2021/07/26 のログ
ご案内:「セレネルの海 夜の岩場」にウーズさんが現れました。
■ウーズ > 夜となっても、昼間の熱を孕んだ侭の空気。
それを冷たく柔らかく照らし出すのは月の灯火。
茫洋としたその中に、波が岩場にぶつかって、砕けて、またぶつかる音が響く。
砂浜からそう遠くない岩場。
幾つかある洞窟には魔物が棲みついたり、冒険者が探索に訪れることもある。
その岸辺に、それはいた。
―――じゅぐ。
汚濁の粘液が岩場にじっとりと染み込んでいく。
波と岩場の境目をねっとりとぬかるんだ汚濁が染めている。
巨大な粘液生物のようなそれ。上半身に当たる部分は朽ちかけた鎧。
まるで、病んだ月明かりのような色合いで僅かに輝く甲冑。
兜の、奥に何かが潜んだ目は月明かりに、そして両手指は祈るように組み合わさっていた。
何を思うのか、何か思うのか。
兎に角―――。
幾度波がぶつかっても清められぬ汚濁をまとって、それは波打ち際に在った。
ご案内:「セレネルの海 夜の岩場」にハクさんが現れました。
■ハク > ぽう、と光の玉を浮かべた少女が身の丈に比べてやや大ぶりの刀を片手に持ちつつ海岸線を歩いている。
なぜこんな時間に、という問いをするものがいれば回答は簡単だ。
『この季節になると子供が浜辺で冒険ごっこをすることがある。見つけたらゾス村に帰るように忠言すること』
という内容の依頼を請けたから、である。
なぜ一人で、という問いに関してはもっと簡単だ。
『一人でもある程度戦え、場合によっては光の玉を打ち上げて救援要請を出す事ができるから』
である。
他の冒険者も共にゾス村南方のこの海岸線をパトロールしており、ハクはたまたま1人で見回りルートを回っているだけだ。
「――まぁ、それがし以外は妻帯者であったり、であったしなぁ……」
一人ゆえにつぶやきを漏らすのも仕方ないだろうか。
そう、夜の浜辺のパトロールだ。それで金を貰える……という事もあり、今回のメンバーではハク以外はパートナーもちばかりだった。
存分に浜辺でいちゃついているのだろう。さっきも少し報告がてら村に向かっていたところ、茂みでセックスしている様子をうっかり覗き見してしまったりもしている。
さて、と気を取り直してさらに浜辺を歩き、岩場へ入り。波が岩礁にぶつかり弾ける音を耳にしながら歩いていたところ……
「ん?」
浜辺の岩場を海に向けて歩き振り向いたところ、浜辺からは気づけない角度にある洞窟の入り口に、何やら人影のようなものがある。
照らされる月明かりを見れば鎧姿のようにも見え――跪き、祈るようなポーズを取っているのをみれば……
(若干怪しい気もするにござるが……ううむ、他の者を呼ぶべきか……?
