしない堂々とした様子だった。

戦闘が終わり、縛り上げた男達を眺める。 近くに寄ったティリアに、お疲れさん、と声をかける。
そして、渡される軟膏瓶を受け取れば、素直に礼を言う。 後で落ち着いてから使うよ、と。
近くでティリアが見れば、火傷以外にも、様々な古傷が刻まれた身体は、荒事慣れしているのだと分かった。

「ああ、前衛と後衛、こうじゃあなきゃな …っと、うん? なんか変な事言ったか?」

歯切れの悪いティリアの声に、自分が地雷を踏んだ事も気付かずに眉を上げる。
しかし、首を振る仕草を見れば、その場は自分も言葉を飲み込み。
なんとなく言葉が少なくなった少しの間、口を開いたのは、さっきの話題だったのだ。

「律儀って言うか、本音さ ティリアがあの時飛び掛かって俺を止めてくれなかったら、きっと負けてたか、逃げるしかなくなってた
 だから、有難う …はは、お互い様か そうか、そうだな …じゃあ、ティリア」

名を呼び、ティリアが顔を上げれば、その手を無遠慮に握り、しっかり握手。
大きくてごつごつした、武芸者の男の手。 顔を見れば、明るい笑顔で。

「ティリアみたいなヤツにあえて、俺も良かったぜ …っと」

そこで、ふと言葉を途切れさせて扉の方を見る。
複数人の足音と、声。 けたたましい笛の音は、ティリアの隊で使っているものだと分かる。
銃声や爆音を聞いて、流石に気付いたのだろう、増援がやってくる。
それを聞けば、少し困ったように首を掻いてから…。

「ティリア 後は任せて良いか? …実はさ、そのー…
 正式なギルドの依頼とかじゃあないから、騎士や貴族にばれると、色々面倒なんだ
 ほれ、ましてや俺はこの通り…(と、自分の刺青の入った型を叩いて)だろ?
 …帝国顔の俺は、痛くない腹を探られもする時期だし …何より、ティリアに迷惑がかかる」

そう言って、握っていた手を、もう一方の手で包むようにポンと叩き、手を放す。
ボロボロになった棒を肩に担げば、ととんと数歩離れて。
裏口の前にたてば、よろしく、という様に下手糞な、それっぽい敬礼。

ティリア > (という事で。この場のロクデナシ共は全員、捕縛完了。これで漸く一安心という事か。
…勿論、本題とするべき問題は、未だ別に在るのだが。
港湾都市の諸問題が一つ減ったと考えるなら、決して悪い事ではないだろう。

最後の一人を縛り終え、念の為、手脚を撃ち砕かれた連中にも止血してやってから。
立ち上がり振り返れば、改めて目に飛び込んで来るのは。刺青云々よりも…鍛え上げられた肉の造詣がはっきりと解る上半身。
…いや、更に解り易い印象は。きっと年も離れていない、若い異性の肌身、という奴だ。
例え傷が心配だとはいえ、あまりマジマジと見つめるのも…淑女云々は否定したが、先ず女としてどうなのか。
頬を掻き、微妙に視線は脇へと逸れる。)

いや?…いや、うん?何でもない、よ。

(なので。そうして、男の半裸が目の前に在ったからだ、とでも。考えてくれれば幸いだ。
己の過去など。決して、話す側も聞く側も、面白味など感じない代物だから。
煤けた掌を叩きつつ。後で処置する、と聞けば。安堵めいて小さな吐息。)

…そうかな。…そう、なのかな。
君なら何とか――いや。私も危なかった。何と言うか。一人じゃ、無理だっただろうね。
前衛と後衛っていうなら、此奴等もしっかりしてたから。
…二人居て良かった。…君に追い着けて良かった。逆に…君に会わない侭、此奴等を見付ける事にならなくて、良かった。
だから本当に、お互い様っていう事で。 ……ぅ、ん?」

(改まって。差し出された手。握り合えば改めて。硬さも大きさも違う事を思い知る。
男と女、というだけではない。彼の手はずっとずっと鍛えられた物。…其処迄至るには。追い着けるには。
己の場合どれだけ掛かってしまうやらと。
何となく、羨ましい、とでも。口に仕掛け唇を開いた刹那。近づき始めた足音、警笛は。己の良く知る物だった。
あぁ、と小さく。どうやら――戻らない娘を探し、騒動の物音を聞きつけ。
彼方も小悪党に手間取っていたのだろう同僚達が、今にもこの場に到着しつつあるらしい。
意識が其方へ向いた瞬間。内と外、双方から彼の手が触れた。力が入る間もなく、するり、握手の手は融かれ。
ぁ、と微かに上げてしまった声は。距離を置く彼に届いたかどうか。)

