2018/04/25 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にフラニエータさんが現れました。
フラニエータ > たった今着いたばかりの大型船。
そこからベージュのドレスに身を包んだ女が、長い黒髪を潮風に棚引かせて舷梯を降りていく。
バカンスを楽しんだ後の貴婦人を模しているのか、ゆっくりとした足取りは気品を漂わせていた。
実際の所、女が楽しんだのは他国での窃盗であり、気品も何もあったものではないのだが。

「馬鹿な男達…クク…」

女は標的とした男達の顔を思い浮かべ、そして掏られた後の顔と比較しながら下卑た笑みを浮かべている。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 船着き場というのは、情報の宝庫である。同様に情報の集まりやすい場としては、酒場、路地裏が上げられるが。

「……」

行き交う人々や、船乗りの雑談に耳を澄ましていた男は。興味を引くような事柄をメモしていく。
ただの噂話から、政治的、経済的内部事情まで。
盗賊たる男にとって、盗み聞きでの情報収集などお手の物だったが。

「……あ゛」

ふ、と。視線を上げた瞬間。目の前に見覚えのある女性の姿を見つけ。
思わず、濁った驚きの声を上げてしまう男であった。
なんというか、女性は実に愉快そうな表情を見せていた。
はっきりと分かる。あれは悪人の表情だよ。美人だからなおさら怖いよ。そんな内心を殺そうとするのだが。
多分、顔に出てしまっていた。

フラニエータ > おっと、思わず地の顔がでてしまった、まずいまずい。女は一転慈母の様な微笑みを会釈と共に周囲の船客へと配る。
その笑顔に微笑み返してくれる人や照れた顔を逸らす人、そんな中を進むと…複雑そうな顔を浮かべている男が一人。

「――あ゛」

なんであの男がここにいるのか。しかも引きつったような顔をしているのか。額に掌を当て、項垂れる女。
そして女はゆっくりと人を掻き分け、男の方へと歩み寄る。

「…こんな所で何をしてらっしゃるのかしら?…ダーリン?」

ありったけの、誰が見てもとっても素晴らしい笑顔を彼に向けながらそんな事を宣まう女。

セイン=ディバン > 視線の先。ものっそい悪人面が、見事に変化。まさに貴婦人の微笑みという表情になっていた。
その変化がまた見事なものだから、恐ろしさが余計に際立つ。
しかも……。目が合った。

「……あ、やっべ」

相手が項垂れるのを見て、男はしまった、という表情になる。
どうやら、自身の表情を見られてしまったようだ。
その証拠に、相手は一直線に自分に向かってきているわけで。
男は、その時点で逃走を諦め。メモを懐に仕舞うと、必死の作り笑顔を見せた。

「やぁハニー。いや、お仕事だよ?
 船着き場の情報を集めることにより、治安を守るお手伝いさ。
 そちらこそ、ずいぶん上機嫌だったじゃあないか」

以前出会ったときも、男のミスによりこの笑顔に晒された気もするが。
相変わらず、見るものの立ち位置によっては凄まじく印象の変わる笑顔であることであるなぁ、なんて感想を抱きつつ。
相手にひらひらと手を振りつつ。どうしたものかね、と考える。

フラニエータ > 実際の所、船を下りてすぐ知り合いに会うなんて思ってもいなかった女。
こんなシチュエーションも悪くないか、そんな事を考えながら、手を振る彼の目の前へ。
しかし…治安を守るお手伝いが聞いて呆れる。
女は自分の事をすっごく高い棚の上に置きながらそんな事を考えていた。

「まあダーリン、それは素晴らしいお仕事ね…私はバカンスの帰りなの。見てわかるでしょう?」

見てわかるでしょう、の一句に重さを乗せながら
パンツドレスのなのに裾を持ち上げる仕草をし、小首を傾げてみせる女。

「…で…お仕事は終わったの?終わったらのだったらあそこで飲まない?…奢るわ。」

女が顎で指し示したのは、すぐ近くにある酒場のオープンテラス。
船客を相手にする為であろうこのお店は結構な繁盛振りで、先程同じ船に乗っていた客も足を運んでいた。

セイン=ディバン > 男は、相手の歩いてきた向きから、相手が現れた地点を推測する。
視線を相手の背後に送れば。そこには豪華なる大型船。
相手の上機嫌そうな様子。見事なドレス。大型船。
そこで、男は相手の仕事を思い出し、溜め息を吐くが。

「バカンスねー。そりゃあうらやましいこったー。
 お前さんと一緒に過ごしていた男性たちは……。
 さぞやステキな夢を見れたろうな」

見て分かりました。わかっちまったよチキショウ、なんて内心は隠し。
男は相手の嫌味のような言葉に、これまた嫌味で返す。
だが、相手から誘われれば、きょとん、と目を丸くする。

