2017/08/21 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にリュシーさんが現れました。
リュシー > (桟橋の袂、積み上げられた木箱のひとつに腰を下ろし、ぼんやりと真昼の海を眺める。
陽射しは幾分弱く感じられるものの、吹き抜ける潮風は生温かく、
総じて快適、とは言いがたいけれど、眺めとしては決して悪くない。

停泊する見慣れぬ形状の船は、どこから来たものか、どこへ向かうものか。
―――積み荷、が遠目に見ても明らかに、ひと、であるように見えるあたり、
まともな商船と呼んで良いものかわからないけれども。)

……子ども、だよねぇ……。

(鉄格子の填まる、檻のような物に入れられた「積み荷」の体格は、
どうしても大人には見えない。
多分、今の己と大差ない体格の少女、あるいは少年かもしれないけれど。
―――はあ、と溜め息を吐いて、膝の上へ両肘を預け、頬杖をつき)

ま、……わかったところで、何ができるわけでもない、んだけどね。

(たとえ乗組員が交渉に応じてくれたとしても、己に奴隷を買い上げる金などない、のだから。
できること、というのも憚られるが、とにかくこうして、望まぬ旅立ちを見送るしかできず。)

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にイーリスさんが現れました。
イーリス > 明るい陽光が照らす海を眺めながら、食堂や娼館、倉庫群が立ち並ぶ賑やかな場所から、
のんびりとした足取りで桟橋の方へと歩んでくる人影。
吹く風を見るように、時に視線を上げ、風上を見る。

と、その視界が捉えたのは、積み荷の荷揚げを行っている船と、
そして桟橋の袂に居る人影である。
木箱に腰を下ろしているが、どう見てもこの辺りの者でないのはその体躯、その姿からも想像に難くない。

視線を一旦海上へと投げた後、歩みをそちらへと向ける。
ある程度距離を削ぎ、声が届く辺りまで来ると、

「やぁ、お嬢さん。………1人かい?」

極力穏やかな、険のない声で、と配慮したような、優しげな声と、そしてふわりと軽く微笑んで。
ただ、こちらの意図通り、優しく聞こえるか、優しい表情に見えるかは相手次第であろう。

リュシー > (もとが男性であるからか、普通の少女に比べて、警戒心が希薄なきらいのある身。
こちらを見ている視線には気づけず、木箱のうえから投げ出した脚をぶらつかせ、
ぼんやりと停泊する船を眺めていたのだが―――

ふと、吹き抜ける風の角度が変わる。
髪を淡く乱されて、鬱陶しげにかぶりを振るのと、
どこからか柔らかな声が降ってくるのとが、ほぼ同時に。
きょん、と目を見開いて、声のしたほうへ振り返り)

――――― 美人さんだ。

(ぽつり、思わず洩らしたひと言は、相手の耳に届くかどうか。
気後れしたふうもなく、木箱のうえで腰をずらし、相手のほうへ少し身を寄せながら)

そうだよ、親が放任主義なんだ。
そっちは、……えっと、あのさ……、

(軽く眉根を寄せて、相手の姿を凝視する間が、しばし。
なぜかほんのり赤らんだ目許を、片手でそっと撫でながら)

……こんなこと言うと、失礼かな、とは思うんだけど。
えっと、……おねえさん、だよね?

(お兄さんのような格好ではあるが、男には見えなかった。
守備範囲外であろうとも、女性を見誤ることはない、という、
決して褒められたものではない自信を胸に、確認めいた問いを。)

イーリス > 少女の方へを歩み寄って、警戒させまいと距離は数歩取ったまま、すっと目を細めてその姿を見遣る。
ややあってからこちらに気付くほどの、警戒心のなさである。
さすがにその不用心さに苦く笑ってしまいながらも、風向きもあって少女が落とした言葉が耳に届いたときには、
その苦笑いは更に深くなって。

「放任主義か。
…でも、この辺はあまり…“よくない”場所だ。特に君のような可愛らしい女の子が一人でいる、というのは、ね。
それこそ…海賊にでも攫われて、遠く海の向こうへ、なんてことだってある」

声色や表情は優しく響くようにしながら、忠告めいた言葉は脅すような内容。
しかも、こちらに対する警戒心もなく、向こうからこちらへと身体を向けるのだから、そういう忠告もついつい口を突いて。
何しろ、容姿、体型、服装からして、こんなところをうろうろしていればどうなるか、
この辺りの治安を知らぬわけでもなかろうに、という含みを持たせておいた。

