2021/03/28 のログ
ご案内:「セレネルの海 海岸」にジギィさんが現れました。
ジギィ > セレネルの海に沿う岸壁にいくつもある横穴が作る洞窟。何れかに財宝があるとか無いとか魔王が眠っているとか噂の絶えないそんな横穴の一つの前の海上に、今夜ぷかぷかと幾つかの小舟が浮いている。

互いに繋がれているその小舟たちのうち、今は人影はひとつきり。
岩礁に係留された一隻でゆらゆらと揺られる銅色の肌のエルフは、縁に凭れながら仲間が潜って行って久しい横穴を半ば困ったように眺めている。

「…これ、帰ってこないパターン?」

1時間程で戻る、と言っていた依頼主と他の冒険者たちを待って、もう3時間くらいにはなるだろうか。
月明りを弾く黒い波は穏やかな音と揺れを伝えて来るが、海に不慣れらしいエルフは居心地悪げに後頭部を掻いて、盛大に溜息を零す。
状況が許す限りは待つつもりだが
だが。

(待てなくなったとして、どうやって戻ろう?)

オールや食料もあるから、どうにかすれば戻れるはずだけれど…
はあーと不安と不満をこめた溜息を盛大に零して
エルフは手持ち無沙汰に弓の弦を弾く。

ジギィ > 弦を爪弾いている間に段々と音程が整ってくる。
勿論楽器として作られているものではないので、穏やかな波音にさえ簡単に紛れてしまう程度のものだけれど

それでも女に歌を口ずさむには十分。

「――…♪、♪」

幾度か音程を合わせるように声を発した後
やがて流れるように歌い出す。
穏やかなリズムは波音に合わせて
歌詞は只人には聞き分けられない、『鳴いている』にも近い言葉。

居るはずもないが、この暗い夜の海で耳に捉える者がいたのなら
海の魔物とでも間違えられかねない
――ことなど、森の民たるエルフが知るはずもなく。

ジギィ > 女はそのまま歌い続けて、白々と明けて来る頃に漸くと横穴から帰還を告げる声。
その間波が荒くなることもなく、女はほっとしながらも戻って来る仲間と雇い主を労い半分に嫌味を言って見せる。

歌声を魔物と思っていた、と返されるとむくれて「これだから短命種は」とかあらぬ方向の文句をつけて、それでも互いの無事を寿ぎ合った後
朝日の中ゆっくりと、小舟たちは陸地のほうへと…

ご案内:「セレネルの海 海岸」からジギィさんが去りました。