「……何を企んでるのか知らないが。仕事は終わったのは確かだな。
 ……いや、女に奢られる趣味はない。俺が奢るよ。じゃあ……。
 行こうか、ハニー?」

相手から誘われるとは、なんとも珍しいな、と思いつつ。
男は情報収集は十分と判断し、仕事を切り上げ酒飲みモードに入る。
そのまま、相手の呼びかけに応じた返答をするも……。
白々しいダーリンハニー呼びに、思わず吹き出しつつ、相手の手を引こうと、手を伸ばす。

フラニエータ > すべてを分かった上で言葉を続ける彼。その口調が面白かったのか、女も少しだけ上機嫌。
彼の言葉を聴き終えると、上目遣い、下げた眉尻、小さなへの字口を彼に向けて

「…仕事終わりに知り合いと飲みたくなっちゃ…――ダメ?
――こんな風に媚びて見せたら瞬殺だったわ…フフ…」

まあ、己の素性を知っている数少ない男。少なくとも肩の凝る演技を続けなくても良い。
それに…偶然の再会にほんの少しだけ喜んでいる事実もある。
奢ってくれるの声に一瞬だけ、仕方ないといった小さな微笑を露にした。恐らくこれが女の本当の笑顔なのだろう。

女は伸ばされた手に自分の腕を絡めると、彼の肩に己の頭を乗せて。誰が見ても仲睦まじい男女だ。見た目だけなら。
彼の腕を引きながら、オープンテラスの丸テーブルへと彼を誘った。

セイン=ディバン > 互いのことは未だに深く知らない関係ではあるが。
少なくとも、男はこの女性のことを信頼に足る同業者である、とは思っている。

「いや、そんなことはない。俺にだってそういう時はあるしな。
 ……そりゃあお前さんの美貌だったら大概の男はイチコロだろうよ」

別に男は、相手が何かを企んでいるとか本気では考えていないのだ。
たとえ企みがあっても、それはそれでいい、とも思っている。
相手のテクニックに苦笑しつつも。浮かんだ微笑に、思わず息を飲んでしまう男。

そうして、相手に手を引かれる形になりながら、男は相手の誘いに乗り、テーブルへと。
歩いている間、肩に頭が触れたせいで、心臓が鼓動を早めていた。

(……お、落ち着け~。落ち着け、俺。
 コイツとは、そんな、関係じゃ、ない訳だし)

そう考えていても。意識すれば意識するほど、顔は赤くなるし、心臓はペースアップする。
以前から思っていたのだ。この相手は、美人過ぎる、と。
内心の緊張を隠すように。男は、何を飲むか思案するような演技をする。

フラニエータ > 「美貌だけじゃないわよ?」

いけしゃあしゃあとそんな事をを宣いながらテーブル席へ着く。
同時に現れた給仕がメニューを運んできた。女は手馴れた様子で給仕に黒ビールとシャンパンを頼む。

『お客様は何になされますか?』

赤い顔をした彼に給仕が彼にそう告げると同時に、女は彼の目の前で両手で頬杖をし、
己の頬を両手で包み込みながらじっと彼を見つめた。勿論彼が何度も見た笑顔である。

「…――中もとっても素敵なのよ?」

先程の己の言葉に付け足しての言葉を今、この場で。かなり含みのあるその言葉は艶めいていて、
どうやら赤い顔をしている彼をからかうモードにスイッチが入った様子だ。

セイン=ディバン > 「そうなのか? じゃあ他にどんなテクニックがあるんだ?」

男は興味本位でそう尋ねてみる。当然、同業者であるからこそ、自分のスキルは秘するべし。
盗賊家業なら稼ぎ方はなおさら秘密であるのが普通だが。
興味、好奇心には勝てなかった。

「ふえ!? え、あ、え~っと、そうな。
 ビールを、貰おうか。うん」

相手の様子に意識を奪われていたからか。給仕の言葉に反応遅れながらも。
男はなんとかそう言い、わざとらしく咳払いをする。
給仕が一礼しつつ去る中、相手を見れば。
笑顔が、まっすぐに男に向けられていて。