しかし、行為の最中に合図を出して、中断させて集めた上でただの死骸だった、となれば顰蹙モノでござろうなぁ……)
今すぐ、差し迫った危険がある、という訳でもない。
こちらはこうして光の玉を浮かべているのだ、既にこちらの事は気づいていることだろう。
軽く話を聞き――もし魔物であれば討伐し、海賊か何かであればそれこそ緊急事態として合図を出せばいいか、と考えて光の玉を浮かべたまま洞窟の入り口にある甲冑に向けて歩き始める。
■ウーズ > 子供たちは幸運だっただろう。
偶々、それに遭遇しなかったのだから。
仮令その分の不運を、失踪した冒険者が引き受けていたとしても、だ。
知らなければ、そんな事実はなかったのと同じ。
子供の日のささやかな思い出として記憶に残るだろう。
――それは今夜に関してもきっと、同じだろう。
鎧は祈る姿を崩さない。
少女が、近付いていっても身動ぎさえしない。
まるで長い旅路を歩いた果ての騎士の骸のように見えるだろう。
彼女にとっての不運は、ここが岩場であったことと、波が弾ける音が絶え間なく響いていたこと。
そして、その鎧の視覚が顔の部分だけではないことだろう――。
…………くち。
その音が、近付く少女の“背後”で聞こえたことに気付くだろうか。
波音に紛れて、夜陰に隠れて、岩の隙間から近付いていたそれ。
それが瞬間、彼女の足首を捕らえる。ぐじゅりと、した汚濁の感触に気付いた時には遅い。
そこから伝わるのは魔術。入念に練り上げられた魔力封じと、麻痺の魔術。
■ハク > 光の玉を掲げながら近づいていくも、鎧姿は特に反応を見せる事はない。
鎧兜の向きからしてもこちらが見えているはずではある。
なれば、やはりただの死骸か――と思いながらも鎧に視線を向けて歩く。
そう、集中して。何か微動だにでもすれば即座に反応するために、だ。
だからこそ、岩礁にぶつかる波の音にも意識を向けておらず、鎧の足元から伸びていた粘液に気づく事もできていない。
「――もし、お主」
先程まで左手に見えていた砂浜ももうせり出た岩礁で直接見る事はできない。
とはいえ空は大きく空いている。いつでも光の玉を空に打ち出せるように準備をしてから鎧まであと5歩、という所まで近づいて声をかけ……
「……っっ!?」
体が麻痺し、声を出せない――どころか、指を動かす事さえ難しくなり、その場に膝をつく。
みれば右足首にまとわりついていた粘液が魔力皮膜を貫いて、肌に直接触れていた。
そこから掛けられた魔力封じにより光の玉は音もなく消失し、体を纏っている漆黒の魔力皮膜も消滅して裸体を晒す。
更には麻痺の魔術により、身動きを封じられてしまい、身じろぐ程度にしか体が動かなくなってしまっている。
■ウーズ > 油断というには、あまりに卑怯な結末。
敵意の無い少女が近付くに任せつつ、全身の粘液――感覚器官で分析。
浮かび上がる光の玉から魔力を解析して、地中深くで対抗術式を作り上げる。
そして、逃げられない距離にまで近づいた所でひと息に捕える。
結果がこれだ――声も出せず、魔力も使えず捕らえられた少女。
ずる――ぐぷ――。
剥き出しの素肌に黒い半透明の汚濁が吸い付いていく。
まるで剥ぎ取った皮膜の代わりというように。
白い肌をぬめぬめと汚濁が這いずっていく。熱くぬかるんだ感触。
小さな足の指の狭間からふくらはぎ、太腿まで存分にしゃぶって――そして、腰に、腕に絡みついていく蠢く。
ねっとりと尻尾に蛇のように絡みついていけば毛並みをなぞるように蠢いて。
「ああ――佳い夜だね。お嬢さん。」
そして、漸く、兜が動いた。
その奥から“声”が聞こえたのは彼女だけかも知れない。
男声と女声が混じったような異音なのに滑らかに響く声。
同時に――鎧の手が伸びてくる。そこから更に這い出る汚濁、汚濁、汚濁。
黒いが少女を包み込んで攫うまで――そう長い時間はかからないだろう。
■ハク > 正直に言って、この状況は完全に想像の埒外だった。
魔物がいるという想定はしていた。だが、見た目が鎧であったために粘質系という想像ができておらず……
さらには魔力皮膜を食い破り、接触魔術で封印術を仕込んでくるような高ランクの魔物だとは考える事ができていなかったのだ。
「っっ、ぅ、っっっ……」
ざぱぁん、と波が岩場に打ち上がり、弾ける音に比べて呻く音は明らかに小さい。
しかも麻痺して動きが取れなくなった場所は砂浜からは見る事ができず、一度岩場の先まで行って振り返らねば地元の者でもなければ見つける事ができない洞窟の入り口だ。
どうすればいい、と悩んでいる間にも鎧の中に詰まっていたであろう粘質体は足を覆い、手を覆い。少しずつ先程までの魔力皮膜のように――
半透明の汚濁が体を包んでいく。
「っっ!?」
そして、目の前の兜が動き、声が響いて。
それに反応もできないまま、伸びてくる汚濁粘液についには全身が覆い尽くされてしまい――
ご案内:「セレネルの海 夜の岩場」からウーズさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海 夜の岩場」からハクさんが去りました。