2022/09/06 のログ
ご案内:「セレネルの海」にミメシスさんが現れました。
■ミメシス > 波の音が聞える。
夜なのに海辺に舞う鳥の鳴声も。
空に浮かんだ月の輝きが水面を照らし、不思議な光景を作る。
――セレネルの海。
その海岸にある岩場に隠れた「とある条件」を満たすと姿を見せる海賊の宝が眠ると噂されている洞窟。
一攫千金を夢見る冒険者か、ただ海岸を散歩しに来た牙無きものか、偶然今夜は洞窟が姿を見せる条件を満たしていてか、その洞窟の入り口は潮の満ち引きにより、多少は海水が流れ込んで入るが、何かを待ち受けるように解放されている。
その奥にアレは存在している。
無名遺跡と違い此処には人の手で作られた灯りは無い。
存在するのは闇と潮騒と白波で磨かれて滑らかとなった地面と天井と壁――それと潮溜り、それに天井に走る亀裂より注ぐ月の輝き、奥に行けば亀裂よりも穴でも開いているのか眩い輝きが遠くに。
その中でアレはつるりとした天井に張り付いて獲物をじっと待っている。
ぴちゃ……ぴちゃ……
と闇の中で僅かな月明かりに姿を晒すのを避けるため、天井と同じ色に身体を変えて身を隠しながら、皮膚より溢れ滲ませる粘液を落とし、じっと、じっと……。
果物を腐らせたようなあの香りは潮の香りに紛れている。
粘液の滴る音も潮騒に或いは天井から落ちる海水の名残で判別難しい、けども……天井の何処かに亀裂があるのか、月明かりが滑り込むように洞窟の中を照らしていた。
■ミメシス > アレが微動だにしなくても、表皮から滲み溢れる粘液はとろりと糸を引き垂れて、つるりとした石の地面に落ちてぴちゃ…ぴちゃと音をたてて広がり小さな粘液溜りを大きなものへと徐々に変化させていく。
それは滑りやすく、潮の香りを上書するほどの甘い香りを放つようになるが、結局は潮満ちた時に全て流される運命にあり、アレが存在していた形跡は跡形も無く消えていく。
アレ自身はどうなったのか?
洞窟に流れ込んだ海水に圧され潰れたか洞窟の奥に流れいったか、それは次に洞窟を見つけたもののみ知る事に。
ただアレは此処だけに存在するわけではない。
無名遺跡にも自然地帯にも目撃情報はある。
今夜此処で犠牲者が出なかっただけで、どこかではまた新たな犠牲者が生まれているだろう。
波の音が聞える。
夜なのに海辺に舞う鳥の鳴声も……。
ご案内:「セレネルの海」からミメシスさんが去りました。