2018/04/15 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にジルヴァラさんが現れました。
ジルヴァラ > 雲間から差し込む幾筋もの光が、広大な海の水面をきらきらと輝かせている。

木造りの桟橋に腰掛けたまま、男は静かに釣り糸を垂らしていた。
隣に置いた籠には魚一匹入っておらず、寂しい釣果を物語っていたものの、
男はたいして気にする風もなく、さざ波の立てる心地良い音色に思わずあくびをこぼす。

陸の上でのたまの休日だ。こんなのんびりした日があってもいいだろう。
釣り糸を波間に遊ばせながら、男は遠く水平線に浮かぶ漁船を静かに眺めた。

ジルヴァラ > すぐそばでみゃお、と高い声がして振り返ると、茶トラの猫がこちらをじっと見つめていた。
日頃釣り客や漁師からおこぼれを頂戴しているのだろう。
人懐っこい瞳が餌はないのかと言外に男を問い正している。
男は眉を下げ、無遠慮な来客に対しおどけるように肩をすくめた。

「今のところ収穫ゼロだ。一緒に待つか?」

太ももを軽く叩くと、猫は軽快なジャンプで男の示す場所へ飛び乗った。
片足で掻いたあぐらの中にごろんと背中を丸めて収まり、男のシャツや長い髪にじゃれついている。
体は大きいが若い猫のようだ。柔らかい毛並みからまろい熱が伝わって、少しばかりくすぐったい。

ジルヴァラ > 海に生きる者にとって、猫は最も大切にすべき動物だろう。
鼠の被害に悩まされる長期の船旅には、彼らの存在は不可欠だからだ。
それだけでなく、ダイラスに船を着けることの多いこの男にとって、
港町で出会う猫たちは一種の友人のような感覚でもある。

仰向けになった猫が無防備に真白い腹を見せてくる。
優しく撫でてやるとゴロゴロと心地よさそうに喉を鳴らし、男の手に頬をすり寄せた。

「はは……いい女だな」

例え新鮮な餌をもらうためのポーズであっても、そういった打算を含めて愛らしい。
気を良くした男は、釣りそっちのけで小さな彼女と戯れ始めた。

ジルヴァラ > その後も釣り糸を揺らす獲物は現れず、男は懐いた猫を連れて桟橋を後にした。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からジルヴァラさんが去りました。