「……はひっ!?」

いきなりの発現に、男の声が裏返る。
男の顔、更に赤面。というか、耳や首まで真っ赤に染まっていた。
せわしなく視線を泳がせつつ、男は声を殺し。

「どどどど、ど~いうつもりだよっ!
 からかうにも、もうちっと時と場合ってもんがだなぁ!」

小声で叫びつつ、男は相手にそう追求する。
なぜだかは分からない。でも、男は今、この相手の魅力に完全に振り回されてしまっていた。

フラニエータ > 彼の狼藉ぶりに女は更に気を良くする。歳に似合わず慌てふためく彼がなんとも可愛らしい。

「どうしたの?落ち着きなさいな…心の中もとっても素敵なのよ?私…」

頬杖はそのままに、下卑た笑みを浮かべる女。
成る程彼がどうして女にもてるのか、分かった気がした。普段とのギャップが本当に可愛らしい。二度思った。
それと同時に、彼が同業者で良かった、とも思う。同業者であるからこそ適切な距離を保っていられるのだから。
恐らく彼が知らない人物であったのなら、女は間違いなく標的にしているであろう。それだけの魅力がある。

「で、話は変わるわ。彼女の件だけれど…本人がその口で貴方に伝えるみたいよ?待っていてあげなさいな…」

丁度給仕が注文した品を持ってきた所。女は給仕に軽く頭を下げるとまずビールを取り、彼の前に置く。
そして女は残りを受け取ると、空のグラスにシャンパンと黒ビールを同量注ぎ込み。

セイン=ディバン > ずいぶんといい歳なのにも関わらず、うろたえてしまう男。
何とか落ち着こうと、深呼吸を繰り返すが。

「……あ、あぁ。そういう意味ね……。
 心の中、って。お前さんほどの女が、そういった物をさらけ出すような相手なんているのか?」

自身の考えが、ずいぶんと下世話だったことに気づき。男はげんなり、と疲労したような様子を見せる。
そのまま、男は誤魔化すように尋ねてみる。だが、それはその場凌ぎの質問でもなかった。
男の中では、この女性はとても魅力的で、強い女性だと認識している。
この女性が心の中を見せるなど。そうとうレベルの高い男でなければありえない気がしたのだ。

「ん……。あぁ、そうか。……わかった。
 女に待たされるのは、キライじゃねぇしな……」

唐突に。男に必要な情報が切られれば。なんて反応していいのかわからず、男はそう呟くのが精一杯だった。
注文した酒が届き、相手が目の前に置いてくれれば、それを一気に呷るが。
目の前で相手が二種の酒を混ぜるのを見れば、くすり、と笑う。

「ブラック・ベルベット? どちらかといえばお前さんはラスト・キッスかキティ、ってイメージだけどな」

相手の酒を指摘し、笑みを強める男だったが。適当に諳んじた酒の名前で自爆する。
目の前の子猫の、キス。その絵を想像すれば、消えていた赤面が戻ってきてしまう。
慌ててビールを飲めば、当然咳き込んでしまう。

フラニエータ > 深呼吸する様も可愛らしい。三度思った。
取り繕うように言葉を発する彼を、もう一度だけからかいたくなる意地悪い女。

「居ないからなんとでも言えるの。察してくれると嬉しいのだけれど…?
――体の中を知っている人は…皆素敵って言ってくれるわ…。」

さて、女が酒を口にしきめ細かな泡を唇に留めている時、彼からこの飲み物の名前を聞く。
酒場の主人から教わったこの飲み物だが、彼の言う言葉、ラストキッスやキティと言ったものは知らない。

「どんなイメージで私を見てるのかしら…?…教えて頂戴な…」

ああ、彼のその赤い顔で、その酒の名で何を想像したのか容易く分かった。
女は唇に乗った泡をお行儀悪く舌で拭い取る。
その仕草は扇情的な視線と共に彼の赤い顔へ、咳き込む彼へ捧げられているのだろう。

セイン=ディバン > もしや、自分は遊ばれているのではないか? 男はそう考えるものの。
残念ながら状況はまさにその通り。しかも、ずいぶん前からそうなっているのだが。

「あー、そういうことね。そりゃスマンね。
 ……ぶはっ!?」

相手の言葉に、申し訳なさそうに言う男だったが。
続く言葉に、盛大に吹いてしまう。慌てて周りを見るが、どうやら他人に聞こえたりはしていなかったようで。

「お、おまっ、女が身体の中とか言うなっ!
 ……そ……それ、は……」

再度、小声で叫ぶものの。薮蛇に尋ね返され。
男は、平常心の演技のため、再度ビールを飲もうとする。
だが、相手が唇の泡を舐め取るのを見れば、グラスを持つ手が震えてしまう。
心臓はもう、うるさいくらいに跳ねていて。男は、相手の顔から、視線を逸らせなくなっていた。

「……綺麗で、強くて。でも……。
 どこか寂しげで……魅力的な、女性、かな」

消え入りそうな声で言う男。それは、全てが本音。
これまでの会話から、男はそんな印象を抱いていた。
持ったグラスは、中身が空だった。そんなことにも気づけないほど。
男は、相手に翻弄されていた。