「………君には“おねえさん”に見えるかい?君は、警戒心はないが、洞察力はあるようだ。
私はイーリス、この辺りで船に乗っている。君は?」

疑問符がつくような声色で返された言葉に、否定はせず、肯定的な言葉は遠回しに。
だが、表情は穏やかなもので、少女の、すでにないに等しいが、警戒させぬようにと名を告げ、
更に距離を削ごうと歩みを進め、並ぶ木箱の一つ、少女の隣へと腰を下ろす。

リュシー > (人間、多少痛い目をみたとしても、本質はさして変わらないのかもしれない。
こちらを見ている相手の表情が変わったのを認め、呟きが聞こえてしまったらしいと悟る。
えへ、と誤魔化すように態とらしく笑ってみせたが、果たして。)

うん……そうだねぇ、今、背後からバッサアア、って網とかかけられて、
そのままあのへんの船の船倉へ直行、ってこともあったかもしれないねぇ。

(怖い怖い、と肩を竦める仕草さえ、あまり危機感を持っているとは言い難い。
なによりも、表情がすっかり寛ぎきっている。
相手から―――もう、彼女、と言ってしまっても良いだろう。
彼女から、遠まわしながら肯定の意を示す答えが得られれば、
いそいそと更に座る位置を変え、隣りの木箱へ座った彼女に、
ぴた、と親しげに寄り添おうとさえしながら)

女のひとを、男と間違えたりはしないよ、そんなの失礼でしょ。
イーリス、…さん、って、つけたほうが良い?それとも、ちゃん、で良い?

(見た目でいえば明らかに、前者の呼び方が正解であろうけれども。
屈託なく満面の笑みを向けるまま、片手の人差し指で己を示し)

ぼくはね、リュシー、だよ。
本名はリュシオン、なんだけど、まぁ、…親しいひとはみんな、リュシーって呼ぶから。

イーリス > 誤魔化すように笑う姿からして………忠告はさほど効果がないことがわかり、はぁ、と呆れたように大きなため息が。
視線を海上へと向ければ、相変わらず荷下ろしが続いている。
その積み荷が泣き喚く声も、潮騒に紛れて耳に届くというのに、この少女は自分はああならないとでも思っているのか。

「そして、はるばる異国へと売られる。そのまま一生奴隷だ。
そうなれば、親御さんにも逢えないし、君の友達にだって逢えなくなるぞ。
だから、護衛もつけずに、1人で、というのは感心しないな」

子どもにも解りやすく危機管理の説明を、と言葉を選んでは見たが、
表情やら態度やら、まるで…効果がなかった。
だとすれば、このまま攫って行くかな、なんてちょっとした欲が疼く。
売れば金になるが、このまま手元に置いておくのも良さそうだ。
何しろ…こうやって寄り添ってくるのだから、可愛らしくもある。

…というのは、表情には億尾にも出さず、態度にも、声色にも。
穏やかを心がけながら、手を伸ばして、その金糸の髪を撫で梳くさまは、心がけている、と自覚しながらも、
可愛らしい年下の少女に対する、自然な優しさにあふれている。

「失礼でしょ、と言われると、何とも言い難いんだが…。
っ…ちゃん、はないだろう、どう考えてもっ。
イーリスでいい、イーリスで!」

男装をしているのだから、女だとバレるのは何とも複雑な表情を浮かべて首を竦め。
しかし、続く言葉には、冷静さを少しばかり欠いたように、声が乱れ。
年下の少女に、ちゃん、などは予想もしていなかったから、敬称はなくていいことを、きっぱりと伝え。

大人げなく取り乱したことを取り繕う空咳を一つして、少女を見る。

「そうか、リュシーか。…リュシオン、という響きは少し…そうだな、まぁ、君の容姿とのギャップもいいのだろう」

よろしく、と手を差し出し、友好の証に握手でも、と。
ただ、本名の響きは、さほど女性的でもないように感じられ、この可憐な少女の容姿とのギャップに興味深げに目を細める。

リュシー > (―――――あ、もしかすると誤魔化せてない。
呆れた、と言葉にはされなかったけれど、溜め息のつきかたでわかる。

これからどこか、自分の知らない土地へ、自分をモノとしか見ない誰かのところへ、
売られて行くのだろう「積み荷」の声を遠く聞きながら、
彼女の言葉にも一応は、しっかり耳を傾けていた、が。)

…そうは言ってもさ、護衛なんか雇うの、いったい幾らかかるか知れないでしょ。
ずっとくっついててもらうなら、やっぱりそれなりに選びたいし…、
―――なにより、護衛だと思って雇った人に、裏切られないとも限らないじゃない?

