2021/08/07 のログ
ご案内:「セレネルの海 海岸」にジギィさんが現れました。
■ジギィ > 時折岸壁に波が白く砕け散る。
跳ねた水しぶきは陽光を弾いて不思議に輝きながら舞う。
岸壁には回廊洞穴が通っていて、奥は何処へ繋がっているのか、少し冷たい風がひゅうと吹いて来る。
「ぁ―――…」
その岸壁傍に広がる岩場で、独り腰掛けて爪先を波に洗われているエルフ一人。
陽光を遮ってくれる森で採集活動の最中、波音が聞こえてきてついついそちらへと漂って行った。
誰も居ない岩場は丁度岸壁に挟まれて人気もなく、涼しい風が波音と共に舞っている。濡れた岸壁には時折小さな鳥が羽を休めてはまた飛び立っていく。森で零れる陽光に目を細めながら探索していた身にはその光景はひどく魅力的で、仕事を放棄して今に至る。
エルフはさっきからつま先を弄ぶ透明な波を眺めながら「あー」とか「うー」とかしか言っていない。
採集活動でそれなりに疲れていたし、風も波音も火照った身体に心地よくて…瞼がとても、重くなっていた。本当に眠らないのはひとえに、お尻の下の岩場がごつごつと居心地悪いお陰である。
そんな半眼の視線が周囲をゆらりと漂う。
(――…ちょっと向こうの砂地で布でも敷いて…)
眠っちゃおうかしら。
■ジギィ > 波音に合わせるように、身体ごとゆらゆらしている間に少し陽も傾いてきた。
頭上の岸壁を照らす日差しが和らいだのをふと気づいたように見上げて、ふうーとついた溜息は残念そうなものでもあり。
「よ、…いしょっ」
爪先を波から引き上げると、傍らに放って置いたブーツを拾い上げながら立ち上がる。それから身軽にひょいひょいと岩場を伝って砂地に降りると、おざなりに足を拭ってブーツを履いて。
「……もどるのやだなあー」
本音をひとこと。しかしそれは、戻る事前提をした言葉だ。
(また来よう)
高みでカモメの声が聞こえる。魚の群れでも近付いているのかもしれない。
くるりと踵を返すと波音と潮風とカモメの鳴き声を背後に
銅色の肌のエルフは、迷いのない足取りで再び森の中へと姿を消した。
ご案内:「セレネルの海 海岸」からジギィさんが去りました。