2022/04/21 のログ
ご案内:「セレネルの海」にクララさんが現れました。
クララ > 「────────ッ」

ふっ、と一度強く息吹し、振り抜いた刃が異形のシルエットを切り裂く。
それは暗緑色の肌を持つ成人男性より大きな体を持つ、蛸に似た生物──否、魔物だった。
何日か前からこの辺り──とある浜辺の一帯──に夜毎濃霧が立ち込め、その中を奇怪な存在が徘徊しているという話しを街道筋の宿で聞き、
こうしてやって来た、という訳である。急所を切り裂かれ絶命する魔物が、重い音を立てて砂の上に倒れ込む。
ギルドを介した仕事では無く、客足が遠のいて困ると嘆いていた宿の主人に対する恩返しだった。
ボランティアなどという心算はないが……何度も利用して世話になっていたから、自然と足が浜辺に向いたのだ。

「…………ふう」

緊張を緩め、一度空を仰ぐ。自分を中心に十メートルも視界が通らない濃霧はまだ晴れないが、噂の魔物は退治した。
人間に敵対的な魔物や魔族というのは、何処にでも現れるもの……この浜辺が恒久的に安泰になった訳でもないが、ひとまず宿に戻ってもいいだろう。
その前に──
剣の刃を見下ろして、渋面に。この粘ついた体液は、本来望ましくないが先に海水で洗い流しておこう。
そう決めて、外界と己を隔絶するかの如き濃霧の中、波打ち際へ向かわんと。