2018/03/04 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にフラニエータさんが現れました。
■フラニエータ > 時は夜半。
欄干の上に座り、波音を楽しむ女が月明かりに照らされていた。
頬を撫でる風は潮の香りを乗せ、そのまま流れてゆっくりと項を擽る。
ここで女が穏当ならば絵になるのだが、実際は違った。
女が大きな舌打ちを一つし、掴んだ石を思い切り海に投げ込む。
石が黒い水面に飲み込まれるのをぼんやりと眺めた後、大きな大きな溜息。
「なんであんな所に居たのよあの男…馬鹿じゃないの…いつもは寝てる癖に!」
ああ、楽勝だった筈の夜のお仕事が、イレギュラーで失敗したのだろう。
職務を遂行していたであろう男に対し、罵詈雑言が並べられ、海へ向かって吐き捨てられる。
女の愚痴を聞かされる海もたまったものじゃない。静かな波音を鳴らして小さな反抗をする。
「今日はもう無理かしらね…お酒でも飲みにいこうかしら…」
足をぶらぶらと揺らしながらまた大きな溜息を一つ、二つ。
■フラニエータ > 時が過ぎ、髪が潮に汚されていくに連れ、女の機嫌はますます悪くなる。
「んもぅッ…べとべとするでしょう?!」
言葉と供に投げ入れられる石、石、石。ぽちゃん、ぽちゃん、どぼん。
自ら好んでこの場所にやってきたというのに、この仕打ちを受ける海原が不憫でならない。
海面が一度だけ大きく、ざぶんと波音を立てた。
もし海が話すことが出来たなら、大喧嘩になっている事は間違いないだろう。
「買って発散も…良いわね…クク…」
何を買って発散するのか、それは女の表情でよく解る。
口端を上げにやりと笑う、悪人がよくするアレだ。恐らく男娼、娼婦の類であろう。
太腿に肘を乗せ、手で頬を支え、邪な笑みを浮かべる女。違った意味で絵になっていく。
■フラニエータ > ぽちゃん、ちゃぽん…水音を響かせ続ける女。
その女の横を仲睦まじく寄り添いあった男女が通り過ぎた。
「…―――――…ッ」
言葉は発さなかったが女の感情はその顔を見れば一目瞭然だ。100人が100人、羨んでいると答える顔。
水面が執り成すように、優しくとぷんと音を立てた。…どう考えても今の女より海の方がモテる。
「ふぅ…もうヤメヤメ…空しくなってくるわ…」
女は欄干から軽く飛び降り足で立つと、大きく一回深呼吸。服の皺を整えて海を眺める。
そして海に向かって軽くウインクをしてみせた。
「貴方が人間だったら良かったのにね?フフ…また来るわ…貴方に会いに、ね…」
そう言い残し、女は船着場を後にする。刹那…ざっぱ~ん!と大きな波音。
海はなんと返答したのだろうか…。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からフラニエータさんが去りました。