フラニエータ > 流石にここまで盛大に反応してくれるとは思わなかった。
流石に彼がここまで初心だとは思っていなかった女は、四度以下略。
彼の心情がその態度から理解できる。それでも視線が外せない理由も痛いほど解る。
だから女は、更に言葉を畳み掛けるのだ。なんて底意地悪い女だろう。

「あら、男の人だったら言って良いのかしら?…貴方だったら何て言うのかしらね?…フフ…」

そんな言葉を投げかけながら、女は己の飲んでいる酒を彼の目の前に送り込み、飲んでみる?と小首を傾げて見せた。
そして空になった彼のグラスを了承無く己の元へと運び、そこに黒ビールとシャンパンを注ぎ込み始める。
それが注ぎ終われば、女は躊躇いなく彼のグラスで酒を呷るだろう。
勿論彼が口つけた箇所、そこに己の唇を乗せて。

「…そんなに私、寂しそうに見えるのかしら…。綺麗で、強くて、魅力的なのは納得出来るけれど…ね?」

頬杖をついたまま、ほんの少しだけテーブルに乗る肘を前へ押し出す。
当然女の顔も少しだけ彼へと近づいて。

セイン=ディバン > なんとかして、この自分に不利な状況を覆したい、とは思うのだが。
既に場の主導権は相手が握っている。これを覆すのは並大抵の労力では不可能な程だ。
相手の言葉や仕草に、一々反応を返してしまいながら。

「あ~、いや。そういう訳じゃねぇけど……。
 な、なんで俺の話になんだよ!」

鋭くも細かい指摘に、男が慌てていれば。カクテルを勧められ、反射的に受け取ってしまう男。
当然、相手が口をつけていた酒な訳だから、そう気軽に飲めぬ、と躊躇していたのに。
再度相手を見れば、いつの間にか自分のグラスでカクテルを作られていて。
しかも、自分の飲んでいた箇所で飲んでいて。

「あ……ぁ……」

その様子が、色っぽくて艶かしくて。
更に、顔が近づいてきて、いい匂いが。
心臓。バクバクバクバクうるさい。視界。相手しか映っていなくて。
このまま、もしかしたら。そんな考えを男の脳が必死に否定する。
話が上手すぎる。罠だ。策略だ。

「……か……からかうのも、大概に……」

からっからの喉で、それだけを搾り出す男。
しかして、表情を見れば相手にはわかるだろう。
罠でもいい。策略でもいい。このまま、溺れてみたい、と。
男がそう考えてしまっているのが。

フラニエータ > 「貴方に興味があるから…よ…――どうしたの?顔が赤いわよ?ビール一杯で酔っちゃったのかしら…」

己の手の内にある彼のグラス、その淵を指でなぞり、その指を軽く舐める。お行儀の悪い扇情的な行動を続ける女。
彼の声が小さくなり、そして色艶めいてくるのが解れば、女は彼の目の前で頬杖のまま微笑んで。

「からかってなんかいないわよ?…ほら…喉、潤しなさないな…美味しいわよ?それ…。
…それとも口移しして貰えるのを待っているのかしら?」

彼の元にある己のグラスに目線を一度送ると、再び彼の視線に戻っていく女の瞳。
彼のグラス、半分ほど酒が残っているそれを彼の目の前で揺らす。
揺れるグラスの隙間から女の顔、その唇が行う舌なめずりをちらちらと窺えるように、ゆっくりと。

セイン=ディバン > 「……は、ハッ! なるほど、そういうテクニックね!
 いやぁ、勉強になるわぁ!!」

叩きつけられる言葉。揺れる脳。酔ったのはビールにではなくって。
そんなことを口にしようものなら……後も先も怖いから。
男は、そう声をはって誤魔化そうとした。したのに。

「……。……。その。そういう、仕草が。
 からかってる、って」

言うんだよ。そう言って笑い飛ばしたい。
大人の男を舐めるな、とか。お前さんなんか俺から見ればまだまだガキだ、とか。
そう言えれば。楽なのに。そう言えれば、終われるのに。
渇いた喉はその言葉をつむぐことできず。
代わりに肉体は……。

「……」

無意識のうちに。相手がグラスを揺らす手を。両手で握ってしまっていた。
赤面は治まらないものの、男は相手をまっすぐ見つめていた。
瞳は真剣そのもの。一瞬で高速思考した男の、最善の一手がこれであった。
相手がからかっていたのなら。これで終われる。そう、釣られたフリをすればいい。
相手が、からかっていないのなら。……いないのなら?
男は、その先を考えていない。