2023/01/22 のログ
ご案内:「セレネルの海」にボスさんが現れました。
ボス > 夜。夜明けの前、闇が深まる時間帯。

黒いコートに黒眼鏡の男は、岩場を悠々と歩いていた。
口に銜えた煙草から紫煙が立ち上る。

「静かだ……」

この世に自分しかいないようだ、と吐き出す。
まともな人間ならば、この時間帯に海沿いを歩こうとは思わないだろう。

セイレーンをはじめとする魔物の時間だ。人の時間ではない。

ボス > 信仰心の薄い者に己は見えず、声さえ聞こえない。
店先の物を失敬しても何も言われないことがほとんどだ。

「嘆かわしいことだ……」

煙草を吸い終わると懐から携帯灰皿を取り出し、入れる。
流れるような仕草で新しい煙草に火を点けた。
男が吸っている紙煙草はこの街では珍しいものだ。

「神がいなくても人は生きていける。それは素晴らしいことではあるが……寂しくもあるな」

この男は神を自称し、本気で信じ込んでいる節がある。
一歩間違わなくてもただの狂人だが、この存在の持つ能力を考慮すると、そう断ずるのも難しいところだ。

ボス > 「この街で、果たして私はどれだけ生きていけるのだろうか」

神なくして信者なし。信者なくして神なし。
信仰する者がなくなり、異常をきたした”小さき神々”をこの存在は沢山見てきた。
次が自分でない保証はどこにもない。

まだこの街、そして国には己を信仰する者達がいる。どういう形であれ。
朝日の気配を感じる。日の出を拝むのもいいかもしれない。

ボス > 朝日に溶けるように、男は消えていく。

魔物の時間は終わった。これからは、人の時間だ。

ご案内:「セレネルの海」からボスさんが去りました。