2017/08/24 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にディールさんが現れました。
■ディール > 夜も頃合だ。柄の悪い海の男たちと言えども、酒を呑んでしまえば腕力ばかりに頼りきる雑兵程度の手合いが増える。
一般人では寧ろ驚異的ではあるが――逆に一般人以上でさえあれば、この時間の方が安全は保障されていると判断してもいい。
相手は酔っ払いばかりなのだから。
「ふぅ、しかし幾ら金を積まれても、遠出は矢張り面倒だ。宿一つ取るのにも苦労する……。
そうは思いませんか?皆さん」
ここは月明かりだけが視界の頼りになる路地裏だ。
つん、と鼻を突くのは鉄臭い――血の臭い。壁により区画整理された裏路地は、尚更己に有利に働いていた。
足元に倒れる数人の海賊だろうか。それとも山賊だろうか?
彼らの肩にぶつかってしまい、因縁をつけられたのでさっさとこの路地裏に誘導したのが数分前のこと。
拳に残るいやな感触。粘着質な液体を振り払うように手首のスナップを利かせ掌を揮った。
ぱたたっと赤黒いモノが壁に新たなる彩を与えていく――。
「いい気分の所だったかもしれないけど――一般人にも蛇や悪魔はいるんだよ。……あんまり胸を張っていえる言葉じゃぁないけどな。」
■ディール > 路地裏の喧騒にわざわざ首を突っ込もうとする人間は少ないだろう。
精々が治安維持のための犬か――もしくは騒ぎを生業に出来る類の人間か。
人間以外ならば――悪魔ならば喜んで手を出してくるかもしれなかった。
幸運なのは、そういった邪魔が一切入らなかった事で自分の想定通りに事が進んだという点だ。
呻き声が聴こえる。命は奪っていないのだから当然だが、もう少し眠っていてもらう方が都合が良いだろう。
ブーツの底。踵と爪先を鉄板で補強しているそれで、軽く胸部を圧迫して――こん、と。音を軽く立てる様にして自らの爪先で倒れている相手のこめかみを小突く。
苦悶の息を吐き出しながら昏倒させ、路地裏から一歩外に出る。大通りと呼ぶに相応しい広さを持つ通りに出てしまえばある程度安全も保障されるだろう。
「余計な時間を喰ったか。……ちっ、大型の馬車もこの時間じゃぁ動いてない。…どこか安い宿でもあればいいが。」
■ディール > 余り貌を売りたくは無い。自分は細々と生きているのだ。
自分より強い連中に戦いを仕掛けるような生を求めては居ない。
精々自分より弱い相手に絡まれた場合に、その力を揮うか……。
目ぼしい女が居る時に全てを賭けてでも堕落への道を歩ませようとするのか。
そのどちらかで、自分は自らの生を感じ取っている。
――先ほどの小競り合いにしても、相手が明らかに酒を呑んだ状態。
かつ、見るからに貧相な武装だったので手っ取り早く処理したまでの事だ。
もっとも、手っ取り早い手段を選んでも馬車には間に合わない。
幾つもの船が港湾に浮かび、次々に海賊たちが街を、宿を満たしていく。そうなれば自分の宿泊する宿を確保するのは更に難しくなるだろう。
「参ったな。最悪治安維持部隊の宿にでも頼るか?」
■ディール > 結局。運良く見つけられたのは安宿――。それもほぼ素泊まり同然のベッドだけがある最安値付近の宿だ。
歴史ある、趣あるといえば聴こえは良いが、実際にはただただ修繕費用を節約したために出来た幽霊屋敷のような宿だった。
贅沢はいえない。安宿であっても最低限の安全が保証されるのだから――。
そう思い宿泊の手続きを執った己。
翌朝、引き払う際にぼったくり価格を突きつけられたのはまた別の話。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からディールさんが去りました。