2022/10/09 のログ
ご案内:「セレネルの海 浜辺」にダークネスさんが現れました。
ダークネス > ――潮風に少しだけ蜜柑の香りを混ぜて一人砂浜を歩く。
普段なら寝ている時間なのだけど、今夜は仕事帰りで遅くなった所為もあって、身体が少々興奮状態で眠れない。
それで眠くなるまで散歩をしているのだが、何故か潮騒が心地良いセレネルの海の浜辺に来てしまった。

後天性吸血鬼なのでバッチリと流れる水は苦手なわけだけど、川は例外でなら海もいけるのでは?いけるよね?と自分の吸血鬼としての性質に疑問を抱きながら、何処までいけるのか試していると言うのもある。

きゅ、きゅ、きゅ、と歩くとブーツの其処が砂を踏み固める音も妙に心地よく、時折強く吹く潮風に黒い瞳を細めながら、のんびりのんびり、ゆっくりゆっくり、目的も無く一人で砂浜を散歩し続けるのだ……全身黒尽くめなので怪しい事限りなしだが。

「眠れないんだよね……これが…………。」

ぽつん、と、ポソっと独り言。
まあ暫く歩き続ければ疲れで眠れるかもしれない、と思っているところもあり、立ち止まる事はしない。
あとは奇跡的に水着の美人に会えれば……しかし、もう水着は寒いよねと思う。

ダークネス > これが、これが夏場なら……チャンスはあったかも知れない。
時期的に望めないのを解っていても願ってしまうのだ男だし。
と、一人で暇を持て余して色々考えるのも悪くは無いが、折角白い砂浜に居るのだから、少し遊んでいこう。

立ち止まる。
白い砂をキュと強く踏みしめて立ち止まる。

――左手を顔の高さにあげる。
そして右手の親指の爪を左手の手首にあてがうと、横にスッと爪先を滑らせて、声高に叫び……はしないで静かに潮の香りのする夜の空気を吸い込み肺に満たす。

刹那。
指を弾いた時に鳴る音に等しいほんの一瞬。
左手の手首から赤い結晶が生まれ、手首を基点に左手の指先から肘まで結晶が次々に生まれて、左手を左腕を完全に結晶が埋め尽くすのを感覚で確認すると、ギュっと左手で拳を握り締めるとパキッと硬質の物体が割れる音がし、赤い結晶が一気に指先の方から砕けていくと、左手は深紅の装甲に包まれる。

「……ふむコイツは重畳。あまり人前で使えないからね、これ。」

瞳は黒より赤へ。
赤もまた燃えるような赤ではなく、それこそ鮮血の如く鮮やかな赤へ。

これが後天的吸血鬼として得た能力のひとつである。
何か絵本や童話のヒーローみたいで嫌いじゃあない。

ダークネス > で、もう一度左手の拳をギュと握りなおすと、左手を包む深紅の装甲は砕けて、素の真っ白で血の気の薄そうで幸薄そうな白い肌があらわとなる――…シャツの袖は無事である。

袖がぁーという事にはならないように、加減は当然。
左手首の傷は跡形も無い、なので左手をぶんぶんと振っても痛みもなし。

一頻り色々と一人で試し終えると、意気揚々とセレネルの海を後にする……しかしこの能力を使う時が来るのだろうか?と思ったが、折角の技能であるし口にすることは無く、小柄な人影はほんの少しだけ蜜柑の香りを残して姿を消すのであった。

ご案内:「セレネルの海 浜辺」からダークネスさんが去りました。