(口調こそ軽いままだが、後半部分には少しばかり、ひんやりとした響きが滲む。
人懐こく寄り添う態度とは、いささか不釣り合いともとれるような。
いずれにしても、隣りの彼女、そのものを、警戒してはいない様子で。
彼女の頭のなかを覗き見られたとしたら―――もう少し、態度も違うかもしれないが。
潮風に躍る明るい色の髪へすらりと細い指先が触れると、心地良さげに目を細めさえして)

いや、だって、女の子なのに男だと思われるの、ちょっと嫌じゃない?
女の子だと思われないほうが良いことも、いっぱいあるんだろうけどさ、
………えええ、だめ?イーリスちゃん、って呼ぶの、可愛くない?

(明らかに動揺を示す彼女の傍らで、己はくちびるを尖らせて不満げである。
可愛いのに、だめかぁ、などと諦め悪くぼやきながら、こつん、と靴のかかとで木箱を軽く蹴り。
差し出された掌を視界におさめると、まあいっか、と表情を緩ませて、
おそらく彼女より更に小さいだろう白い掌を元気よく差し伸ばす。
ぎゅ、と握る力は、飽くまでも非力な少女のもの、であろうけれど―――)

女の子らしくない名前でしょ?
仕方ないんだよ、だってぼく、ちょっと前まで、女の子じゃなかったからね。

(あっけらかんと、なんの気負いも躊躇いもなく。
まっすぐに彼女を見つめながらの爆弾投下は、彼女にどう捉えられるか)

イーリス > 少女らしからぬ言葉が返ってくると、少しばかりその双眸を細めて。
なるべく優しく、穏やかに、という心積もりとは異なり、彼女の本質を見抜こうとするような、そんな眼差し。
言葉を選ぶように、逡巡する間。その合間も、潮騒と喧騒が届く。

「そういう冷静な判断は…褒められるべきことだ。特に君のような年頃なら、なおさら、な。
ただ………そういう台詞を聞くのは少し………寂しくもある」

少女を見下ろし、その金糸の髪を撫で梳く手はそのままではあったが、ゆっくりと言葉を紡ぐと僅かに表情を曇らせた。
年端もいかない少女にそれだけ冷静な判断をさせる状況は、言葉通り、嫌な世の中だと思われた。

「…むしろ、男と思われたいから、こういう格好なんだが。
ダメだ。ダメに決まっている。そして可愛くない、まったく、ちっとも、これっぽっちも、だ」

理由は割愛すれども、ちゃんと可愛いは断固として拒否。頑な、と言ってもいいほど、はっきりとした声色で言い切る。

よろしく、と手を握り返してから、子ども相手にするように、軽く上下に振って。
少女の表情も、言動も、表情を綻ばせて、穏やかな表情にさせるには十分である。

「………ええと」

手を離し、さらりと、実に何の躊躇もなく発せられた言葉に、こちらは驚きのあまりに言葉が出ない。
女の子じゃなかった、という言葉をどう解釈すべきか、という疑問をふんだんに含んだ視線で少女を見る。

「ええと、魔法とか、呪いとか…ということか?」

最大考えられることを口にしてみたが、好奇ともいえる視線を少女に送るのは無自覚なまま。

リュシー > (こちらを見つめる彼女の瞳は、煮詰めた糖蜜のような色をしている、と思った。
年ごろの女性らしい甘やかさと、おそらくは今までの経験によるものだろうほろ苦さと、
―――にっこり笑ってみせる己の表情に、彼女の半分でも、そんな深みはあるだろうか。)

――――うん。寂しいよね。ひとを、信じられなくなっちゃうのは、さ。
でも、……信じてた人に裏切られて、売られちゃう子なんて、いまどき、珍しくも、

(そこまで言って、ハタと気づいて口をつぐむ。
やや前のめり気味に、慌てたような早口で。)

あ、いや、ぼくは平気だよ?
ぼく自身は、そんな目に遭わされたことないからね?

