2015/10/17 のログ
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にクロウさんが現れました。
クロウ > 「好い月夜じゃないか。」

昼間程の喧騒はないが、それでも港はにぎわっている。
むしろ、非合法な積み荷のやりとりは夜である事も多いのだ。
当然昼間のような威勢良い賑わいではないから、静かな賑わい、という何だか妙なものではあるけれども。
後は、酔っ払いどもが騒いでいたり喧嘩をしていたり、などという姿も見てとれた。
男は適当な倉庫の屋根に腰かけながら、片手に持ったラムの小瓶を軽く煽りながら、見上げていた月からそんな船着き場の様子へと視線を移した。
実ににぎやかだ。
自分の船の積み荷は、先ほど部下が処理を終えたのを確認した。部下達は皆、ハイブラゼールの方へと繰り出していったが。
男は一人、ここで酒を飲んでいた。

クロウ > 「はっ、元気がいい事だ。」

ラムの小瓶から口を離し、嘯く。
視線の先では、数人の船乗りが物陰へと女を連れ込んでいる。女が泣き喚いていたか、怯えて竦んでいたかまではよく見えなかったが、穏やかな様子ではない。
立ちんぼの安い娼婦を、数人がかりで手籠めにしようなどという無粋で自分勝手な輩もいるにはいるから、もしかしたらそういう類なのかも知れない。
いずれにせよ、男はしばらくそちらを見つめた後、興味を失ったようにまた船着き場全体へと視線を巡らせて行く。
嘔吐する酔っ払いだの、酔った勢いでの喧嘩に刃物を出す莫迦だの、本当に賑やかである。
反対の方では、何やら怪しげな積み荷がひっそりと怪しげな船から降ろされているのも見えた。非合法の薬物だとか、武器の密輸か。
あるいは、あまり大っぴらにできない奴隷だろうか。
奴隷ならミレー族が十分にいるが、人間だろうが魔族だろうが奴隷としての需要は高い。

クロウ > 荷の中身には興味がある。
一瞬、ちょっと見に行ってやろうかという気になったが、視界に端に移った別の光景へと興味が移る。
先ほどの、物陰へと女が連れ込まれた辺りだ。
どうも、兵隊だが騎士だかの集団が現れて、その男共相手に捕り物を始めたのである。
無論、それ自体はさほど珍しい光景ではないのかも知れないが、腐敗の進む最近のここいら一帯について考えると、なかなか興味深かった。
こんな時間に真面目に仕事している兵士や騎士が、あれだけ纏まった人数いるというのが驚きである。というか、少し疑わしい。
口元に三日月を思わせるような笑みを浮かべながらその様を注視する。

「……おっと、しまった。」

うっかり、漏れてしまった。
漏れた先は、視線の先の捕り物現場。
漏れたのは狂気。
結果、現場はわやくちゃ。
客観的に見れば、突如としてその場に居た者が恐慌状態に陥って騒ぎ出しただけであるが。
そしてそのまま、駆けつけてきた兵隊だか騎士だかも最初の男たちと一緒になって女を犯し始めた。

クロウ > 「参った。ただ見てるだけのツモリだったんだけどな。」

笑みを引っ込めようともせずに肩を竦めて嘯く。
暫しの間、その狂える宴の様を見つめていたが、いつしか興味が失せたのか、視線を他へと巡らせる。
先ほどの怪しげな積み荷は既に完全に荷卸しが終わったようで、どこかへ運び出されてしまっていた。
さて、随分と夜も更けてきた。
ハイブラゼールの方でも、そろそろ酒場から娼館の方へと移動する者が増えるだろう時間帯である。
こそこそとした秘密の取引も、とりあえずいったん落ち着いた様子であった。

「さて、他には何かあるものかな?」

嘯いてからラム酒を煽り、目を凝らす。
相変わらず、酔った者たちの喧騒くらいしか聞こえない。
ただ、時折チラホラと歩いている一般人風の者たちは何のツモリでこんな処にいるものなのか、とも思う。
何となく夜の海が眺めたい者、というのも、そりゃあ確かにいるのだろうが。
たまたま見つけた、まさにそんな様子の人影の方へと注目を。
堤防の淵に立つその姿に、そのまま身でも投げるのかな、などと穏やかでない事を考えながら。

クロウ > しばしその人影を見つめていたが、別段何か面白い事が起こる様子もない。
何やら悩み事でもあって海を見ているのか。
こんな処で一人で立っていては、今夜新たな悩み、というか厄介ごとや問題を抱えてしまい兼ねないだろうが、そこには思い至っていないのか、あるいはその程度は大した事ではないというような人物なのか。
結局、こうして見ているだけの男には何も分からないし、既に興味は殆ど失っている。

「今からハイブラゼールに向かっても、ロクな女は残っていまいか。」

そんな言葉を漏らして、その場でゆっくりと立ち上がる。
そしてまた月を見上げてから、一気に手の中の小瓶の中身をすべて煽る。
そのまま、中身が空になった瓶を月へと掲げて月光を透かし見て、然る後に無造作に放り棄ててしまって。
そしてそのまま、屋根伝いに港を歩き出す。このままどこへ向かうやら。

クロウ > (船着き場の倉庫や家屋の屋根に、月影を落としながら。
不穏な影は、ふらりふらりと何処かへと去って行った。
気まぐれな船長が船へと戻って来るのがいつになるのかは、他の船員たちにも分からないし、気に留められる事もなかった。)

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からクロウさんが去りました。