自警…みたいなと、思ったけれど。本当にそういう感じかい?
つくづく君は――君の方がずっと。良い人、だよ。
……そうだね。後は、任せて。言い訳くらいは考えておくから。

(彼の立場は良く解った。だから、後を追い踏み出す事はすまい。
代わりに踵はきちんと揃えられ、姿勢を正して、同じく敬礼の仕草で応えよう。
彼が裏口から姿を消す瞬間まで、そうやって見送りの姿勢を変える事はなく。)

――改めて。市井の安定に、ご協力を感謝します。
縁在れば、また何れ。――ティエンファ、殿。

ティエンファ > ティリアの止血や手当の手際の良さに舌を巻き、素直に称賛の言葉を口に出す。
事実、銃創を負ったにも関わらず、的確な止血により包帯の血汚れは少なく。
こういう技術も勉強しないとなあ、なんて思っているところに、視線を逸らされて。
自分が上着を脱いだ姿であることに気付いて、すまんすまんとあっけらかんと笑った。
しかし、内心で残る違和感は抱いたままで。

「そうだな、二人いて良かった そんでもって、お互いがお互いで良かった、だ
 二人とも近接じゃあ、あの爆風で二人ともやられてたかもしれんし、手も回らなかったろうしな
 良い腕だったぜ、ティリア 今度街であったら、酒でも奢るよ」

そう言い残して裏口から出ようとした所で、自警?と問われて足を止める。
ビシッとした模範的な敬礼をするティリアに、ちょっと恥ずかしそうに頭を掻いて。

「…孤児院にさ、その商人がさばいてた薬で親父をダメにされたガキが居てさ
 …断れないだろ そんな話を聞いて仇討ちを頼まれたら」

まるで、悪戯した理由を問われた子供の様な気まりの悪そうで、恥ずかしそうなごにょごにょした声で言って。
複数の気配が近くの曲がり角を曲がった脚音を聞けば、「そんじゃあ!」と声を残して駆けて行った。

入れ違いの様に表から入って来た同僚達がティリアに駆け寄る。
爆発の跡や多人数に対してティリアが1人で奮闘したのかと勘違いし、驚く男達。
そうして、一つの悪事が潰えたのだった。

ティリア > そういう意味では…お互い運が良かった、ね。
どちらも吹き飛ばなくて済んだし、どちらもかち割られる事も無かったし。
お酒か …頑張って、お相伴に与ろうか。次に会うなら。もう少し、色気の有る場所だと良いね。

(寧ろ、本来なら荒事には…正面きってならず者と向き合うには力不足の身。
援護だの、補助だの。其方の方が向いているし…自覚しているから、習得に余念が無いだけの事。
彼に手際を指摘されれば。それも亦役割分担なのだ、と言い切った事だろう。
拭いたい違和感の去就は知れず。とはいえ、今この場で問い詰められるに到らなかったなら、それで良い。
色気云々、勿論軽口。そんな物を吐ける位には、余裕も戻って来たという所。
礼を示す仕草の侭。…最後に彼が言い残す言葉に。思わず瞬いてしまったか。)

――――つくづく。つくづく、君は…

(良い人なのだと。言葉にせずとも、言いたい事は伝わった事だろう。
勿論其処に。揶揄や皮肉など欠片も含ませてはいない。真っ当な事を、真っ直ぐに言ってのける…それだけの事ですら。
昨今、貴重な人徳だと言って良い。開かれた裏口の側、眩しげに瞳を細めて。其処から消える彼の姿を最後迄見送った。

…次の瞬間にでも、兵達が駆け込んで来るだろう。
娘一人では有り得ない大捕物に。当然、事の推移は問い糾され。
偶然の協力者が居たのだ、という程度は口にしただろうが。
それが如何なる人物だったか、とりわけ、容姿容貌に関して語る事はしない侭。
知るのは己一人、そして彼一人。当人達だけで充分だ。

何れ再開出来たなら。その時には、互い話題の種にでもなれば良い。己にとっては、それだけで充分な報償だった。)

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からティリアさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からティエンファさんが去りました。