……て、いうか。
良いじゃん、ちょっとぐらい可愛くたって。
いつも気を張ってたら疲れちゃうし、……ここには、ぼくしか居ないんだし。

(どうしても、ちゃん付けを諦めたくないらしい意図が、じんわりと声音に滲むよう。
それでも、子供同士の挨拶にも似た握手のしかたに、くすくすと楽しげな声を洩らして。

―――――ものすごく驚いている、とっても困惑しているかもしれない。
なのに、好奇心を隠せていない眼差しで見られたものだから、
堪えきれずに小さく吹き出して)

あっは、…はは、…イーリス、やっぱり可愛いって、いまの顔、っ。

呪い、っていうんだろうねぇ、ぼく、自分で言うのもなんだけど、
ほんっとにどうしようもないクズでさ。
だから、たぶんバチが当たっちゃったんだよねぇ。

(でも、と手を伸ばして、彼女の腿上辺りへぽん、と触れながら)

女の子の気持ち、ちょっとずつだけど勉強できてるし、
…これはこれで、良い経験かな、って思ってる。

(知らなくても良いことやら、知りたくないことやらも有りはしたが。
総合的に判断して、良かった、などと言えるのは、己の頭が軽いせいかもしれないが。)

イーリス > 本質を見抜くように、とは表現できるような視線を向けたところで、
まさか少女が“少女でなく”、何やら事情あり、だとはさすがに微塵も想像していなかった。
だから、静かに少女の言葉に耳を傾け、時折相槌を打つだけ。
ただ、時に少女の言葉が、ちくりと胸を刺すのは、何しろ自分が“売ってきた側”だからだろうという自覚からで、
少し、自嘲気味な、曖昧な表情を浮かべたのちに、

「そうだな、リュシーは可愛いからな。今後、そういうメに遭わないように祈っておくよ」

それは本心からの、穏やかで囁くような小さな声で、微笑んでみせた。
が、その笑顔のまま、可愛い、からの下りは聞こえない振りをするつもりで、こほん、と咳を一つ。

「ちょっと待て。なぜそこで可愛いとか…っ、い、いや、いかんな、こうも…」

遊ばれている気がしないでもない。
どういう顔をすればいいのかわからないから…思い切り眉を顰めて不機嫌な顔、を作る不器用さ。

「…呪い、か。まぁ、君がクズかどうか、は解らないが、
今、君が君自身のことを振り返って…それから、今の状況を少しでも好意的に捕えているなら、
きっとその呪いとやらも、すぐに解けるさ」

楽観的で、希望的観測ではあるが、極力明るい声色で言ってから、腿の上に乗った手に、なんとなしにこちらも、ぽん、と手を重ね。

「はは、女の子の気持ち、か。それはいいことだ。女心を知る男っていうのは、いい男だろうからな。
君が男に戻れたら、再会できるのを楽しみにしていよう」

くっつ、と喉奥で小さく笑い、戯れめいた言葉ではあるが、強ち嘘でもない台詞を。

そして、ふと気付いたように、己の腿の上にあるその幼げな手を掴み、掌を上にするようにしてから、

「なぁ、リュシー、これは君と私の、今日出会えたことに対する友好の証だと思って受け取ってくれないか」

言いながら、腰から下げていた革袋をその手に乗せる。
革袋自体は少女の手に納まる大きさであったが、中身は少しずしりと手に乗る。
中身は、2、3粒の小さな宝石が混じった、金貨が入っている。
金額からすれば、平均的な平民であれば、ひと月は家族を養えるだろう。

リュシー > (見抜く、ほどの深い「本質」があるかどうか、当人にもいささか自信はなく。
ただ、船に乗っている、という先刻の言葉と、男性を装っている彼女の風体、
それらと合わせて考えれば、微かに認められた自嘲の気配、
その理由にも、おぼろに察しはついた。

だからこそ、祈っておく、との囁きに、己はくしゃりと相好を崩して)

…ありがとう。
じゃあぼくは、「可愛い」イーリスがどこかで、
変なやつに捕まっちゃったりしないように祈っておこう。

(聞かぬふりをするのなら、しつこく言い続けてやろう、という、
本来の気質が垣間見えるような物言いで、笑顔も変わらず。
遊んでいる、というよりも、単に、綺麗な女の子の慌てるさまが、
可愛らしくて愛でたくてたまらない―――やはり、迷惑千万であろうけれども。)

……どうだろうねぇ。
呪いって普通、もっと嫌な思いばかりするものと思ってたんだけど、
意外と、良いこともいっぱいあって、……

(むしろ、もとの己には戻らないほうが、八方丸く収まるのでは、
という気すらしているのだが、そこまでは口にすまい。
彼女の腿に乗せた掌の上、重なる掌の暖かさに、こそばゆげに笑いながら)

そっか、そこは楽しみだなぁ。
ぼくが男に戻っちゃっても、逃げたりしないで仲良くしてね?

(大丈夫、ぼくは人畜無害な男だよー、などと嘘八百を。

しかし、不意にくるりと掌を上へと返され、そこへずしりと重い革袋を乗せられると、
きょとりと見開いた瞳を幾度か瞬かせ―――ちょっと失礼、などと呟いて、
そうっと中身を開いてみたりして、から。)

い、いやいやいや!
だめでしょこれ、こんなにいっぱい、ひょいっとあげたりもらったりするもんじゃ、
………って、友好の証、とか、そういう台詞はさぁ……、

(卑怯でしょお、と項垂れながら、再びきゅっと口を閉じた袋を、
両手で宙にぷらぁり、と。
初対面の相手から、ホイホイもらって良い金額ではない、がしかし、
突っ返すのも失礼だし、友好の証だし、などと、
たっぷり十数秒間、うーうー唸りながら俯いてから)

――――― よし、決めた。

(突然、勢い良く顔をあげると、革袋を片手に掴んだまま、
もう一方の手で彼女の手を、ぎゅ、と掴み寄せようと。
そのままの勢いでぐっと顔を寄せて)

イーリス、今夜のご飯、ぼくと一緒に食べて?
あんまり高いのは困るけど、ぼく、奢るから。
……イーリスと一緒なら、お店、入っても危なくない、よね?

(彼女の厚意は受け取りたい、しかし、もらいっぱなしにはしたくない。
ついでに、そろそろ夕暮れ時であり、お腹もすいてくる頃合いでもある。
ならば、とひと息に全てを解決する妙案とばかり提案してみたが―――

―――――図々しい、と振り払われる可能性は、とりあえず考えないでおく。)

イーリス > 「…ちなみに、私は、私を可愛い、と評した連中を、簀巻きにしてサメの餌にしてきたんだ」

不機嫌な表情のまま、声のトーンをやや低く落とし、冗談にしては笑えないことをさらりと呟く。
サメは今日も腹を空かしてるからな、などと付け加える言葉も、海を知っているからだろうが、やはり笑えない。

「へえ、いいことも、か。なるほど。それはきっとリュシーがお利口さん、だからじゃないのか?」

少女の表情や言葉からして、事実なのだろうと理解すると、安堵したように表情が和らぐ。
少なくとも、こうして言葉を交わした相手が、呪いとやらで苦しんではいないようなのだから。

「勿論。君が男に戻ったら、ちゃーんと、女心を理解しているか試験でもするさ」

冗談めいた言葉と共に、朗らかに笑っては、人畜無害、との言葉に、だろうな、と。
今見る限り、その言葉を否定するだけの要素がないのだから、素直に受け止めて。

半ば強引に革袋を手の乗せたものの、それを覗く姿に、ふっと笑ってしまう。子供らしいその姿はやはり微笑ましくある。
間近で悩んでいる様子が伺える表情の変化に、更に笑みは深まって、いかんいかん、と片手で口許を押さえるが、
どうしても笑ってしまうのは抑えきれず、肩が小さく震え。
そして、ぎゅっと手が握られると、ん?と漸く笑いを堪えて首を傾けた。

「はは、リュシー、優しい子だな、君は。じゃあ、お言葉に甘えて。
そうだな、私の行きつけの店がある。そこなら君も安全だろう。…大丈夫、君が好きそうな甘いものもある店だ」

よほど相手の提案が嬉しかったのだろう。
にこやかに、先ほど少女が言ったように、ここには二人しかいないから、
年相応の少女らしい、と言えるような笑みを浮かべて快諾し。

エスコートするつもりで、握ったままの手は離さず、革袋を仕舞うように声をかけたのち、共に歩き出す。

「いいか、リュシー、君はとても魅力的な女の子だ。…元がどうかは別にして、今はそうだという自覚を持つように。
ヘンな男にも引っかからないように。
それから、安宿も危険だ。君は丸腰なんだからな。
あと、ちゃんとご飯も食べること、今日は遠慮しないようにな?」

…いつの間にか、言っていることがお母さん、になっているが、大真面目に、真摯な様子で言うあたり、気付いていない。
毎日復唱しなさい、などと更にお母さんみたいな台詞も付け加え、繋いだ手をぷらーんぷらーんとさせながら、
この辺りでは、比較的治安のよい行きつけの店、とやらに向かっていく。
楽しげに会話を交わすその姿は、仲の良い兄妹か、姉妹かに見えるかもしれず………。

リュシー > ……いや、サメさんも、ぼくじゃ食べでがなくて嫌がるんじゃないかなぁ。

(簀巻きにされて海に放り込まれる、のは勿論全力で遠慮したいが、
彼女を可愛い、と愛でるのもやめたくない。
しかし、さすがに、もう一度「可愛い」と繰り返すのは止めておいた。

お利口さん、と言われたことは男のころには一度もないので、
ここは単純に、嬉しそうに頬を緩めてしまいつつ。
守備範囲外、ではあるが、可愛くて綺麗な女性との縁は大歓迎であるとばかり、
約束だよー、などと軽い口調で念を押して。

―――もしかしたらうるさがられるか、とも思ったが、提案は無事受け容れられた様子。
少女らしい笑みを向けてくれた彼女に、己もまた、面映ゆそうに頬を染めながら笑顔を返して)

良かった、断られなくて、……じゃあ久しぶりに、甘ーいデザートも頼んじゃおうかなぁ。
イーリスは甘党、それとも辛党?辛党なら、お酒も頼んで良いよ?

(うきうきとそんな台詞を吐きつつも、革袋は貴重品なので、
大切に服のなかへ仕舞い込む。
びょん、と弾むように木箱から飛び降りて、彼女と手を繋いで歩き始め―――)

……い、イーリ…ス、……あの、えっと、……

(自分で自分のことを魅力的だと思えとか、それを毎日復唱しろとか、
それは何の罰ゲームなのですか、とか。
もしかして先刻からさんざん「可愛い」攻撃をした仕返しですか、
と涙目になりかけたが、彼女が真面目に心配してくれているのは伝わったので、
「お母さんみたい」などという、禁断のひと言を口にはしない。

ぷらりぷらり、繋いだ手を暢気に揺らして歩くふたりは、もしかすると
非常にひと目を引いた、かもしれないが―――
案内された「治安の良い店」で、見た目を裏切る健啖ぶりを示す己を見れば、
少なくとも彼女の憂いの何割かは、慰めることができただろう。
冷たく甘いスイーツを頼み、スプーンで掬って「お裾分け」などと主張するのには、
閉口した、かもしれないけれど―――――。)

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からイーリスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にチルユキさんが現れました。
チルユキ > 船が一つ残らず出払った珍しい夜。
ぽかりと黒く口を開けた港の海を見下ろす。

幾らか行った先には酒場があり、喧騒が風に乗って流れてくる。
酔っ払いが涼みに来るか如何か、微妙な薄暗がり、コンクリートで固められた足場の先にある波打ち際に腰を下ろす。
暫くぶらぶら、足を揺らしていたが、足先に波飛沫が掛かる
近くで魚が跳ねたらしい、

チルユキ > 足を軽く振りながら眉を寄せ、波紋広がって静かになった水面を眺めていた、が。
髪の根元を抓み、ピ、と数本抜く、

「―――………いたい」

思ったよりも。
コンクリートの断面に薄らと生える苔を八つ当たり混じりに 硬化した爪でガリリと削り。髪の毛の先にもっさりと結わいつける。

右腰に提げたナイフを鞘毎引っこ抜き、逆側の髪の毛を結び付け。

苔の方をぽしゃりと海に落とす

チルユキ > く、と。早くも引く手応えを感じて 髪糸を引っ張り上げる、が、

「―――…………」

苔だけが無い。魚に揶揄われたか、餌と見せかけた苔をむしり取られたか。鞘から剥がして放り投げ、ぺたりと背中からコンクリートに懐き、